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領都の名前について

 グスタフと騎士候補たちと戦う際の装備について相談を行った。見た目や実用的な機能面についてはグスタフからの意見を多く取り入れた。その結果、俺が付与しようと考えていた各種耐性や強力な性能は公平性を欠くということで今回は保留となった。


 その代わりに、うちの騎士団が正式に立ち上がった際の、正規装備品には取り入れるということになった。つまり、グスタフの装備は見た目のみ正規の騎士団装備と同一のものだが、性能は王都などでも手に入るちょっと上等な性能に留まることになったのだ。


 因みに、見た目については俺たちの装備と合わせて黒色を基調としたものになった。パッと見た印象はどこぞの暗黒騎士っぽいが、統一感を出そうとした結果なので仕方がない。というか、グスタフからそのようにして欲しいと要望があったので叶えることにしたのだった。


「素晴らしいです! これなら誰が見てもアサヒナ伯爵家の騎士団として認識してもらえるでしょう!」


 まぁ、こんなに厳つい見た目の騎士団なんて他にないだろうからな。とはいえ、グスタフが満足しているならいいか。


 そんなこんなで、グスタフの装備を完成させると、俺はラルフの元へと向かった。先日相談した中古の家屋について、不動産屋からいくつか候補が上がってきたらしい。


「ラルフさん。空き家が幾つか見つかったということですが、何軒ぐらいありましたか?」


「はい。王都の近隣にある農村を中心に探してみたのですが、全部で二十七軒の空き家が見つかりました。また、大工についても手配が完了しており、いつでもグリュック島に向かわせることができます」


「おぉ、二十七軒も……。それはそれで、過疎化が心配になるところですが、今回に関して言えばありがたいですね。それに、既に大工の手配もできているとか、ラルフさん、流石です!」


「ありがとうございます。そういうわけで、旦那様にはお手数をお掛けすることになりますが、空き家の回収とグリュック島への設置、そして大工の移動についてご対応をお願い致します」


「分かりました。早速対応しますね」


 ということで、ラルフから情報を聞いて魔導船で各地に空き家を仕入れに行ってきた。王都の周辺には俺が思っていたよりも多くの農村があることに気づいた。そういえば、王都で冒険者になったものの、近隣の農村には行ったことがないんだよな。そもそも、依頼を受けた事自体少ないし。


 ともかく、ラルフの情報を元に農村に向かい全部で二十七の空き家をアイテムボックスの中に仕舞っていった。ただ買い取るだけでなく、アイテムボックスに収納していったので、突然家が消えたとあって少々驚かれたが、このくらいは仕方のないことと割り切った。


 また、一軒あたりの金額はおよそ金板一枚から三枚の範囲で購入できた。そういえば、生前の田舎の中古戸建て物件も数百万円で売りに出ていたことを思い出した。田舎の中古物件は意外と格安なんだよな。その分、幾らかは修繕費用にも掛かるのだが。


 空き家を手に入れた俺は続いてグリュック島のミリヤムとマルセルの二人を訪ねた。買い集めてきた空き家をどこに設置するか確認するためだ。


「これから増員が必要となる住人のために空き家を集めてきました。どこに設置するべきか相談がしたいのですが、今お時間大丈夫でしょうか?」


「もちろん問題ございませんのじゃ。それにしても、なるほど。確かに、空き家を集めれば、時間も掛からずに住居が用意できますな。とはいえ、アサヒナ伯爵様のアイテムボックスがあってこそ、できることではありますが」


「この案を発案してくれたのはうちの家令でもあるラルフさんです。褒めるならラルフさんを褒めてあげてください」


 そう伝えると、ミリヤムとマルセルの二人が頷いた。そろそろ、うちの使用人たちをグリュック島に案内する時期が来ているのかもしれない。


「分かりました。それで、その空き家というのは幾つほどあるのでしょうか?」


 マルセルがそう聞いてきたので、少し情報を足しながら伝える。


「大き目の屋敷、そうですね。二世帯が暮らせそうなのが十軒、一世帯向けの小さめの家が十七軒になります」


 そう、意外と大き目の屋敷、というには少々小さいが、二階建てだったり平屋だが広めの物件が合わせて十軒もあったのだ。恐らく、村長やそれに近しい者が住んでいたであろう家なのだが、空き家として売りに出ていたのだ。うーん、アルターヴァルト王国の過疎化も意外と深刻なのではないだろうか。


「二十七軒ですか。しかも、二世帯も暮らせる大きな屋敷が十軒も。ということは、百人ほどの住人を住まわせることができそうですね」


 大人二人に子供が一人、三人一世帯が十七軒で五十一人、大人四人に子供一人、五人一世帯が十軒で五十人。確かに百人ほど住める家屋ができることになる。


「とはいえ、幾つかはこの村の住居を建てるために呼ぶ大工たちの仮住まいにもなりますから、急に百人の住人が増えるという訳でもありません」


「なるほど、既に大工も手配頂けているのですね。そうなると、既存の家屋の修繕に何人かと、新規に建てる家屋に十数人ほど必要になりますが、アサヒナ伯爵様が用意してくださった空き家で大工たちは十分に生活できそうです! また、空き家の設置箇所は新規に建てる家屋の近くに設置して頂くほうが良さそうですね」


「そうですか。それなら、空き家の設置個所についてはマルセルさんにお任せします」


「はい! では、早速ですがお願いできますでしょうか?」


「問題ありません。早速現地に向かいましょう!」


 マルセルに案内されたのはグリュック街道の中心地だった。別に端から家屋を設置して言っても問題ないようにも思うが、海岸に近いところは漁業や港湾で働く者たち向けの家を建てる予定があるらしく、逆にうちの屋敷や対魔王勇者派遣機構の本部に近いほうは今後貴族や豪商など身分の高いものが住む屋敷を建てられるように土地を確保しておいたほうがいいということに納まった。


 ミリヤムたちの村から移設した家屋は純和風の家屋だったが、今回買い付けてきた家屋はどちらかと言うと洋風であり、アルターヴァルト王国の一般的な家屋だったため、入り乱れると景観としてあまりよろしくない。そんなわけで、今回買い付けてきた家屋は近いところに寄せて一つの集落のように集めて設置することになった。


「将来的には、我々の住む家屋もこちらの風土や文化に合わせて建て直すつもりです」


「そうですか。個人的には和風建築というか、オラーケルの里の建物の様式も好きなんですけどね」


「そう言って頂けると嬉しく思います。とはいえ、あまり街並みの景観が揃っていないのも、見栄えの問題もありますが、あとあとトラブルを招くことになりそうですので、できる限り統一性を持たせたいとは思います」


「そういうものですか。その辺りは良く分からないので、マルセルさんにお任せしますよ」


「承知致しました。それはさておき、そろそろこのオラーケルの里にも新たな名前を付けねばなりませんね」


「オラーケルの里のままで良くないですか?」


「ここはアサヒナ伯爵様が治める土地ですし、オラーケルの里と言われるとどうしても以前住んでいた土地を思い出しますからね。ここは新たな名前を頂きませんと」


「頂きませんと、ということは、もしかして、私が考えるんですか!?」


「もちろんではございませんか! ここはアサヒナ伯爵様の治められる土地なのですから! そして、領都となる土地でもありますから、やはりアサヒナ伯爵様に命名して頂かなくては!」


「なるほど……。そうか、実際にはうちの領地というわけではないんだけど、対外的に見ればうちの領地になるのか。そして、そこに築いた都は領都ということになるのか……。それにしても、領都の名前と言われてもすぐに良い案が浮かばないなぁ」


「ははは。まぁ、そう急ぐ必要はありませんが、そろそろ対外的にもこの土地に村を築いたことを知らせる必要があります。それに、近々騎士団長を決める試合も開かれるのですよね? そうとなれば、領都の名前も決めませんと」


「それもそうか……。あれ? 騎士団長を決める試合のことって話してましたっけ?」


「既に村では噂になっておりますよ。アサヒナ伯爵様が立ち上げる騎士団の団長を決める試合が行われるというのと、それを見にアルターヴァルト王国とヴェスティア獣王国から賓客が訪れるらしいというお話が」


 詳しい話を聞くと、コリンナあたりから話が漏れ伝わったらしい。そして、コリンナも闘技場の周りに出店を出すようで、すでに準備を大々的に進めているとのことだった。そうなると、そろそろ正式に村の住人たちにも試合の話をしておいたほうが良いのかもしれない。


 それにしても、領都の名前か。考えもしなかった。島の名前と同じ『グリュック』でいいんじゃないかとも思ったが、こういうことはうちのお姉さま方としっかり相談して決めなければ後でトラブルになる。マルセルには持ち帰って検討する旨だけを伝えて、一旦俺はアルターヴァルト王国の屋敷へと戻るのだった。

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

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