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リーンハルトとパトリックへの相談

「リーンハルト様、パトリック様。この度はお時間を頂きありがとうございます」


「ハルトの訪問であれば我らは何時でも時間を取るぞ!」


「その通りですよ! それで今日は何のご相談ですか?」


 リーンハルトとパトリックが出迎えてくれたので、早速本題に入ることにする。


「はい。ようやくですが、うちの騎士団長を決める試合の日程が決まりましたので、そのご報告を。これから一週間と六日後、まぁ、約二週間後になりますが、グリュック島に新たに建設した闘技場にて試合を開催することになりました。期間としては予選と決勝合わせて二日間の予定です。催す試合の名前は『アサヒナ伯爵家騎士団長選抜試験』となります」


「おお、ついに決まったのか! もちろん、私とパトリックは出席するつもりだ! 父上とウォーレンはどうだろうか、パトリック?」


「約二週間後であれば、ぎりぎり調整ができる日程ですね! 二日間と期間が短いのもこちらとしては助かりますし、問題ないかと!」


「そうですか。開催までの期間が短く、また開催期間も二日にわたってということで、ご参加頂けるか心配しておりました」


「先ほども申した通り、もちろん出席するつもりだ。むしろ、出席するために父上を含め、我らは重要な予定はなるべく入れないようにしていたのだ!」


「まぁ、流石にそれは冗談ですけどね。でも、余程のことがない限りはハルト殿との予定を優先するつもりだったのは本当ですよ?」


 リーンハルトの言ったことは冗談だったらしいが、パトリックの話を聞く限り、そうとも言い切れないようだ。


「……因みに、ヴェスティア獣王国からはエアハルト陛下も出席されるのだろう?」


「はい、その予定です。ヴェスティア獣王国からは、エアハルト陛下、ハインリヒ様、クラウス様、そしてアレクサンダー様も出席される予定となっております」


 エアハルトとハインリヒはともかく、クラウスは今回使用人と騎士候補たちを手配してくれた張本人だし出席するのは当然だ。そして、第三王子専属の騎士たちを預かってきたのはアレクサンダーだ。暫くの間とはいえ、自分の部下だった騎士たちの活躍を見たいという可能性は十分にある。


「うむ、やはり父上には出席して頂かなくてはならないな。エアハルト陛下とハインリヒ様が出席されるというのに、出席するのが我らだけでは、ハルトのことをアルターヴァルト王国が軽視しているという風に見られるからな」


「そうですね。何なら、母上と姉上のご都合も確認しておいたほうが良いかもしれません。ランベルト、念の為ですが母上と姉上のご都合も確認してください」


「はっ! 直ちに確認して参ります」


 そう言って、パトリックの後ろに控えていたランベルトが部屋を出ていった。因みに、ユリアンはリーンハルトの後ろに控えている。


「それにしても、試合の期間がたった二日とは、どういうことなのだ?」


「そうですよ。参加人数が多いのでしたら流石に二日で決めることは難しいでしょう。かと言って、参加人数が少ないのであれば二日も掛ける必要はありません」


「それについてはクラウス様からご提案がありまして。実はですね……」


 俺はクラウスから提案された、トーナメントの優勝者とグスタフが戦うという案を採用したことを伝えた。まぁ、今回の試合に参加する人数が半端な人数だったから急遽採用した案だ。だが、それで良かったと思っている。流石にグスタフが全員と戦うというのではグスタフの身体が持たないからな。


「ふむ。またもクラウス王子か……」


「確か、ハルト殿の新しい屋敷の使用人の手配を行われたのもクラウス王子でしたよね?」


「えぇ、まぁ。その通りですが……。その、何か?」


「最近ハルトはクラウス王子との交流が多いようだな?」


 まぁ、確かにそうだな。何かとヴェスティア獣王国のお世話になっているというか、クラウスには世話になることが多い。だが、それがどうしたというのだろう?


「もっと、我らを頼ってくれて良いのだぞ!」


「そうです! ここ最近はタイミングが合わず、ヴェスティア獣王国に頼り切りになっていましたが、我らアルターヴァルト王国もハルト殿のお役に立ちたいのです!」


「お、おぅ……」


 どうやらリーンハルトとパトリックの二人には、最近俺がヴェスティア獣王国に肩入れしているように見えたらしい。そんなつもりはないんだがなぁ。


「ありがとうございます。今回は使用人と騎士候補のどちらもヴェスティア獣王国に相談することになりましたので、その人員の手配をして下さっているクラウス様とお会いする機会が多かっただけですよ。パトリック様の仰る通り、タイミングが合わなかっただけですから」


 たまたまクラウスと会う機会が増えただけだとリーンハルトとパトリックの二人に説明する。だが、あまり納得はしていないようで、二人とも少し不満そうな顔をしていた。まぁ、これ以上どう説明すればいいのか分からない。「今後何かあればお二人を頼りにさせて頂きます」と伝えて、ようやく二人の機嫌が直ったのだった。


 そんなやり取りを二人としているとドアの向こうからノックの音とともにランベルトの声が聞こえた。


「ただいま戻りました」


「それで、母上と姉上のご都合はいかがでしたか?」


 パトリックがランベルトに確認する。


「はい。ヴィクトーリア様、フリーダ様ともに今のところご予定は空いているとのことです。むしろ、お二人とも出席には前向きのようでした。アサヒナ殿の治められる領地を確認したいとのことです」


「まぁ、そのような答えが返ってくるとは思っていたが、姉上だけでなく、母上までもか……」


「しかし、そうなりますと、王国の重要な人物の全員がアサヒナ殿の領地に向かうことになりますね……」


 今までリーンハルトの後ろで控えていたユリアンが呟いた。


 ふむ。確かに、王族と宰相その全員がグリュック島に集まることになる。それって、アルターヴァルト王国的に問題ないのだろうか?


「むぅ。確かに、王族が誰もいないというのは問題ではあるが、此度の試合はエアハルト陛下とハインリヒ様だけでなく、クラウス様もご出席になられる。それに、ハルトの話ではアレクサンダー様も来られるかもしれないというではないか」


「先方が王族総出で出席されるというのですから、こちらも相応に王族の者が揃って出席しなければ侮られかねません。かと言って、王族と宰相が王都から居なくなるのもそれはそれで問題がありますね。はぁ、全くどう対応するべきでしょうか」


「やはり、ウォーレンに留守を頼むしかないか……」


「楽しみにされていたのですが、致し方ありませんね……」


 リーンハルトが「うむ」と頷くと、パトリックも続いて「えぇ」と言いながら頷いた。どうやら二人の中では、既にウォーレンが留守番することが確定しているようだった。それでいいのかとも思ったが、それ以上に良い案が思い浮かばなかったので何も言えなかった。


「念の為、ゴットフリート陛下とウォーレン様には後でご確認頂ければと思います……」


「うむ!」


「もちろんです!」


 こうしてリーンハルトとパトリックの二人に試合の日程を伝えることができた。ゴットフリートたちには二人から説明してもらうことになる。


 また、ヴィクトーリアとフリーダの二人も試合を見に来るらしい。試合というか、グリュック島の視察のほうがメインのようだが。まぁ、見られて困るようなものはないので問題はない。ただ、驚かれるようなものはあるかもしれないけど……。


 ウォーレンはやっぱり留守番することになるのだろうか。


 確かに、ヴェスティア獣王国側も政治の現場を預かるヨハネスとか元老院の者が留守番をしてくれるから王族が自由に行動できるのだろうし、アルターヴァルト王国も宰相であるウォーレンが留守を預かるほうが良いのかもしれない。ウォーレン本人としてはグリュック島に来たかったのかもしれないが。


 そんなわけで、リーンハルトとパトリックとの謁見を終えた俺は王城を後にした。もちろん、御者を務めてくれたティニには特別手当を与えた。ちょっと話が長引いたから、待機時間の分も含めて少し多めに渡しておいた。本人は喜んでいたようなので問題ないだろう。


 さて、そろそろグリュック島にヴェスティア獣王国からクラウスに相談していた使用人たちが到着する頃だ。こちらも準備を進めなくては。

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

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