カルミーンの事情
「まずは、この洞窟から出ましょうか」
「うむ。だが、その前に一言言わせてくれ。皆よくやってくれた! 結果は少々拍子抜けするところもあったが、この通り無事帰還する目処が立ち、呪いに掛けられた者を解呪する手段も得られたのだ。此度の遠征の成果としては上々と言えよう。あとは麓に残した者たちを回収した後帝都へと戻り、父上と今後について相談するだけだ」
そう言って、ユリアーナが皆を労った。ユリアーナの言葉に皆が頷く。とはいえ、古代竜と一戦交える前に皆は呪いで倒れてしまったし、気がつけば俺が古代竜を従魔として従えていたとなると、ユリアーナの言う通り少々拍子抜けだったようで、皆の表情も渋い。
そのような中、ユリアーナが続ける。
「特に、アサヒナ伯爵には道中も含めて随分と助けられたな」
「それほどでもありませんよ。まぁ、古代竜と戦う前に皆を疲弊させるわけにはいきませんでしたから……」
正面から褒められるとちょっと照れくさい。
「其方がいなければ、こうして無事に皆で帝都に戻ることもできなかっただろう。それに、よくぞ古代竜を獣魔に引き入れた。色々と問題もなくはないが、これで皆に掛かった呪いを解くことができる」
「まぁ、結果的にそうなっただけですけどね」
『そうですよ〜! ハルト様がいなければ私は今もこの地でゆったりまったりと惰眠を貪れたのです〜!』
「カルミーンはちょっと黙って」
『あ、はい〜』
「ともかく、私は其方の働きを評価している。今回の件も含めて私からの褒美には期待しているがいい。もちろん、帝国からも褒美を与えることになるだろう。何せ、皇帝陛下の命の恩人だからな!」
「まぁ。そういうことでしたら、ありがたく頂きます」
「うむ。もっとも、褒美の内容は父上と相談した上で決めることになる。それ故、少々時間が掛かるのは承知してもらいたい」
「別にこちらは急いでもおりませんので、ゆっくり決めて頂ければと思います」
ユリアーナとそんなことを話しながら洞窟の出口を目指した。
あれだけ熱気を感じていた洞窟内もすっかりと凍てつき、先ほどまでマグマが流れていたとは思えないほど様相が変わっている。見た目はただの大きな洞窟となり、熱気よりも寒気を感じるような気がする。そういえばこの辺りは帝国の中でも北部だったな。
さて、これから洞窟前の広場に向かうわけだが、その間にやっておきたいことが幾つかある。その一つがカルミーンのステータスの確認だ。今後のことも考えると、彼女のステータスを把握しておいたほうがいいだろう。
ということで、早速鑑定することにした。
『名前:カルミーン
種族:火炎竜(雌) 年齢:996歳 職業:神の眷族の従魔
所属:朝比奈晴人
称号:朝比奈晴人に服従せし者
能力:SS(筋力:SS、敏捷:S、知力:SS、胆力:E、幸運:A)
体力:536,720/536,720
魔力:249,860/249,860
特技:火魔法:Lv10、爪術:Lv10、尻尾術:Lv9、土魔法:Lv9、人語理解:Lv9、風魔法:Lv8、噛み付き:Lv8、火炎ブレス、意思疎通、身体変化、呪術(火炎竜の惰眠)、鑑定(小)、弱点(水氷、勇者)
状態:健康(身体変化)
備考:朝比奈晴人が三匹目にテイムした魔物。
かつては北の大陸を焼き尽くすという未曾有の大災害を齎した火炎竜の末裔であり、現在生き残る数少ない竜種の一人。従魔にするなら、責任を持って番を探すように。
体長:92cm(74m)、体高:58cm(46m)、体重:乙女の秘密(およそ3500kg)』
ふむ。いろいろとやばいやつが来たな……。
まずは年齢だ。996歳って、ほぼ千歳じゃないか。カルミーンは何百年も生きてるって言ったけど、これは千年生きてるって言ったほうが早いレベルだろう。
職業や所属、称号などは既に俺の獣魔になっているからか、ヴァイスやカイザーと変わらない。しかし、その能力は単体の生物としてはこれまで見た誰よりも強力だ。セラフィでもまともに戦ったら敵わなかったかもしれない。そう考えると寒気がする。
そして特技だ。予想していた通りというか、火炎竜という通り、火魔法はレベル10だし、ドラゴンらしく爪術や尻尾術なんかも高レベルだ。土魔法も得意らしい。なるほど、この大きな洞窟も彼女が自分で作ったのかもしれない。
また、長生きしているからだろうか。人語理解もレベルが高いし、もちろん意思疎通も持っている。むしろ、このような存在が何故こんな辺鄙なところに閉じこもり、そしてルードルフを呪いに掛けることになったのか、その理由が知りたくなってきた。
呪いについては呪術という括りでまとめられるようだが、確かに今使えるものは『火炎竜の惰眠』一つだけのようだった。本人が言うにはもっと他の呪いも使えたとのことだが、やはり何かしらの制限が神界から掛かった可能性があるな。
特徴的だったのが、『弱点』だ。これまで多くの人や魔物を鑑定してきたが、これほど明確に弱点を伝えてくることはなかった。ということは、相当な弱点なのだろう。たまたまではあるが、俺が神氷を使えて良かったなと思う。
それにしても、弱点に『勇者』とはどういうことだろう。水氷の属性が弱点というのは理解できるのだが……。もしかして、あのまま勇者であるセラフィが戦っていれば弱点をついて倒せたということだろうか。
そうして鑑定したカルミーンは身体変化している状態だからか、現状の体長や体高が表示されたものの、その横には括弧書きで本来のものも表記されていた。体重は『乙女の秘密』なんて書いてあるが、本来の体重が見えているのだからほとんど意味はない。
まぁ、それは良いのだけれど、『この大陸を焼き尽くす大災害を齎した火炎竜の末裔』とか、『従魔にするなら、責任持って番を探すように』とか、どういうことなの!?
いや、前者は以前ミリヤムから聞いたことがある。この大陸全体がドラゴンによって燃やし尽くされたとか。それが確か千年以上前の話だったはずだ。そのことを考えると、末裔と言うよりは、そのときに暴れた火炎竜の子孫と言った方が良い気がする。
それにしても、番を探すようにってどういうことなんだろう? 竜種自体が少ないから、子孫を残さないといけないということだろうか。ふむ。そういうことならば、主人としてはカルミーンに相応しいドラゴンを見つけてあげないといけない。
そんなことを思いながら、ひとまずカルミーンのステータスについては大体理解できた。ステータスについては、基本的にはどのようなものであっても受け入れるつもりだったが、今のところ大きな問題になる内容はなさそうに思う。
そうなると、次に聞きたくなるのは、『何故、カルミーンがルードルフを呪いに掛けて、ヒッツェ山を噴火させたのか』ということだ。
これについては俺一人で聞くというよりも、皆で一緒に聞いたほうがいいと思い、皆の前でカルミーンに問い掛けた。
「ところで、今回私たちがカルミーンのもとに向かうことになった大きな原因は、貴女がゴルドネスメーア魔帝国の皇帝陛下であられるルードルフ様を呪いに掛けたこと。そして、同時期にこのヒッツェ山が噴火したことの二点です。何故、ルードルフ様を呪いに掛けることになり、そしてヒッツェ山が噴火することになったのか、それぞれ理由を教えて頂けませんか?」
『なるほど〜。その辺りをお話しないと、皆さんにも受け入れてもらえないようですね〜……。分かりました。少々長くなりますが聞いて頂ければと思います〜。えぇっとですね~……』
そう言ってカルミーンが語りだした。ユリアーナだけでなく、皆も気になるようで洞窟の出口に向かいながらもカルミーンの言葉に耳を傾ける。
『私はずっと昔からこの山で眠っていたのですが〜……』
「ずっと昔ってどれぐらい前からですか?」
『そうですね~。大体五百年くらい前からでしょうか〜』
「そんなにも前から……。何か理由でもあったのですか?」
『こちらの山に移ってきた頃に他のドラゴンから言われたんです。「悪いことをすると勇者が来るぞ」って〜』
「勇者!?」
『はい〜。もちろん、私は悪いことをするつもりなんてこれっぽっちもありません。ですが、私たちと人間では常識というものが違うそうですからね〜。他のドラゴンからも何が争いの種になるか分からないと、そう言われました〜。それなら、あまりこの山から出ないほうがいいかなと思いまして、ここで静かに眠っていたんです〜。とっても温かくって、私が眠るのに最適な場所でしたので〜。もっとも、ハルト様のせいで今では眠るのに最適な場所とは言えませんけど〜……』
「ふむ。なるほど、カルミーンがここにいた理由は分かりました。それでは、何故ルードルフ陛下を呪いに掛けて、ヒッツェ山が噴火することになったのですか?」
いよいよ核心に迫る。ここまでの情報も盛り沢山ではあったが、今回聞きたかったのはここから先だ。一体何が原因でルードルフが呪いに掛かり、ヒッツェ山が噴火したのか。それを確認する必要がある。
『それが、最近になって、一人の人間(?)が私のもとに訪ねてきまして〜。私は眠りを邪魔されたくなかったので、すぐに呪いを掛けたんですけど、何故か効かなかったんです〜。そう、ハルト様のように効かなかったんですよ〜』
「ほう、アサヒナ伯爵のようにか。それで?」
ユリアーナも事の経緯を聞きたいらしく、カルミーンの言葉に相槌を打つ。あれ、まさか俺を疑ってたりしないよね? 確かに、カルミーンの呪いが効かない人間なんて間違いなく少数派だと思うけど。いや、俺にはアリバイがある! でも、最近一人で行動することが多かったし、皆からも怪しい目で見られるのは仕方がないか……。
それにしても、こんなところにまで人がやってきたのか。それも一人で。まだヒッツェ山も噴火していない頃だと考えると、ここまで来るに当たり魔物にも遭遇しているはずだ。それを一人で対応しながらやって来たとなると相当な実力者だったことが伺える。
『そうしたら、今度は人間が私に話し掛けてきて、「私の言うことを聞けば、永遠の安らかな眠りにつかせてあげる」と言ってきて〜。はぁ、永遠の安らかな眠り、なんて魅惑的な言葉でしょう……。そう思って詳しく話を聞いたら、ルードルフ・ブルート・ゴルドネスメーアという人に呪いを掛けろと言われまして〜』
「なんだと!?」
ユリアーナが驚きの声を上げる。まぁ、急に父親の名前が出てきたら驚くのは当然か。それにしても、永遠の安らかな眠りって、つまり『死』ではないのか? それを都合よくカルミーンは『心地よい眠り』だと受け取ったようだ。なんとまぁ。
それは普通に詐欺だぞ。流石は千歳も生きているだけのことはある。もしかすると、彼女はもうおばあちゃんなのかもしれない。
そんなくだらないことを考えていたら、急に身体が揺さぶられる感覚に襲われた。
「一体どういうことだ!?」
『キャッ!?』
「おわっ!?」
ユリアーナが俺の肩に抱きつくカルミーンを揺さぶってきたので、俺も一緒に揺さぶられて危うく倒れそうになる。そんなユリアーナを何とか落ち着かせて、再びカルミーンに話を聞くことにする。
「それで、カルミーンはどうしたのですか?」
『はい〜。私も普段から誰にでも呪いを掛けるわけではありません。それなりに魔力を必要としますからね〜。ですから、丁重にお断りをしたのですが、今度は「逆らうようなら氷漬けにする」と脅してきまして〜。私も寒いのや冷たいのは大の苦手なので、やむなくルードルフという人間に呪いを掛けることにしたのです〜。その方が、この国を治める皇族の偉い方だとは露知らず〜。本当に申し訳ありませんでした~!』
そう言いながら、カルミーンが俺の肩の上でユリアーナに頭を下げる。そこまで素直に謝られるとユリアーナも毒気を抜かれたようで、何も言えなくなっていた。
「なるほど、カルミーンは呪いを掛けるように脅されたわけですね。それで、呪いを掛けるように言ってきた人間はどうしたのですか?」
『はい〜。協力した見返りに、永遠の安らかな眠りを頂けると思っていたのですが、急に「気が変わった」などと言われまして〜。約束を守らないなんて本当に酷いヤツですよね〜。プンプン!』
そう言ってその時のことを思い出しながら怒り出すカルミーン。はぁ、そのおかげで命が助かったなどとは思いもしないらしい。とにかく、話を先に進めてもらう。
『それで、代わりに何かご褒美はないのかと聞いたら、「この山をもっと暖かくしてやろう」と言われまして〜。気がついたら洞窟の中が真っ赤になっていました〜。私も寒いのよりは、温かい、暑いほうが好きなので、これには感謝しました〜! ただ、最初の頃は暑くなりすぎたり、噴煙が充満したりして困りました〜。最近になってようやく安定したところだったのですが〜……』
そう言いながら、ジトリとこちらに視線を送るカルミーン。まぁ、超・神氷により少々冷やしすぎたなとは思っていたが、あまりこちらを見ないで欲しい。恥ずかしいと言うか、羞恥心だ。俺も少々やり過ぎたなとは自分でも理解しているのだ。
それはともかく、カルミーンの言うことが正しければヒッツェ山を噴火させたのはカルミーンではなく、ここに現れた人間のようだな。しかし、火山を噴火させる力を持つ人間なんて、そうはいるとは思えない。このような大地の環境にまで影響を与えるなんて、相当な実力を兼ね備えた人物だと思われる。
『そういえば、その人間はこんなことを言ってました〜。「これで聖女の役も終わりね、ようやく魔王に戻れるわ」と〜。それから、今後この山に私を討伐しにたくさんの人が来るから、気をつけるように言ってました~』
「ここに魔王が来たのですか!?」
「ここに来た人間というのはリーゼロッテだったのか!?」
カルミーンの言葉に俄に沸き立つ俺とユリアーナの二人。周りの皆も驚いているようだった。そんな俺たちの反応に驚きながら、カルミーンが首を横に振って答えた。
『本人がそう言っていただけで、本当に魔王かどうかは私にも分かりません〜。もちろん、鑑定しようとしたのですが、私の鑑定では正体を確かめることはできなかったのです~……』
そういえば、カルミーンは鑑定(小)を持っていたな。流石に鑑定(小)では魔王のステータスまでは確認できなかったか。それにしても、よく魔王の言葉を覚えていたな。
『私は耳と記憶は良いほうなのです~!』
それが本当かどうかは知らないが、カルミーンの言葉でリーゼロッテ・クレーデル=帝都の聖女=魔王という図式はほぼ確定したと言って良いだろう。鑑定(小)が効かない人間なんてそうはいない。
「つまり、帝都の聖女リーゼロッテ・クレーデルがカルミーンを脅してルードルフ皇帝陛下に呪いを掛けたということですね。そして、リーゼロッテ・クレーデルが魔王であるということも間違いないでしょう」
「そうだな。それにしても、あのリーゼロッテが、一体何故……」
「理由は分かりませんが、残された手紙の内容から察するに、帝国を混乱に陥れようと企てたのだと考えられます。それが、どういった理由によるものかは分かりませんが……」
「くっ!」
ユリアーナとそんなやり取りを行うが、リーゼロッテ・クレーデルが魔王だったということは、間違いなく今回の一件は神の試練だったということで間違いない。
人々に災厄を齎すのが魔王の務め、そう考えると皇帝陛下の命を奪い、残った皇子や皇女で権力争いをさせて国を弱体化させようとしたのも、火山を噴火させて罪なき民を食糧難に陥れて路頭に迷わせようとしたのも、全て魔王の仕業だと考えれば納得がいく。そして、これが世界神の昇神試験の一環だということも……。
まぁ、そんな理不尽なことをユリアーナに伝えるわけにはいかないが。
あ、そういえば今回の件について世界神に報告するのを完全に忘れていた……。本来なら、魔王が関連していると分かった帝城で一度報告を行うべきだった。げげげ、また雷を落とされそうだ。とはいえ、確信が持てなかったとか言い訳をすれば見逃してくれないかな。
一旦、この話が終わったら神話通信で世界神に連絡を入れることにしよう。
「それで、その後はどうしたのですか?」
『はい〜。それで、温かくなったこの山の中で再び眠っていたのですが、暫くするとこの山に近づき、私に殺意を向けてくる者が現れたので、仕方がなく呪いに掛けることにしたのです〜。そうでもしないと、ゆっくり眠ることができませんからね~』
なるほど、それがヒッツェ山の周辺に倒れていた辺境調査団だったというわけか。それはひとまず置いておいて、魔王はその後どうしたのだろうか。
『魔王かどうかは分かりませんが、私を脅してきた人間は、私がルードルフという人間に呪いを掛けたことを確認すると言って、転移魔法で何処かに去っていきました。久々に見ましたね、転移魔法〜』
ふむ。魔王には逃げられたようだ。いや、その後クレーマンがリーゼロッテにルードルフの鑑定を依頼しているから、帝都に戻ったと考えるべきか。
その後は俺たちの知っている通りだ。クレーマンがルードルフを助けようとしてリーゼロッテから聞き出した毒草(火竜草)を煎じた薬を飲ませたことでルードルフは次第に衰弱した。クレーマンは火山の対応にも追われて辺境調査団を向かわせることになったが、フェリクスがカルミーンを見つけて討伐しようとした結果、カルミーンによってこの辺りに滞在していた辺境調査団は全員がルードルフと同じく呪いに掛けられることになった。
そうして、ユリアーナ率いる第四次辺境調査団が派遣された頃に俺たちがこの地へやってきたというわけだ。
「これで今回の一件の全貌が大体掴めましたね」
「……うむ。だが、これから考えなければならないことがまた一つ増えたような気がする。そう思うと、帝都に戻る足取りも重くなるな……」
「まぁまぁ、そう落ち込まないでください。私も他国からではありますが、できる限りユリアーナ様にご支援、ご協力を致しますから。もちろん、ライナルト様にも。一つずつ片付けていきましょう!」
「そうだな。これからやらねばならぬことは山積みだが、一つずつ片付けていくしかないな」
「さぁ、そろそろ日の光が見えて参りました。出口はもうすぐそこですよ!」
「よし、あと少しだ! 皆も疲れているだろうが、気合を入れろ。洞窟の外に出たら今日は休むことにする。そして、明朝麓の広場に戻り、倒れている皆を回収次第帝都へ戻ろう!」
「「「「「「「「「おー!」」」」」」」」」
こうして、俺たちは無事にヒッツェ山から出て、広場に置いていた馬車の中に辿り着いたのだった。
外に出て空を見上げると、ヒッツェ山から吹き出ていた火山灰は止んでいた。地面から感じていた熱も今は感じない。どうやら、火山の噴火も完全に落ち着いたようだ。この辺りはカルミーンの言う通りだな。どうやら今回の事態の峠は越したらしい。そのうち青空も拝めるだろう。
あとは事後処理だが、それはユリアーナたちの仕事だ。もちろん、サポートはするつもりだが、他国の貴族である俺がどこまで役に立つかは分からない。だが、これでようやくグリュック島での米作りに近づくことができた。
「あとのことは帝都に帰るまでの間にある程度考えるとして、今は皆と少し休もう」
そんなことを呟きながら、俺はカルミーンとともに馬車の中に入った。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。




