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グスタフとの面会

 ついに『アサヒナ伯爵家騎士団長選抜試合』の決勝の日がやってきた。既に闘技場の前には長蛇の列ができている。その列を成す多くの観客は商人たちだった。昨日の予選に比べて今日の決勝はより多くの商人たちが詰めかけた。その数は千人近く。


「押し合わないでください! 二列になって整列しての入場をお願い致します! そこっ! 押し合わないでください! 整列してください! 整列入場にご協力頂けない場合は入場券を発券できません!」


 闘技場の入り口に観客たちが押し寄せた結果、ちょっとした騒ぎになっていた。


 それを何とか整列入場させて治めようと必死に声を張り上げる。主催者である俺が直接出向いて案内係をすることで、暫くしてようやく落ち着いた。


 何が原因だったのか確認すると、やはりオークションへの参加券が原因だった。入り口で手渡していた参加券を求めて一部の商人たちが我先にと詰めかけた。それを見た他の商人たちもつられて殺到してしまったのだ。


 心配しなくとも入手した順番や番号によって優劣はない旨を伝えつつ、合わせて、希望者には全員に配布する旨を伝えたことで騒ぎが治まったのだった。うーん、このあたりも次回イベント開催時には注意しておく必要があるな。


 そんなわけで、今日の試合の観客の多くが商人たちだ。


 『オークション参加券=大海竜の肉の試食会抽選カード』は朝から昼間近の今となっても途絶えることなく求められ続けており、既に千を超える発券枚数となっていた。これは昨日の観客数よりも多くなるかもしれない。


 とはいえ、朝方に比べると大分状況も落ち着いてきたので、あとのことは屋敷から手伝いに来てくれた使用人たちに任せて、俺は出場者の控室へとやってきた。


 そう、グスタフとの面会だ。


 果たして、グスタフの自信のほどはいかがなものか。あまり自信がなさそうだったら、戦いの前に励まさねば。いや、気合を入れるべきか。だが、どうしたら気合を入れることができるのか。やっぱり、闘魂を注入するビンタとかだろうか。


 そんなことを考えながら控室のドアをノックした。すると、中から、「どうぞ」というグスタフの声が聞こえてきたので、やや緊張した面持ちでドアを開けた。


「旦那様! どうしてこちらに?」


 驚いた表情でグスタフが出迎えてくれた。グスタフの側にはアロイスも控えていた。俺が入ってきたことで腰を上げた二人にそのままでいいよと席につくよう伝えて座らせる。


「いえ、試合の前にグスタフさんを激励しに来たんですよ。何しろ、今日の対戦相手はユッタさんですからね、強敵ですよ。ずばり、自信のほどは?」


 そう言いながら、グスタフの身体を見る。うん、明らかに前よりもでかい……。以前はこんなに筋肉質な体型ではなかったはずだ。まるで、某スーパーなサ◯ヤ人のようにムキムキの体型になっている。


 念のため鑑定もしておこう。


『名前:グスタフ・ブリッツ・ヴェスティア

 種族:獣人族(男性) 年齢:20歳 職業:アサヒナ伯爵家警備兵(アサヒナ伯爵家騎士団長候補)

 所属:アルターヴァルト王国

 称号:元ヴェスティア獣王国第三王子

 能力:S(筋力:S、敏捷:S、知力:A、胆力:S、幸運:A)

 体力:15,980/15,980

 魔力:0/0

 特技:剣術:Lv10、短剣術:Lv10、弓術:Lv10、採取:Lv7、気配察知、殺気感知、礼儀作法

 状態:健康(重力負荷:100%)

 備考:身長:180cm、体重:86kg』


「ファッ!?」


「如何なさいましたか?」


「い、いえ、何も問題ない、です」


 何だこのステータスは!?


 職業、所属が現在のものに更新されているのは分かる。称号も謀反者などという不名誉なものが取れたようで何よりだ。だが、そんなことはどうでもいい。問題は能力だ。


 筋力と胆力がAからSにまで上昇している。それに、以前はEだった幸運がいつの間にかAまで上昇していた。一体何があった?


 それに体力。以前と比べてめちゃくちゃ上昇している。大体五割増しくらいか? その値はハインリヒに迫るくらいだ。


 特技も元々剣術はLv:10だったが、短剣術と弓術もLv:10になっているし、何気に採取も上がっている。


 そして身長と体重だ。身長もわずかに伸びたようだが、それよりも体重が二十キロも増えている。道理でムキムキの体型になるわけだ。


 というか、重力負荷100%って、今も指輪をつけているのか? というか、100%って、どういうこと!? 体重が2倍だよ!? どこぞの野菜の星の王子様よりはマシだけど、それにしても試合直前までつけることはないでしょ。


 まぁ、本人が何も気にしてなさそうなので、あえてこの場で突っ込むようなことはしないでおくことにする。


「旦那様に頂いた指輪のお陰でこの短期間に自分自身を随分鍛えることができたと思います。それでもユッタ殿に勝てる自信はまだ湧かないですね。もう少し時間があれば良かったんですが……」


 そう言って自信なさげに視線を机の上の虚空に漂わせる。


 うーん。そこまで鍛え上げても勝てる自信が湧かないユッタって一体どういう存在なのか。それはそれでちょっと気になるが、それよりも今は自信が持てないグスタフを励まさないと!


「確かに、ユッタさんは強敵です。でも、今日までグスタフさんはしっかりと鍛錬を重ねてきたんですよね? ならば、それについては自信を持ってください。しっかりとその成果は身体に出ていますよ」


 そう言うとグスタフは顔を上げた。


「それに、この試合に勝てばグスタフさんの好きな付与魔法を与えた剣をプレゼントする約束だったじゃないですか。ちょっと本気を出して、頑張ってみましょうよ! 結果なんて、やってみなきゃ分からないじゃないですか!」


 勝てますよ、とは言わない。俺も本当にユッタに勝てるか分からないから。でも、グスタフのこのステータスなら、ちょっと本気を出せば、勝てるとまでは行かなくとも、そこそこ良い勝負ができるのではないかと。そんな気がしたのだ。


「そうです! 旦那様の仰る通り、やってみなければ結果など分からないではありませんか! 戦う前から弱気になどなってはいけませんぞ、グスタフ様!」


 グスタフの隣りに座っていたアロイスがグスタフの手を掴むように握ってそう言った。まさにその通り、戦う前から弱気になってはいけない。アロイスの言葉に俺もウンウンと頷いた。


「……アロイス、ありがとう。ユッタ殿との戦いを前にどうやらちょっと弱気になっていたらしい。旦那様。必ず勝ちます、とは言えませんが、最善を尽くすことを誓います!」


 それに、勝てばご褒美もありますから。そう言ってグスタフはウィンクしてくれた。どうやら調子を取り戻したようだ。こんなお茶目なことをするキャラだったっけ? これまで、それほど関わってこなかったせいもあってか、いまいちグスタフのキャラが掴めない。


 でも、最善を尽くすって言ってくれた。それだけでなんだか嬉しい気持ちになる。これくらい前向きになってくれればグスタフを励ましに来た甲斐もあったというものだし、グスタフの勝利も見えてきた気がする。うん、これなら問題なさそうだな。


「では、頑張ってください!」


 グスタフへの激励を終えた俺はグスタフの控室から退室した。


 ふぅ。


 一仕事を終えた気分だ。だが、あれだけ鍛えたにも関わらず、勝てる自信が湧いてこないとなると、本当にユッタはどういう存在なのかと問いたくなる。本当にどんな試合になるのやら。


 そんなことを考えながら通路を歩いていると、カールたちに出くわした。どうやら、カールたちはユッタの激励に来ていたらしい。


「ハルトもユッタの激励に来たのか?」


 うーん、なんて返せばいいのやら。「いえ、グスタフさんの激励に来た帰りです」なんて正直に言うと何だかややこしいことになりそうだし、「はい、そうです」と言ってもユッタに何を言えばいいのか分からない。


 とりあえず。


「いえ、試合開始の前に控室の様子を窺いに来ただけですよ。ユッタさんの調子はどうでしたか?」


「あぁ、やる気満々だったぜ!」


 カールが自信満々にそう言った。そうか、る気満々なのか……。ふと、先ほどまで見ていたグスタフの表情が思い浮かぶ。あの表情を思い浮かべると、できれば結果を出してほしいと願う。


 とはいえ、やっぱりユッタに勝つのは難しいか? あれだけ鍛えたのだから、グスタフにもワンチャンあるはずと信じたい。だが……。


 カールの話を聞いた俺は、勝利の行方について思案するのだった。

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

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