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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

行商エルフ(仮題)シリーズ

行商エルフ(仮題)9

作者: まい

再び帰郷した行商エルフさん。

帰郷しても、やることはいっぱいです。


※冒頭のひらがなが多い部分が有りますが、それはまだ幼すぎる子供を表現するものとして、意図した表現です。ご了承をお願いします。

「ちょーろーせんせー、しつもーん!」


「この世界は、どんな形をしているんですかー?」


「ボールの形?大きく3つの大陸?」


『へえ~』


「もともとこの里は、エルフだけのかくれ里だったのは本当ですかー?」


『へー、本当なんだー』


「あと、しゅぞくがちがうおやから、まざった子どもはうまれないの?」


『まざらないのかー』


「じゃあじゃあ、ちょーろーせんせーみたいに進化するほーほーって、せんせーがなれたって言うおべんきょうだけなの?」


「レベルのかんすと?すごい力?」


「神様に認められる程の偉業?極限状態での覚醒?」


「進化出来る称号はいくつもあるの?」


「それと、エルフだけが進化する訳じゃないんだ~」


「ひとつうえで、こうい(高位)やハイが付いて、3倍以上長生き出来て」


「もうひとつ上が、長老先生の古代(エンシェント)種で寿命での死亡が確認されていない程の長命種。なのですね?」


『へぇ~』


「進化する度に、身体能力や魔力、容姿が格段に良くなるのは本当に憧れです。女として!」


『はーい、進化したいからって、無理はしませーーん!』


「あとあと、進化したしゅぞくがこどもを産んだら、こどもも進化した後で産まれてくるの?」


「ちぇー、ふつうの子なのかー」




 はい。様々な種族の人類が楽しく過ごす、我が隠れ里へと帰郷した行商エルフです。


 自宅で子供達とのお喋り会をしました。素直な子供達って癒しですよね。いつまでも頭を撫でて甘やかしてあげたくなります。


 ……自分の子には教育者視点で、あまり甘やかしてあげられませんでしたから。

 でも甘やかし過ぎれば毒になるのは、至るところで見てきましたから、さじ加減が大変なんですよねえ。




 お喋り会が終わってだいぶ過ぎ、現在は夜。この時間は「誰にも聞けない、大人の秘密相談室」です。


 ……そんな題名あったか?即興で付けたんですよ。今さっき。



 はい、いらっしゃい。

 鳥人族(ハーピィぞく)の男性と、トラ系の女性の夫婦ですね?

 ……典型的な、食物連鎖夫婦ですか。


 どうせお酒の席とかで、妙な流れでおうちに持ち帰られて、食べられちゃったー(はぁと)がきっかけなんでしょ?


 正解?ふふん。それくらいは見抜けますよ!


 …………マジですか?


 持ち帰ったのは、男性側……。

 予想とはぎゃk……あーイエイエ、オミトオシデスヨ。ハイ。


 それでどんな悩みを?


 …………マグロですか。トラのお嫁様がマグロなんですか。

 弁明が欲しいのですが?


 あーはい、どうすれば良いのかわからなくて、毎回体が動かなくなる。

 ちょっとお嫁様を借りますね?少しお待ちを。


 …………。


 ………。


 ……。


 はい、お待たせ様です。魔族のサキュバスさん達から教わった、最凶の房中術をこれでもかと仕込んでみました。


 死なないように加減を意識して、本当に死なないよう気を付けて下さいね~。

 大切だから2度言いましたからね~。




 はいはい次のご夫婦は?


 普通の人間種のおふたり?


 え?子供が出来ない悩み?なんで?

 そこらの種族で一番繁殖力が高い、普通の人間種。しかもそれの夫婦が?


 ……あ~。馬鹿な噂をまともに信じちゃったと。

 デマに踊らされちゃったと。

 それでことごとく、重要な日を外してきたと。


 今までそう言った知識を得られる環境で育っておらず、この里に最近流れてきた。

 ほぼ余所者で、気後れして周りに訊けず、意を決して訊けたのがこの(私と会わせる)方法。


 …………誰だ、新参者を私との面談で見極めてやる~とか、下らない方法を考えたの。見極めはお前ら永住している住人達の仕事だろうが。


 まあ今は良いです。

【詳細解析】のスキルで確認してもどちらとも健康体で、産めない体質ではないようですから、お勉強を始めますよ。


 まず教えるのは基本の、保健体育の授業から。文字だけじゃなく、映像やら写真やら音声やらも映せる投影魔法で。


 はい、次は普通の人間種用、夜の四十八手の図解ですよー。


 ……分かりました?

 どれかを試したら、アレもコレもとヤりたくなって、変なデマを忘れて毎日そればかり考えるようになりますよ?


 睡眠時間の確保はちゃんとして下さいね~。




 調子が出てきましたよ。

 ほら、次いらっしゃい!


 男性エルフと、人魚さんですね。


 ――人魚さんはおとぎ話とは違って、自力かつノーリスクで二本足になれます。水中でこそ本領を発揮しますが、お引越しするには陸地の移動も必要だからと、自然の流れでその能力を獲得したようです。



 お悩みを伺いますよー。


 ……人魚さんならではの夫婦生活ばかりだと、どうしても単調になると。


 …………はいはい。ならば秘蔵のアレですね。

 どうぞ。これはちょっとしたレア物です。


 名称に捻りがありませんが“スライムモドキ”

 実は服なのです。作ったのはどこぞのイチタさん。相変わらずの迷作。性能が良いけど、どうしてこんなのを作った。


 見た目スライムですが、核にあたる部分が制御装置になっているのです。

 それへ魔力と願いを込めながら体に貼り付けると、願った衣装に下着もコミで、着色済みにて変形してくれます。


 コレ1着あればどんな時も困らない。重さもほぼ感じない。

 水で濡れると言う概念が無くなる。スライムだから破れる事はあまり無い。画期的な超便利衣装となっております。


 お手入れはスライムのゲル体の追加と魔力。簡単ですね。

 しかも表面の汚れは水でさっと流れ落ちます。


 問題点は、制御装置がかなり高額(主に技術料)なのと、その制御装置の寿命が半年以下である事。

 それと願い次第で、本当に危険なブツへ簡単になってしまう事。


 アレですよ。R18系鎧の再現とかが、容易なんです。


 結果、スライムモドキ中毒者が続発した、迷作。

 人気が有りすぎて、常に品薄。顔を合わせる度にコレが在庫に無いかと訊いてくる貴族様が多くて、大迷惑を被っています。


 ちなみに開発者のイチタさん本人は、とっくに亡くなられています。


 制御装置を、私が作れるか……ですか?

 当たり前ですよ。今も作れるのは主に、イチタさんの系譜の弟子達と、作っている作業場を見学して覚えた私位ですから。


 コレを2着。ご夫婦の分ですよ。どちらかが2着使っても良いし、おふたりで仲良く使っても良いし。


 忘れないで下さいね、スライムモドキの稼働期間はおもいのほか短いですからね~。


 ……お代ですか?人魚さんの水関係の管理技術は本当に頼りになりますから、それを今以上に張り切ってくれる事でしょうかね?


 水は多すぎても少なすぎても、里が大変な目に遭います。水は生命線。その管理をキッチリしてもらう事こそ報酬ですよ。


 ――――――


 ………朝です。


 帰郷2日目の朝は、どうしても睡眠不足になります。


 理由ですか?

 メタ発言になりますが、知りたければ4話をどうぞ。


 今日の午前は田畑や果樹園の視察ですよ。

 この時代なら使われていてもおかしくない、農業技術や道具や考え方を教えたり、それが上手くいっているかの確認です。




「おおっ、最長老様」


「おおむね順調ですよ」


「上手くいっていないのは、主に品種改良って奴ですわ」


「ええ、この辺はあまり上手く育たない作物ですね。その品種改良するための種すら、揃えるのに苦労しています」


「やはりのんびりやるしか無さそうですな」


「ああ、この小さい畑では今、連作障害?とか言うのを試していますが、本当に収穫量が減りますな」


「別の土地で特産品だからと、同じ作物ばかり作っていた頃を思い出します」


「領主や代官、村長達がうるさくて。なんで収穫量が毎年減っているんだー、お前らこっそり着服しているんじゃないだろうなー?って」


「それを原因に税が厳しくなったのが嫌でこちらに流れてきましたが、収穫量が減った理由がそんなのだったなんてビックリですわ」


「……は?野菜同士にも相性があって、近くに何を植えるかで収穫量が左右される?ナニソレもっと詳しく!!」




 流れでつい余計な話をして、少し疲れました。


 その疲れを引きずり、果樹園にもお邪魔しました。


 こちらでは終始、和やかに会話。


 虫害、果実を狙う鳥、いたずらっ子ども。それぞれへの対策を話し合ったり。


 果実酒として使う果実の選定だったり。


 接ぎ木の相談だったり。


 果実を使った料理・菓子類の研究だったり。


 そろそろ時間ですが、お昼をご一緒しても?

 ありがとうございます、ご馳走になりますねー。


 はあ……美味しいですねぇ。ピクニック気分で、和気あいあいとのんびり食べるお昼。幸せです。



 等と、とても楽しい午前でしたのに。


 …………はぁ(ため息)


 里に余計な者が近づいているのを、感知してしまいました。


 しかも特別厄介な奴。

 あいつまだ死んでいなかったのですね。

 最低でもハイクラスに至りましたか。


 この里には、以前契約違反で回収したスキルや魔法を許可なしには使えない、強い結界装置で守られています。


 それを知っているのでしょうね。結界より内側には決して近寄ってきません。


 それで、結界より外側から強い威圧を飛ばして、平穏な里に余計な不穏を撒き散らしています。


 警備部隊も気付いて奴の所へ向かいますが、動いて隠れてまた威圧をビシバシとねちっこい。


 目的は私ですね、分かってますよ。


 分かってますから、威圧がしつこいので止めなさい!!


 こちらから威圧を飛ばしてやれば、ようやく静かになりました。


 ……あー嫌だ、行きたくないですよ。あーあ。




「お前がこの里へ定期的に帰ってくると知って、里の近くで隠れ潜み、待つことンヵ月!!」


「帰ってきたと察知して、呼び出しをかけて待ち続けることしばし!!」


「ようやく来たか!このク○アマ爆乳エロフが!!」


「俺を忘れたとは言わせねえぞ!」


「お前の所為で、エルフスキーのこの俺が!女エルフに好かれまくっていたこの俺が!!女エルフとハーレムでイチャコラ出来なくなったんだからなあっ!!」


「あ゛?俺以外の野郎エルフなんて要らねえよ!!死んじまえば良いんだよ!!」


「うるせえ!お前さえ邪魔してこなければ、今頃は!!」


「この俺の転生特典である成長チートスキルで極限まで強くなって、ハイエルフにまで上り詰めたこの力で!!」


「決闘だ!女エルフに(さわ)れない呪いを、かけた本人であるお前に勝って解除させてやる!!」


「……はぁ?ここで新称号!?【お馬鹿】ってなんだよ!魔力が0で固定……ってふざけるな!!」


「ええい、魔法なんていらねぇ!このエロフに勝てれば良いんだ、物理でヤってやらぁ!!」




 …………称号通りのお馬鹿でした。決闘の了承すらしていないし。


 残念でしたね。

【お馬鹿()()】だったなら【ドジっ子】と同じで、多少のドジ・失敗なら許されるとか言う称号効果が得られて、とてもお得だったのですけど。


 あのハイエルフ化したお馬鹿ですが、以前に前述のハーレム形成を狙い、この里へ流れ着いて引っ掻き回した罪で“悪意や獣欲を持って女性のエルフに接触してはいけない”罰を、追放と共に与えたのです。


 この罰は接触をどう捉えるかでも有りましたし、女性エルフへ愛情で接していれば発動しないモノだったのですよ。

 更正を促す意味ですり抜ける穴を用意しておいたのに、それにすら気付いていないようでした。


 ちなみに、女性エルフに本当に好かれていたか?と言えば、あまり……としか言えませんね。

 ()()()()この里へ流れてきた転生者エルフですから。これ以上の言葉はいりませんよね?


 余計な事かも知れませんが、以前持っていた【真性エルフスキー】の称号が消えていましたね。

 そして代わりに持っていたのが【劣情の塊(対象:エルフ種、異性)】こりゃダメだ。と、見た瞬間に思いました。



 話を戻しますが、奴は成長チートが確かにあり、種族的に下位であるはずの向こうの方がステータス的に上でした。


 称号の効果で魔法が使用不可になり、物理しか攻撃手段のなくなった奴は、何を考えていたのか私の肩を掴んできました。


 で、その時点で罰が発動。


 最悪“もげる”位かな~なんて思っていましたが、とんでもない。


 私の肩を掴んでいる=目の前。

 その状態で恐ろしいほど早く枯れて行きました。


 つまり一気に老けました。ヨボヨボのお爺ちゃんです。もはや骨と皮だけと言っても間違いではないです。

 これを特等席(目と鼻の先)で見てしまい、思わず叫びかけました。パニックホラーを体感せよ、ですか?勘弁して下さい、本当に。


 それで、こいつのステータスを改めて視ましたが、年齢は399歳。年齢と既に0の魔力以外の数値は激減。

 この世界でのハイエルフの寿命は400歳。

 いつポックリ逝っても不思議じゃない状態です。


 これが、これこそが罰として使った呪いの紙を介した、契約と罰の神様の本気……!!

 などと、つい戦慄してしまいました。



 こんなになってしまったのなら、もう何も出来ないでしょう。「婆さんや、女性エルフはまだかいのお?」とか意味不明な事を言っていますし。


 罰を下してくれた神様ありがとう!面倒な存在との決着が、完全に済みました!

 でも目の前で急速に老けていく演出は、本気で心臓に悪いので2度と見たくありません!!



 …………面倒な存在との決着と言えば、あの主神様をないがしろにしたダメ宗教との騒動で見つけた、意味深なメッセージ。

 時間と指定の場所へ行け、とだけ書かれた物。


 アレは丁度、私の600歳の誕生日なんですよね。


 しかも亡き夫と初めてしたデートの日と、そのデートで行った里から近い町。


 随分長いことあの町へと行っていませんでしたね。


 時間的にもう何年も残っていませんし、それを意識して里の近場ばかり回る、行商を始めたばかりの頃の思い出に浸るルートで過ごしましょうか。

今回の後書き小劇場?は無しになります。

あの引きで茶化すのは、個人的にしたくないのです。

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