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セラフィ誕生

 というわけで、この魔動人形の名前について考えてみた。


 黒く染まった三対の翼を持つ美しい姿からイメージするもの。それは所謂『堕天使』だった。その中でも後にサタンと呼ばれた『ルシファー』のような高位の天使だった者だ。


 そういえば、ルシファーって元々最高位の天使だっけ。確か、最高位の天使って熾天使だったような。読みはセラフィムとかで……うーん、セラフィムか。セラフィム……セラフィム……よし!


「決めました! この魔動人形の名前は『セラフィ』、熾天使のセラフィです!」


 名前を付けると魔動人形『セラフィ』は静かに目を開けて中空からふわりと床に舞い降り、その場に跪いた。


「主様、『熾天使セラフィ』只今起動致しました。これより主様に忠誠を誓い、主様の為に役立つ所存です。よろしくお願い致します、主様!」


「ありがとう、セラフィ。これからよろしく頼むね。それで、早速だけどこの装備を身に着けてくれるかな?」


 俺はカウンターのあるほうに指を指し、セラフィの為に用意した装備を着用するように指示を出した。


「はっ、承知致しました!」


 セラフィがそう答えると、俺の視界はカミラの手によって塞がれた。俺としては別にセラフィが装備を着用するシーンを見たかったというわけでもなかったので特に気にすることはなかった。


 ただ、布の擦れる音や金属のぶつかる音が時折聞こえるせいで、逆に色々と想像を掻き立てることになってしまったのは、健全な男としては仕方がないことだろう。


 暫くして周りが静かになったようだ。


 恐らくセラフィが装備を身に着け終えたんだろう。カミラが目を塞いでいた手もほどなくして緩まってきた。


「主様、ご用意頂いた装備を身に着けました!」


 カミラの手を下ろしてもらい、セラフィの姿を確認する。うむ、俺が用意した装備一式を身に纏ったセラフィはまさに戦乙女という出で立ちだった。ただ、俺が用意した装備の色味が黒と赤を基調としているせいで、ある種の闇落ちしたような雰囲気もある。


「うん、よく似合ってるよ! 流石は俺が創った魔動人形だ!」


「はっ、ありがとうございます!」


 セラフィは誰に似たのか、少し固いところがあるようだけど、素直な性格のようだ。


「それにしても、セラフィの翼は黒く輝いて綺麗なんだけど、ちょっと目立つかな」


「ありがとうございます。ですが主様、この翼でしたらこの通り仕舞うこともできますので、ご心配無用かと」


 セラフィはそう言うと翼をしゅるりと背中に引っ込めた。


 そんな機能まであるとは思わなかった。自分で創っておきながら、思わぬ高性能さに驚いてしまったが、漫画やアニメで見たことがあったので俺はそれほど気にならなかった。


「ちょっと、今の何なのよ!? 翼はどこへいったのよ!? ちょっとセラフィ、アンタ背中を見せなさい!」


「乙女の背中をそう簡単に見せるわけにはいきません! ちょっと、何をするのですか!?」


 ヘルミーナが騒ぎ出してセラフィに背中を見せるようにせがんでいた。アメリアとカミラも不思議に思ったのか気になるようで、様子を伺っている。


「ヘルミーナさん、そこまでにしてください。セラフィが嫌がってるじゃないですか! セラフィは私が創った魔動人形、と言うよりも私の子供のようなものなんですから。あんまり嫌がることは控えてくださいよ。さぁ、セラフィ、こっちにおいで」


「もう、仕方ないわね! まぁ、いいわ。今度アンタに説明してもらうからね!」


 いや、俺もセラフィがどんな構造なのかはすごく興味深いけど、嫌がるのをむりやり調べるというのはちょっと趣味ではないんでね。それに何だか自分で創造したからか妙に愛着があるっていうか。つい、『俺の子供』だなんて言ってしまったし。


「わ、私が、主様の子供……!? ということは、私は主様のむ、娘!?」


 そんなことを呟くと、何故かセラフィがモジモジし始めた。


 はぁ、大丈夫なのか、これは? 念の為に名付けをしたあとの状態を鑑定しておくか。


『名前:セラフィ

 種族:魔動人形?(女性) 年齢:0歳 職業:神の眷族の従者

 所属:朝比奈晴人

 称号:朝比奈晴人の従者、朝比奈晴人の初めて創った魔導具、朝比奈晴人の娘

 能力:SS(筋力:SS、敏捷:SS、知力:SS、胆力:SS、幸運:SS)

 体力:999,999/999,999

 魔力:999,999/999,999

 特技:自動回復(毎時10%回復)、礼儀作法

 備考:朝比奈晴人が初めて創り上げた魔動人形。

    製作者である、朝比奈晴人が名を授けることで生を受けた。

    三対の翼はセラフィの持つ魔力が溢れて具現化したもので出し入れ可能。

    自己の意思を持ち、自由に行動することができる。

    製作者である、朝比奈晴人の指示にのみ従う。

    能力は、朝比奈晴人の神格により変化する。

    完成品(損傷率:0%)、構成素材(不明)

    身長:162cm、体重:52kg(B:86、W:56、H:87)』


 名付けしてから初めての鑑定だけど、何だか色々おかしい……。


 まず、種族の魔動人形に『?』が付いているんけど、魔動人形じゃなくなってるのか?


 それに称号だ。いつの間にか俺の娘になっていた。図書館で調べた情報によると、称号とは自他共に認められることで、自然とつくものだったはずだ。


 ということは、俺が娘だと口にしたせいで、セラフィ本人も娘だと認めたせいで、俺の娘という称号を得たということなのか!? ヘルミーナからセラフィを助ける為に口にした言葉だったのだが、どうやらそれだけではないらしい。俺だけでなく、アメリアとカミラ、それにヘルミーナの三人もセラフィを俺の娘として認識してしまったようだ。


 俺はまだ結婚もしてない。いや、そもそもこの世界では成人すらしてないんですけど! それなのに子持ちになるなんて思いもしなかった。


 いや、そんなことは些細なことだ。最も変化があったのは能力だが、何だこれは!?


 なんなんだよ、能力SSって……。


 能力が以前は全てSだったのに対して、今回は全てSSとして表示されていたのだ。


 しかも体力と魔力はこれまで見たこともない六桁。しかも、最大を現わす九がずらりと並んでいる。もしかすると、非常にまずいものを創ってしまったのかもしれない……。


 ちょっと、いや、もの凄く拙いものを創ってしまった可能性があるな……。


 しかし、創ってしまったものは仕方ない。現にセラフィはここに存在するわけだし。


 ところで、魔動人形ができたのだ。


 二つ目の実験である魔力による動作について確認しようと考えたのだが、その前に気になる点が出てきた。そもそも、セラフィってどうやって動いてるんだ?


「セラフィが動作するために必要なものって何なんだ? 魔動人形は使用者の魔力によって動くらしいし、そこの魔動人形は精霊が宿ることで動くらしいんだけれど……」


「はい、私は主様から分けて頂いた神力により、この通り動くことができます。その為、私には精霊の力も魔力も不要なのです!」


 なるほど、俺の神力が動作するために必要なエネルギーということか。


「そうなのか。もし、俺から生命力が得られない状態、例えば俺が死んだりしたら、どうなるんだ?」


「はっ、その時は私も同時に果てることになるでしょう。しかし、そのようなご心配は無用です! 我が身を呈してでも必ずや主様をお守り致します!」


「ありがとう、セラフィ。心配しなくても、俺もそう簡単に死ぬつもりはないからな」


「はい、主様!」


 うんうん、セラフィはいい娘だなぁ。


「ちょっと、ハルト! 二人の世界に入ってないで、これからどうするつもりなのかはっきりさせてよね!」


 ヘルミーナの言葉ではっと我に返る。


 それにしても、想像していた通りというか、想像していなかったというか。セラフィは魔力ではなく神力で動く魔動人形だった。これでは、二つ目の実験を試すこともできないな。


 ともかく、これで俺の実験も終了したわけだ。ヘルミーナのいう通り、これからのことを決めないと。


「おっと、失礼しました。とりあえず、これで私の実験は終わりました。魔動人形も用意できていることですし、早速ユリアン様に連絡を取りましょう。リーンハルト様との面会の日程を決めて頂かなくてはなりません」


「分かったわ。すぐに執事のローデリヒさんに連絡を取ってみるわ。向こうから連絡が来るまで少し時間がかかると思うんだけど、それまでの間セラフィはどこに泊まらせるつもりなの?」


「それは……。考えていませんでした……」


 こんなに大きな魔動人形を創ることになるとは思わなかったし、セラフィの宿泊場所が必要になるとは思いもしなかった。


「主様! 私のことなど気になされることはありません! 私は主様のアイテムボックスに入れますので問題ありません!」


「そう言ってくれるのは嬉しいけど、アイテムボックスに仕舞うなんて、それじゃまるで道具みたいじゃないか。俺はセラフィが魔動人形であっても道具としてではなく、同じ仲間、いや、俺の娘のように考えてるんだ。だから、自分をそんな風に言うんじゃない!」


「あ、主様……。申し訳ありません! それと、ありがとうございます!」


 などと威勢良く啖呵を切ったものの、金色の小麦亭は予約が一杯で部屋も取れないし……。


 これは、本格的に俺たちだけの拠点が必要だな。


 俺の言葉に感激しているセラフィを他所目に考えに耽っていると、ヘルミーナが口を開いた。


「何なら、特別にうちに泊めてあげてもいいのよ?」


「ふん! 却下に決まっているだろう。何をされるか分からないからな!」


「何もしないわよ!」


「どうだか。それに私は主様のお側を離れるつもりはない!」


「それは……。別に、ハルトが一緒でも、良いんだからね?」


「ダメ。ハルトはまだ幼い。だから、外泊はダメ。私たちと一緒に泊まる」


「まぁまぁ。多少部屋は狭くなるがセラフィ一人ぐらい増える程度なら私たちの部屋でも大丈夫さ。暫くはハルトは今まで通り私たちと一緒で良いじゃないか。セラフィもハルトと一緒のほうが良いだろ?」


「もちろんです! 主様と一緒に居られることが何よりの至福なのです!」


「ほら、決まりだな!」


「仕方ないわねぇ」


 ヘルミーナの申し出はありがたいけど、セラフィのことを考えるとちょっと不安に感じるところがね……。


 ただ、アメリアとカミラの部屋だとそれはそれで定員オーバーになってしまう。そろそろアメリアとカミラに頼らずに生活できないといけないなぁ。


「では、ローデリヒさんから連絡がありましたら、改めてヘルミーナさんのお店に集合してユリアン様のお屋敷に向かうということで。お手数ですが、ローデリヒさんへの連絡をよろしくお願いしますね、ヘルミーナさん」


「えぇ、任せなさい!」




 翌日、ローデリヒがヘルミーナの店を訪れ、リーンハルトへの謁見の日程が三日後に決まったとの連絡を受け取った。

ここまでお読み頂き、ありがとうございます。

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