丸め子と博士1
むかしむかしあるところに、体が金属でできた女の子がいました。
名前を丸め子といいます。
丸め子は、お風呂に入りません。
“錆びて”しまうからです。代わりにヤスリで磨きます。
丸め子は、ご飯も食べません。“錆びて”しまうからです。代わりにコンセントから電気を充電します。
丸め子には、お父さんとお母さんもいません。博士が作ったのです。
金属でできている丸め子は、とても硬くて冷たい体をしていました。でも、周りにいる友達はみんな柔らかくて、あたかかくて、ふわふわしています。
丸め子は、どうしようもなく羨ましくてたまりません。
丸め子は、始めに博士に相談してみることにしました。
博士は家の研究室でいつも何か小さな部品を組み立てたり、パソコンで0や1を打ち込んだりしています。
昔、0と1を打つだけなら私にもできるから、手伝ってあげようとキーボードを打っていたら、博士が見て泣いてしまったことがありました。
3ヶ月かけて何かをしていたのに、私のせいで壊れてしまったと言っていました。
それからは、私は博士の研究のお手伝いはしないことに決めていました。
研究室に入ると、博士が背を丸めてまた難しい顔をしていました。博士の肩を叩き、話しかけました。
「博士博士、私、博士やお友達みたいに、柔らかくて暖かいした肌になりたいの。顔だってみんなみたいに笑ったり怒ったり出来ないわ。このピカピカ光って硬い体じゃ嫌なの。」
博士は悲しい顔をしました。
「丸め子は、今のままでもとても素敵な女の子だよ。それに、機械の肌を暖かくしたり、柔らかくするのはとっても難しいことなんだ。でも・・・」
丸め子は、そんな言葉は聞きたくありませんでした。
最後まで博士の言葉を聞かずに
「もういい!自分でやってみる!」
そう叫ぶと、部屋から走って出てきてしまいました。
そうは言ったものの、どうしましょう。
わたしを作ってくれた博士ですらできないということが、私にできるのでしょうか。