グスタフの装備について
ヴェスティア獣王国でクラウスと打ち合わせを行った。
先日手紙で相談していたアサヒナ伯爵家の騎士団長を決める試合を観戦する賓客をもてなすために、今後うちの新しい屋敷で雇う予定の使用人たちを一足先に借りられないかという相談についてだ。手紙でも問題ないということだったが、直接会って了承を得ておきたかったのだ。クラウスからは面白いことを思いついたね、などと言われたが、特に問題ないようだったので安心した。
そして、何と三日後にはグリュック島に来られる手配をしてくれるとのことだった。こちらも早いほうが助かるのは助かるのだが、それにしても手際が良すぎないか? 流石に三日ではこちらの受け入れ準備が整わないのでしばらく待ってもらうことにしたが。
それはともかく。アレクサンダーが預かっている元第三王子の騎士団のなかで、無条件でうちの騎士団に入ってもいいと考えている騎士候補が何人いるのか確認したところ、何と三十九人もの騎士たちが無条件で加わってくれるとのことだった。
これで、過半数以上が無条件で加わってくれることになり、グスタフとの試合も回避できると思ったのだが、そうは問屋が卸さなかった。一度地に落ちた評価を覆す為にも、他の反対する者に対してグスタフ自身が実力を示す必要があるのではないかというハインリヒからの親心によって、反対する騎士たちと試合を行うことになったのだ。
とはいえ、流石に十一人もの相手と一日で戦うのはグスタフといえども流石に厳しいだろう。ということで、クラウスの提案によって、騎士候補たちのなかで勝ちあがった一人とグスタフが決勝戦を行うという形になった。ただ、十一人という半端な人数では格好がつかないということもあり、クラウスから俺のほうで追加で五人ほどメンバーを集めて欲しいという相談があったのだ。
その相談を受けて、俺はうちの騎士団に入る予定のユッタたち五人に声を掛けたのだった。この勝敗の結果で騎士団内の序列が決まるのではということで、五人ともやる気満々だ。
そんなわけで、ようやく一通りの準備が整ったこともあり、俺は再びアルトヒューゲルの屋敷に戻りグスタフの装備を作ることにしたのだった。とはいえ、今回は試合という場でお披露目することもあり、ただ強い装備を作ればよいというものでもないと思い、グスタフと相談してから創ろうと思ったのだ。
そうして、グスタフに時間を取ってもらって試合で使用する装備について相談することにした。
「そういうわけでして、グスタフさんの装備を用意しようと思ったのですが、ただ強力な装備を作っただけではグスタフさんの実力を他者に認めさせるに至らないと思い、どうしたものかと悩みまして。グスタフさんのご意見を参考にできればと思いお時間を頂いたわけです」
「なるほど……。ですが、私には特別な装備など必要ありません。我が身、我が剣術の実力で勝利しなければ、誰も納得しないと思います。私にはこの剣と鎧がありますので問題ありません」
そう言って、腰にぶら下げている長剣の鞘を撫でた。
「とはいえ、グスタフさんが騎士団長となることに反対しているのは十一人もおります。そして、それ以上に厄介な相手となるのはユッタさんたちです。備えあれば憂いなしとも言いますし、ここは装備を入念に準備しておいたほうが良いのでは?」
「ユッタ殿たちが!?」
「えぇ、実はですね……」
俺はユッタたちが参戦することになった経緯をグスタフに説明した。
「はぁ……。何と厄介なことを……」
「とはいえ、参加させる理由がありそうなメンバーが他にはおりませんでしたので」
「それは分かりますけども……。とはいえ、ユッタ殿たちが参加するというのでしたら、対戦相手として勝ち残る可能性は十分に考えられますね。現役のAランク冒険者パーティーですし、実力としては第三王子の騎士団に所属していた騎士たちよりも上と考えたほうが良いでしょう。それに、ユッテ殿とレオナ殿は魔法を使われますし、ただ剣術だけに自信のある騎士では到底敵わないでしょうね」
「そうなると、ユッタさんたちは初戦を勝ちあがる可能性が高いということですか?」
「その可能性は高いでしょう。そして、決勝に残るのもユッタ殿の中の誰かである可能性が高いです」
「なるほど。ということは、グスタフさんの対戦相手はユッタさんたちの誰かになる可能性が高いということですね」
「恐らくは。しかも、先ほどのお話を聞く限り、彼女らの士気は高いのですよね?」
「そうですね。この試合で騎士団の中での序列が決まるから、と言ってましたから」
「はぁ……。そうなると、私の対戦相手はほぼ確実にユッタ殿たちの誰かになりそうですね……。魔法対策も考えておかないといけなくなりましたよ」
何というか、申し訳ない。頭を下げて謝りつつ、であれば、余計に装備が重要になるのではないかと話を振ってみた。
「そう言われますと、確かに装備は重要な要素になりますね。とはいえ、あまりに過剰な装備を身につけるというのも何か今回の試合の趣旨から言って違う気がしますし」
ふむ。確かに、今回の試合はグスタフの強さを世に知らしめ、過去の過ちから立ち直ったことを印象付けるものにしなければならない。だから、強力な装備でガチガチに固めて試合に勝っても意味がないというか、グスタフのためにならないのは確かだ。そうなると……。
「少なくとも、装備の見た目は最低限に抑えておかないといけないですね」
「そうですね。少なくとも全身を甲冑で覆うようなものは避けたいと思います」
「そうなると、見た目はシンプルなものが良さそうですね」
俺は懐というかアイテムボックスから紙切れの挟まったバインダーを出してそこに簡単なイメージをつらつらと書いていく。
「とはいえ、兜も必要ですし、籠手もあったほうが良い。胸当、肩当、肘当も必要だし、腰当もあったほうがよさそうです。足元は膝当と脛当も必要ですね。靴も金属製のほうがいいですかね?」
「お話を聞いていると、既に全身を甲冑で覆っているように聞こえるのですが……?」
「いえいえ。確かに装備の部位は甲冑と同じく必要かなと思っていますが、素材については別に金属である必要はないかなと。私が付与魔法で各種耐性を付与しますので!」
「付与魔法!? あの、それではアーティファクトになってしまうのでは?」
「そこについては気にしてはいけません。今回はユッタさんたちに勝つことが第一の目的ですので! それに、グスタフさんがお持ちの剣もアーティファクトなんじゃないですか?」
「確かに、この剣には装備した者の力と素早さを上昇させる付与魔法が掛かっておりますが……。いえ、そうではなくて。旦那様は付与魔法を、いえ、アーティファクトを創ることができるのですか!?」
「はい。創れますよ。実際、アメリアさんたちの装備には付与魔法が掛かってますし、グスタフさんと戦ったときも付与魔法が掛かった装備で参戦していたのです。まぁ、当時の付与魔法は単純なものだったので、グスタフさんの攻撃を一撃受けただけで効果が外れてしまうような欠陥品だったのですが……。でも、それも過去の話。今ではそう簡単に外れない、しっかりとした付与魔法を掛けられるようになったので、ご安心ください!」
「そうだったのですね……。魔剣に操られていた私には記憶がありませんが、確かにアーティファクトである装備でもなければ、魔剣に太刀打ちなどできなかったでしょう。しかし、これは口外できないですね……」
「そうですね。口外は控えて頂けると助かります。そうですね、もし秘密を守ってくださって、尚且つ試合に勝てたのなら、特別にグスタフさんの好きな付与魔法を与えた剣をお一つ創って差し上げますよ。そういったアーティファクトの類、お好きなんですよね?」
「よ、よろしいのですか!?」
「はい。もちろんです。その代わり、私の創った装備で試合に出て頂いて勝った場合に限りますが……」
「わかりました! 旦那様の創られた装備を身に纏い試合に出させて頂きますし、見事勝利して見せますよ!」
「それでは、よろしくお願いしますね。それはそれとして、装備についてですが、こんなイメージはどうでしょうか?」
「なるほど。ですが、ここはもう少し詰めたほうが動きやすそうですね。あと、ここについてですが……」
こうして、試合に勝利した際にはアーティファクト級の剣をご褒美に与えるという条件で装備の製作について説得に成功した俺は、グスタフと試合で使う装備について詳細を詰めることになった。
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