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クラウスとの相談

 王都の屋敷についてリーンハルトとパトリックの二人と相談した結果、再び王家の執事であるゲオルクと出会い、無事彼に使用人を手配してもらえることになったのだった。


 とはいえ、流石にすぐにとは行かないようで、人選には暫く時間が掛るとのことだった。大事な屋敷を預ける使用人だ。人選にはしっかりと時間を取って良い人材を集めてもらいたいところだ。


 また、リーンハルトとパトリックの二人には、グリュック島で行なわれるうちの騎士団長を選出する試合を観戦する賓客については、クラウスに用意してもらう使用人たちで対応させてもらうことを伝えておいた。ゴットフリートとウォーレンにも伝えてもらうことになっているので、当日になって彼らが戸惑うことはないだろう。


 そういった相談と報告を済ませた俺は王城をあとにして、今度はヴェスティア獣王国にやってきたのだった。クラウスには既に手紙で使用人たちについて相談していたが、こういったことはちゃんと顔を合わせて話しておかないと、と思ったからだ。もちろん、アポロニアとニーナの二人が一緒についてきている。


「この度はお時間を頂き申し訳ございません」


「ハルトがわざわざヴェスティア獣王国にやって来たんだ。時間を取らないわけにはいかないよ。それにこちらからも報告があるしね」


 そう言って迎えてくれたのはクラウスだった。今日はアレクサンダーはいないらしい。


「それで、どういう話なのかな?」


「先日お手紙でご相談させて頂いた件について改めてお願いに参ったのと、その他の細々とした内容についてご報告させて頂ければと思い、お時間を頂きました」


「あぁ、グリュック島に移動する使用人の話だったね。大丈夫、既に皆には伝えてあるから。それにしても面白いことを思いついたよね。まだ正式に雇うことも決まっていない使用人に賓客の世話をさせるなんて。それで、こちらはいつから動けばいいのかな?」


「そうですね。騎士団長を決める試合まで残りの日数も少ないことですし、できるだけ早い時期だと助かるのですが……」


「できるだけ早く、ね……。それなら、こちらは三日後には動けるようにしておくよ」


「えっ、三日後ですか!? あ、ありがとうございます、本当に助かります! ……ですが、流石に三日ではこちらの受け入れ準備が整わないかと思いますので、受け入れの準備が整い次第改めてこちらからご連絡させて頂きますね」


「あぁ、分かった。それで、他にも相談したいことがあるんでしょ?」


「はい。まずは以前お話に上がった、グスタフさんと戦う意思のある騎士候補が結局何人現れたのか、その確認をさせて頂ければと思っております」


 そう、以前クラウスのもとを訪れた際に、クラウスとアレクサンダーの二人に相談していたのだ。アレクサンダーが預かる第三王子の騎士団の中で、無条件でうちの騎士団に入ってもいいと考えている騎士候補が何人いるのかを事前に確認させてほしいと。つまり、グスタフの部下になってもいいと考えてくれる人がいるのかを確かめておきたかったのだ。


「あぁ、それならアレクサンダー兄さんから資料を預かっているよ。確かここに……。あぁ、あった。無条件でハルトの騎士団に入っていいと考えている騎士候補の人数は……」


「人数は……?」


「うん。三十九人だね」


「三十九人!? だとすれば、過半数を十分に上回ってますね! これなら、試合をするまでもなくグスタフさんはうちの騎士団長に決定ですね! よかったぁ!」


「ところがね。そういうわけにも行かないんだ」


「えっ? 一体どういうことですか!?」


「まず、この結果についてはエアハルト兄上と父上にも共有されたのだが、父上から三十九人では過半数を僅かに上回っただけで、それではグスタフ兄上をハルトの騎士団長にするには不十分ではないかという意見が出たんだよ」


 何だと!? 過半数を上回ったんだからいいじゃないか。余計なことを言うな、ハインリヒ! そんなことを思ったが、クラウスの話を聞くと、ハインリヒとしては一度地に落ちた評価を覆す為にも、他の反対する者に対してグスタフ自身が実力を示す必要があるのではないか、と思ってそのような意見を口にしたらしい。


 むぅ。確かに、グスタフがうちの騎士団長に就任するにあたって、反対意見を持った者をそのまま騎士として雇うのは後々問題になりかねない。そのことを考えると、ハインリヒの言う通りグスタフに戦ってもらったほうが後腐れがないとも言える。ただなぁ……。


「ということは、グスタフさんは十一人と戦わなければならないということですか。予想していた過半数の二十六人以上よりは少ないものの、流石に一日で決着を付けるというわけにもいかないですね……」


「うん。そこでハルトに提案なんだけど、今回のハルトの騎士団長を決める試合の試合方法については事前に予選を勝ち抜いた勝者とグスタフ兄さんの一戦で結果が出るようにしない?」


「なるほど、騎士候補同士の予選会を行い、その中の勝者とグスタフさんが戦うわけですね!」


「そう、そういうこと。問題なければ、そういう形にしたいんだけど。グスタフ兄さんに負担を掛けたくないという気持ちもあるんだけど、それよりも、ハルトの騎士団長を決める試合だけに何日も王城を空けていられないというのが切実な事情ではあるんだけど……。いいかな?」


「こちらとしても早く結果が出ることには異論がありません。そうなると、予選会で一日、決勝戦で一日の計二日間で取り決めるということで良いでしょうか?」


「そうだね、それでいいと思うよ」


「分かりました! その日程でこちらも準備を致します!」


「あぁ、それと十一人では少々参加人数が足りないからね、ハルトのほうであと五人ほど参加者を見繕って欲しいんだ」


「はぁ。あと五人ほどですか。しかし心当たりが……。あぁ、無いわけでもないので、ちょっと検討してみますね」


「うん、よろしく頼むよ」


 そんな話をしつつ、クラウスには当日試合を観戦する賓客については魔導船で迎えに行く旨を伝えた。ヴェスティア獣王国からはエアハルトの他、ハインリヒとクラウス、アレクサンダーの四人が来るらしい。魔導船については、以前グスタフとアロイスを回収した王城の騎士団訓練場まで迎えに行くことになった。


 そうして、再びアルターヴァルト王国の屋敷へ戻って来た俺は早速迎賓館へとやってきたのだった。


「ユッタさんはおられますか?」


「なんだ、ハルト?」


 迎賓館で声をかけたところ、ユッタがすぐに現れた。その後ろにはユッテとレオナ、それにゲルトとカールの皆が揃っていた。うむ、これは好都合だ。


「ユッタさん、それにユッテさん、レオナさん、ゲルトさんにカールさんも。皆さんが揃って居られて良かった。実はちょっとご相談がありまして……」


「ハルトが私たちに相談するなんて珍しいな。一体どんな相談なんだ?」


「皆さん、私の、アサヒナ伯爵家の騎士団に入ってくださるんですよね?」


「なんだ、藪から棒に。前から言っている通り、私たちは皆ハルトの領地の騎士団として雇われたいという気持ちに変わりはないぞ!」


「そうですか! でしたら、是非とも、これから開催されるアサヒナ伯爵家の騎士団長を決める試合に参加して頂きたいのです!」


「「「「「はぁ!?」」」」」


「い、一体どういうことだ? 騎士団長はグスタフ殿になるんだろう?」


「それが、そう簡単に決まるわけではなくてですね。実は……」


 ユッタたちにクラウスとの話をかいつまんで話した。つまり、騎士候補たちが参加する予選会にユッタたちにも参加してほしいと伝えたのだった。これで、ユッタ、ユッテ、レオナ、ゲルト、カールの五人が参加してくれれば、予選会は十六人で行われることになる。


「なるほど。そういうことなら、別に参加しても構わないぞ! 別に優勝しても構わないのだろう?」


「結果によって、アサヒナ伯爵家の騎士団の中での序列が決まるわけね。これは手を抜けないわ……!」


「そういうことか。それなら、俺もAランク冒険者として実力を示さないといけないな!」


「私も、お姉ちゃんとしてハルト君を守れるっていうところを見せないとね!」


「はぁ、仕方がないのう。儂も久々に実力を出せるよう準備をしておかないとな!」


 ユッタたち、Aランク冒険者パーティー『精霊の守り人』の面々はやる気に満ち溢れているようだ。


「ありがとうございます! ユッタさん、ユッテさん、レオナさん、ゲルトさん、カールさん!」


 こうして、アサヒナ伯爵家の騎士団長を決める試合の準備も徐々に整ってきたのだった。

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

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