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魔人族の里と思わぬ出会い

 三日後、無事に魔人族の里へと辿り着いた俺たちは、早速里長の家を訪ねていた。何でも、ユッタとユッテは里長と顔なじみということなので、それならば渡りを付けてもらおうということになったのだ。


「よう参られたの、旅の御方。ワシがこの里の長、オイゲンじゃ」


 里長の家から現れたのは鬼人の老人だった。白髪に隠れた額から二本の長い角が見えている。鬼人というと、うちの使用人であるリーザとリーゼの姉妹を思い起こすが、彼女らのように青白い肌ではなく、どちらかと言うとよく日に焼けた褐色の肌と、老人とは思えないほどに鍛え上げられた筋肉が目を見張る。


「久しぶりね、オイゲン」


「なんじゃ、誰かと思ったらオラーケルの里のユッタじゃないか。それにユッテも。ほんに久しぶりじゃのう」


 ユッタとユッテの姿を見て顔をほころばせるオイゲン。


「貴方も元気そうで何よりだわ、オイゲン」


「それで、こんな田舎まで一体何の用じゃ?」


「ちょっと待って、その前に紹介させてちょうだい。今の私たちは『精霊の守り人』っていう冒険者パーティーを組んでるの」


 そう言って、ユッテがレオナとゲルト、それにカールを紹介する。


「レオナです!」


「ゲルトという」


「カールです」


「これでも私たち、今ではAランクの冒険者パーティーなのよ?」


「ほう、Aランクの冒険者パーティーか。いつの間にか立派になったんじゃのう」


「そうなのよ。オイゲンもいつの間にか貫禄が出てきたわね?」


「ふぉっふぉっふぉ。年をとったと言いたいんじゃろう。まぁ、その通りじゃ。そろそろ落ち着いた見た目にする頃じゃと思っておったからのう」


 そういえば、魔人族は見た目の年齢を変えられるんだっけ。見た目は老人だが、本当の姿はもっと若いのかもしれない。とはいえ、ユッタとユッテと気安く話しているということは、ユッタとユッテと同年齢ぐらいなんだろうか。というか、ユッタとユッテの年齢って、本当に幾つなんだろう……?


 レオナたち『精霊の守り人』の紹介を終えて、今度はノーラと俺の紹介となった。ノーラが魔力メモパッドにつらつらと書きこんでいる。ノーラが書き終えるのを待ってユッタが紹介する。


「それで、この子はノーラ。うちの里の巫女だ」


「(コクコク)」


「ほう、この娘がオラーケルの里の巫女か。そういえば、ここ暫らくは神託を授かれぬと聞いておったが……。いや、そんなことよりも、巫女といえばオラーケルの里の重要人物じゃろう。こんなところまで連れ出してきてよかったのか?」


「えぇ、それは問題ないわ。本人の意思でもあるし、ミリヤムからも許しを得ているから」


「まぁ、それならええが。それで、そっちの子供は?」


 ようやく自分の番になったので早速自己紹介を始める。


「お初にお目にかかります。私はハルト・フォン・アサヒナと申しまして、ここより南の帝都ヴァイスフォートから海を越えた先にある大陸のアルターヴァルト王国とヴェスティア獣王国の両国の貴族で、伯爵位に就いています。一応、こちらがその証拠になります」


 そう言って、先日ミリヤムにそうしたように、アルターヴァルト王国で伯爵位を表す黄金色に輝く徽章と、ヴェスティア獣王国で伯爵位を表す短刀を懐から出して見せる。


「何と……。ユッタ、ユッテ、この子供はいったい……!?」


「ハルトの言ったことは本当よ。アルターヴァルト王国とヴェスティア獣王国の両国で伯爵位らしいわ」


「それでね、ハルトからオイゲンに相談があるらしくって、わざわざこの里まで私たちと一緒に来たというわけなのよ。そういうわけだから、少し話を聞いてもらえるかしら?」


 オイゲンは俺の自己紹介に驚いたというよりは、いきなり『自分は貴族です』などと言い出した子供の俺に対して戸惑ったようだ。そんなオイゲンに対してユッタとユッテがフォローしてくれたおかげもあってか、俺が貴族であるということについて、一応納得はしてくれた。


「確かに、これほどまでに細やかな細工が施してある徽章や短刀なんぞ、そこらで簡単に手に入るようなものではないじゃろうな。それで、その他国の御貴族様がわざわざこんな田舎の里の遠いところまでやって来てくださったのは、いったいどんな用件ですかな?」


「はい、その件についてお話を聞いて頂けると助かるのですが、今お時間はよろしいでしょうか?」


「う、うむ。それでは、こんな場所で話を聞くというわけにも参りませんな。粗末な家ではありますが、中へお上がりくだされ……」


 こうして俺たちはオイゲンの家に上がらせてもらうことになった。


 魔人族の里の家もオラーケルの里と同様に昔の日本家屋と似た造りらしく、土間から靴を脱いで居間へと通される。すると居間の中心には火が起こされた囲炉裏があり、そこには鉄瓶から湯気が立ち昇っていた。


 囲炉裏を中心に皆で座る。家長である里長が最奥の席へと座り、俺はその隣側に通された。ユッタたちは俺の左隣で土間側にユッタとユッテ、レオナとゲルトにカールと二列になって座る。囲炉裏の席次は良く分からないが、一応客人として認められたのだろう。


「「失礼します」」


 戸の奥から二人の女性の声がすると同時に、すすっと戸が開いた。


 急須と茶碗らしきものがお盆の上に乗っていることから、どうやらお茶を淹れてくれるらしい。急に大人数でやってきたので、二人の女性には手間を掛けさせてしまい申し訳ないなと思いながら、お茶の準備をする二人の女性に目を向ける。すると、そこにはいないはずの二人の顔が目に映ったのだ。


「えっ!? リーザさん、リーゼさん!?」


 思わず驚いて声を上げる。そう、部屋に入ってきた二人の女性は、うちの屋敷の使用人であるリーザとリーゼの姉妹だったのだ。


「リーザ?」


「リーゼ?」


 二人の女性が同じように首を傾げながら、こちらに視線を向ける。何だか仕種もリーザとリーゼによく似ている気がする。服装が和装である点を除けば、リーザとリーゼの二人に本当にそっくりだ。


「アサヒナ様、どうしてその名を……?」


 オイゲンが驚いたように話し掛けてきた。


「いえ、そちらのお二人がうちのアルターヴァルト王国にある屋敷に仕えている、リーザさんとリーゼさんという使用人とあまりにもそっくりでしたので驚いたわけでして……」


「なんと、そうでしたか。実は、リーザとリーゼというのはこの二人の姉の名前でしてな。もう随分前にゴルドネスメーア魔帝国へと旅立ってから帰ってきておりませぬのじゃ。連絡も寄越さぬ故、無事であるかどうかも分かりませんでしたが……。そうですか、今はアルターヴァルト王国におるのですか。二人は元気にやってますでしょうか?」


「……そうですね、元気に働いてくれています。というか、こちらの里がリーザさんとリーゼさんの二人の故郷だったのですね。世間は広いようで狭いと言いますが、本当にそうですね」


 驚き過ぎて思わずオイゲンの質問に答えるのが遅れたが、本当に世間は広いようで狭いとはよく言ったものだ。


 それにしても、リーザとリーゼにそっくりだと思った二人の女性は、リーザとリーゼの妹だったとは。そういえば、リーザとリーゼと初めて王城で出会った際にも双子かと尋ねたら、四つ子だと言っていたのを思い出した。なるほど、この二人が四つ子の妹さんなわけか。


『名前:レーナ・ロイス

 種族:魔人族(女性/鬼人) 年齢:25歳 職業:農家の娘

 所属:ゴルドネスメーア魔帝国

 称号:四つ子の鬼神

 能力:A(筋力:C、敏捷:A、知力:A、胆力:A、幸運:C)

 体力:2,660/2,660

 魔力:6,150/6,150

 特技:風魔法:Lv9、土魔法:Lv8、火魔法:Lv6、生活魔法、鬼神化

 状態:健康

 備考:身長:142cm、体重:43kg(B:82、W:50、H:84)』


『名前:レーネ・ロイス

 種族:魔人族(女性/鬼人) 年齢:25歳 職業:農家の娘

 所属:ゴルドネスメーア魔帝国

 称号:四つ子の鬼神

 能力:A(筋力:B、敏捷:A、知力:A、胆力:B、幸運:C)

 体力:2,400/2,440

 魔力:5,600/5,600

 特技:土魔法:Lv9、風魔法:Lv8、水魔法:Lv6、生活魔法、鬼神化

 状態:健康

 備考:身長:142cm、体重:44kg(B:86、W:52、H:86)』

 

 ふむ。二人はレーナとレーネというのか。リーザとリーゼのステータスを見たときは『元諜報員』などという記載があって、ややこしそうなのが来たなぁという感想を抱いたが、二人のステータスにはそういうところは見当たらず至極まっとうに見える。


 そして、リーザとリーゼにもあった称号『四つ子の鬼神』が二人にも付いていた。いったい何があればこんな称号を得ることになるんだろうか……? 特技にある『鬼神化』も気になる。もしかして、獣人族が持つ特技『獣化解放』みたいなものなんだろうか。どちらにせよ、怖くてこの話題には触れられないな。


 それにしても、二人とも土魔法と風魔法のスキルレベルが高い。普段から農作業に魔法を使っているからだろうか。そういえば、リーザとリーゼが米から籾殻や糠を取り除くのに風魔法を使っていたことを思い出した。職業も農家の娘とあるし、農作業や家事の手伝いなどで土魔法や風魔法を多用した生活をしているのかもしれない。


「では、アサヒナ様。改めて自己紹介させて下され。儂の名はオイゲン・ロイスと申します。このホルンの里の里長を務めております。こちらの二人は先ほども申しましたように、リーザとリーゼの妹でレーナとレーネと申します」


「はじめまして。レーナ・ロイスと申します、お客様」


「はじめまして。レーネ・ロイスと申します、お客様」


「では、私も改めまして。ハルト・フォン・アサヒナと申します。アルターヴァルト王国とヴェスティア獣王国の両国で伯爵位に就いております。先ほども申しました通り、レーナさんとレーネさんのお姉さんであるリーザさんとリーゼさんのお二人は、アルターヴァルト王国の王都アルトヒューゲルにあります私の屋敷で使用人として勤めて頂いております」


「「お姉様が伯爵様のお世話を……?」」


「えぇ、その通りです。本当によく働いてくださいますよ。私もその働きには感謝しています」


「上から下まで?」


「朝から晩まで?」


「ち、違います! いや、確かにそうなんだけど……。あぁ、もう。レーナさんとレーネさんは本当にリーザさんとリーゼさんのお二人によく似てますね!?」


 レーナとレーネの二人にツッコミを入れつつ、そういえば、まだオイゲンに今回の来訪の目的を伝えられていなかったことを思い出した。はぁ、そろそろ本題に入らないとな……。

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

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