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世界神との再会

 小神殿の礼拝堂に通された俺は、前回と同じく祭壇前に敷かれた四畳ほどの絨毯の上で膝をつき、世界神に呼び掛けるように心の中で祈りを捧げた。すると、以前にも感じた既視感のある、真っ白な世界が視界に広がった。


「今回も無事に神界にアクセスできたみたいだな!」


 前回来たときと同じく、何もない真っ白な空間にポツリと電話台と電話機が置いてあったので早速そこに向かう。


 台には内線表のような、『ご用の方は内線104までご連絡下さい』と書かれたメモ書きが置かれていたので、早速受話器を取ると番号をプッシュする。


「やっぱり会社訪問の感が拭えないな、この内線システムは」


 そんなことを口に出しながら、呼出音を聞いていると三コール目で通話相手が受話器を取ったらしい。


「はい、こちらは世界管理局管理運営本部世界管理部受付です」


「お疲れ様です。私、マギシュエルデという世界で世界神様の眷族をしております、朝比奈晴人と申しますが、本日世界神様は居られますでしょうか?」


「お疲れ様です。担当の世界神の名前は分かりますでしょうか?」


 世界神の名前!? そういえば世界神からはその名前を聞いたことが無かった。いや、待てよ。結構前にカミラから聞いた記憶が……。そう、確か……。


「ス、スルーズ神様、だったかと……」


「スルーズですね、確認致しますので少々お待ち下さい」


 そう伝えられると、受話器からは保留音らしきメロディが流れて来た。


 というか、こういうところで世界神の名前が必要になるのなら事前に教えておいてくれれば良いものを。


 ちょっと不満が湧き上がったが、それよりも、あの時カミラからマギシュエルデで信仰されている神様の名前を教えてもらえていて本当に良かった。そんなことを思い出していると突然、保留音が止まる。


「もしもし、ハルト様ですか?」


 そう、受話器越しに聴こえてきたのは、俺が転生するにあたって面接をしてくれた世界神の声だった。


「ご無沙汰しております。ようやく一段落しましたので、現状のご報告と、いくつかご確認させて頂きたくて参りました」


「わかりました、そちらで暫くお待ち下さい!」


 世界神がそう言うと、相手側の受話器が下ろされた音とともに、通話が終了したことを知らせる音が聴こえてきたので、仕方無く暫く待つことにする。


 五分ほど経った時、目の前にいつものドアが突如現れたので、早速ドアをノックする。すると、「どうぞ」と短く返事が返ってきたのでドアノブに手を掛けて、入室した。


「失礼します」


 扉を開けると、そこは以前転生前に入った会議室やおっさんと出会った会議室でもなく、所謂執務室といった感じのオフィスだった。


 正面奥には向かい合わせに並んだ二つのデスクと、その奥には恐らく責任者の執務机だろうデスクがお誕生日席の様に並べられていた。


「ようこそ、ハルト様。やっと来てくださいましたね!」


 そして、この声の主こそが、そのお誕生日席に座っていた世界神だった。


 つまり、この執務スペースは世界神が責任者を務めているということなのだろう。しかし、こういう神界の風景を見る度に思うのだが、この神界が何だか大きな一つの企業に見えてならない。閑話休題、話を進める。


「お疲れ様です、世界神様」


「お疲れ様です、ハルト様。マギシュエルデに向かわれてからご連絡が全く無かったので心配していたんですよ。せっかく何時でもお話しできる特典を差し上げたのですから、もっと気軽に使ってくださいね!」


 おぉ、そう言えば思い出したぞ……。確か、三つ目の特典としてもらった能力だっけ。あまりに使う機会が無かったからすっかり忘れていた。


「ハルト様、せっかくの特典を忘れるなんてあんまりです! 今後はもっと相談に使うとか、活用してくださいね」


 あれ、もしかして心を読まれた?


「当然です! ハルト様は既に私の眷族なのですから、以心伝心。この神界では眷族の思考を読み解くことが可能なのです!」


 何と、そうだったのか……。余りここでは変なことを考えるのは止しておこう。


 ところで、世界神との連絡ってどうやって取るんだっけ? 記憶の中を掘り起こしていたのだが、どうも、その方法を教えてもらっていなかった。


「あの、そもそも、どうやってご連絡すれば良いのか教えて頂いてないのですが……」


「えぇ!? あっ!?」


 勝手に驚き、勝手に気付いた世界神は顔を赤らめながら呟いた。


「その、すみません……。あのときはハルト様に眷族になって頂くことに必死で、お伝えするのを忘れておりました……」


「あ、別に責めているわけではありませんので……。それで、どうすれば良いんですか?」


「はい、簡単ですよ。こちらが私に直接連絡を取ることができる、『神話通信』の番号です。ハルト様が神力を使いながらこの番号を唱えられると、自動的に私と直接お話できますよ! ただ、私が取り込み中の場合は出られないかも知れませんので、その際には折り返しご連絡致しますね」


 そう言って、世界神は一枚の付箋を差し出した。それを受け取り、目を通すと、零から始まる三桁の数字と、その後ろに四桁の数字が二つ並んだ、見覚えのある十一桁の数字が書かれていた。


 携帯電話の番号かよ!


「ハルト様が以前居た世界にも似たようなものがあったのですか? それなら慣れるのも早そうですね! 早速、試してみましょう」


 世界神の言う通り、携帯に電話する要領で連絡できるのなら慣れるのも早いかも。それに、確かに一度試しておいたほうが良さそうだ。


 そう思い、早速神力を使いながら世界神から教えてもらった数字を唱えると……。頭の中に突然呼出音が鳴り響く。


「おおっ!?」


「ふふっ、最初は驚かれるかも知れませんね。今、私の元にハルト様から神話通信の着信があったことを確認しました。そして……」


『……神話通信はこんな感じで行います! どうです、便利でしょう?』


 世界神は声を出さず、直接俺の脳内に語り掛けてきた。なるほど、これが『神話通信』か。


『確かに、これは便利ですね。ただ、結構神力を使うようですけど……』 


『そうですね、神話通信中はハルト様の感覚で大体一分経過する毎に、ハルト様の神力を一万分の一程度消費しているようですから、あまり長神話してしまうと、ハルト様が神話通信中に倒れられる危険性もありますね』


 まるで神力が通話料金みたいだ……。だが、一万分、つまり百六十六時間にもなるが、流石にそんなに長く通話することは無いだろうから、特に問題は無いかな。一度今の神話通信を切ると世界神が改めて口を開いた。


「それから、私からハルト様にも連絡を取ることもできますよ」


 世界神がそう言うと、突然頭の中に着信を知らせるメロディが鳴り響く。この曲って……。


「はい! 生前のハルト様がこの曲をお好きだったと伺いましたもので、神話通信で連絡する時の着信音にしてみました! あの、気に入って頂けましたか?」


 うむ……。この曲は生前の世界で十八世紀に英国で生まれ育った牧師が作詞した賛美歌で、作曲は不詳らしい。生前、余暇に嗜んでいた遊技機では、この曲が流れると中々良い思いをしたことから、比較的この曲は好きだったのだが、これが世界神からの着信音とは……。気が利いている、のかな。ひとまずは、世界神の気遣いに感謝することにしよう。


「ありがとうございます、聴き慣れた音楽だと落ち着きます」


「それは良かったです!」


 純粋に俺のことを思ってこの曲をチョイスしてくれたみたいだが、この曲が好きだった理由が理由なので、屈託のない笑顔でそう言われるとちょっと照れる、というか恥ずかしいのだけれど……。まぁ、そのことについては知らないようだし、素直に世界神からの着信音を楽しむことにしよう。


 さて、そろそろ、俺の状況報告と質問タイムに入らせてもらおうと思い、こちらから気になっていたことを世界神に確認することにした。

いつもお読み頂き、ありがとうございます!

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