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実験結果と釈明

 『魔動人形を創造する』そんな実験をした結果、俺はヘルミーナの店の中で正座をさせられていた……。


「(何故だ!? 何故こんなことにっ……!?)」


「さて、何が起こったのか説明してもらおうかな?」


「アンタ、またとんでもないことをしたんじゃないでしょうね? ハルトの錬金術が凄いのは分かるけど、それだけじゃ説明できないわよ?」


「あの娘は誰? ハルトの何? 答えて、ハルト」


 この状況、はっきり言って修羅場だ……。


 アメリアは純粋に起こった現象について説明して欲しそうだ。


 ヘルミーナも錬金術師として起こった現象について疑問を持ったようだ。


 だが、カミラからは見知らぬ女性が突然一糸まとわぬ姿で現れたからか、何だか穏やかではないオーラが漏れ出しているようで、正直目がめっちゃ怖い。


 俺だってどうしてこうなったのか教えて欲しいくらいなのに。


 いや、分かってる。原因は俺なのだと……。


「あ、あの! 一つずつ説明しますので。その、落ち着いてください!」


「「「早く説明して!!!」」」


 俺は先日ヘルミーナから指摘された『素材が無いものを創り出す』錬金術のことをアメリアとカミラにも説明した。そして、もしかすると素材が無くても魔動人形を創り出せるかもしれないと思い、今回実験してみたのだ、ということを三人に説明した。


「言ってることは分かったけど、その結果が何であの魔動人形の姿、大きさに繋がるわけ?」


「確かにそうだ。今の説明だけではちょっと納得できないぞ?」


「ハルト、私たちに隠しごとは良くない。全部吐いて!」


 めちゃくちゃ皆から突っ込まれてしまった……。


 でも、これ以上のことを説明するためには、俺の前世の記憶について説明しないといけないわけで、それはつまり俺がこの世界に転生してきたことについても話さないと辻褄が合わなくなりそうだ。


 果たして、この場でそこまで踏み込んだ話をしていいものだろうか?


 仲間になってくれたアメリアとカミラの二人には打ち明けても良い気がするのだが、ヘルミーナとはこれからどういう関係になるかも分からないし、今はその時ではない気がする。


 ひとまず、ここは誤魔化しておこうと決めて、思いついた言い訳を吐き出した。


「いえ、これはですね。そう、魔動人形を格好良くする為にどうすればいいか考えた結果、翼は三対あったほうが格好良いですし、黒色だと重厚感も出ますし。ほら、銀髪も黒い翼とよく似合うでしょう? それにせっかく創るんだったら私たちと同じくらいの大きさのほうが面白そうだし、それに特別感もあって良いかなって思いまして。つまり、そんな感じなんです! アハハハ……」


 自分でも驚くほど早口で説明したが、これでは焦っていたのがバレバレだよなぁ。それに先ほどから冷や汗が額に現れる。そのうち頬を伝って顎先から床に落ちるのではないかとひやひやする。


 これは、絶対に嘘だってばれてるよな……?


 じとりとした三人の視線から、誤魔化せなかったことは明白だ。


「ハルト」


 うぅっ……!


 カミラの声に、思わず肩を竦めて目を瞑る。


「ま、今回はそういうことにしておくよ。また今度説明してくれよな!」


「私はハルトのことを信頼してる。だから寂しいけど、ハルトから話してくれるのを待ってる!」


「はぁ、まったく……。ほんっとに分かりやすいわね、アンタは。でも、二人の言う通り、今回は見逃してあげる。感謝しなさいよね!」


「へ? あっ、ありがとうございます!」


 正直、多少は叱られるのではないかと思っていたのだが、そんなことはなかった。最悪、失望されるかもしれないとも思ったが、三人とも優しくて助かった。


 いつか、前世のことや転生したこととか皆に話す機会が訪れればいいなと思う。


 ありがたいことに、この件はこれにて三人から御許しを頂くことができ、正座の刑から解放されたのだった。


 だが、まだ問題は解決していない。そう、この魔動人形をどうするのか相談しなければならなかった。


「それで、こいつは本当に魔動人形なのか? この翼が無ければ本物の人間のようにも見えるんだが……」


「魔動人形は間違いありません。ですが、ただの魔動人形ではありません。彼女は自分の意思を持った魔動人形なんです」


「自分の意思!?」


「はい。彼女は、自分の意思で自由に行動できるようです。つまり、アメリアさんが先ほど仰った通り、本物の人間とほとんど同じ存在と言っていいでしょう」


「何でそんなことが分かるのよ!?」


 そういえば、鑑定眼について皆に話してなかったので、一応共有しておくことにした。


「あの、実は……。私の右目を通して見たものは、その詳細が見えまして。そのおかげで彼女のことも分かったんです」


「それって、魔眼!? 鑑定眼!? ハルト、アンタ本当に何でも有りね……」


 はぁ、とヘルミーナは呆れた表情で俺のことを見てくるのだが、ちょっと待って欲しい。俺は何も悪くない、ハズだ。俺をこんな身体に創ったのは世界神なのだから。


 まぁ、それでも人や物を鑑定できるのは大変便利なので俺としては世界神には感謝しているけどね。


「へぇ、鑑定の魔眼か。それってどんなことが分かるんだ?」


「そうですねぇ。例えばアメリアさんの年齢や性別と職業に、それから能力がBランクだとか、色々です。錬金術の素材だと、その素材から何を錬金できるか、とかでしょうか。魔物は鑑定したことがないですけれど、多分似たような情報が確認できると思いますよ」


「へぇ、それは便利だな! 討伐する魔獣の強さ、味方の状態が分かるだけでも、こちらの生存確率を高めることができそうだ」


「それに、採取依頼でも素材を見分けるのに役立つ」


「まぁ、確かにそうですね。回復薬を錬金できたのもこの魔眼でハイレン草に気付けたからですし、初めてお会いした時にアメリアさんに回復薬をお渡ししたのも、フリーダさんの具合が良くないことが分かったので。そういう意味では冒険者にとっても便利かも知れませんね」


「……なるほど」


「だったら……」


「「ハルト、私たちとパーティーを組もう!!」」


「はい?」


「いやぁ、この前から考えてたんだけどさ。ハルトが居てくれたらパーティーの戦略も広がるしさ、支援してくれる魔法使いがいると助かるし!」


「ハルトは魔法も凄いけれど、錬金術で回復薬も作れるし、鑑定の魔眼があるなら採取依頼も効率的に受けられる。こんなに頼もしい仲間は他にはいない!」


「ちょっと二人とも、ハルトを誘うなら私も誘いなさいよね! 私だって錬金術も多少はできるし前衛だってやれるんだから!」


「皆さん、ちょっと落ち着いてください! パーティーのことは後で話し合うとして、それよりもこの魔動人形のことを先に解決しませんか?」


 アメリアとカミラからパーティーに誘われたと思ったら、ヘルミーナまでパーティーに入ると言ってきた。


「(まぁ、この前も四人で依頼を受けているし、悪くないパーティーかも知れないな)」


 そんなことを考えたが、話が随分横道に逸れてしまったのでそろそろ元に戻さないと。この魔動人形をどうするのか決めなければ。


「それもそうだな。それで、この魔動人形をハルトはどうするつもりなんだ?」


「そうですね、どうも製作者である私が名前を付けると起動するようですので、名前を付けてみようかと。私の指示には従ってくれるようなので、それから色々決められれば良いかなって思っています」


「なるほど。まぁ、それは良いと思うが……。でも、何か着る物くらい用意してあげたほうがいいんじゃないか? このまま起動するというのもどうかと思うぞ?」


 アメリアの言葉にはたと気付いた。


 確かに、今の魔動人形は一糸まとわぬ姿のまま宙に浮かんでいる状態だ。このまま起動するということはあんなところやそんなところまで見えてしまう。というか、今も目のやり場に困っている状況なのに、起動してしまったら目も当てられない、というか目を開けられない状況になってしまう。


 とはいえ、前世ではアンダーウェアとか、インナー、アウター、トップス、ボトムス等々カタカナで言われてもピンと来なかった俺に、この世界のお店を駆け回り女性用の衣類を一式揃えることなんてできるだろうか?


 いや、できるはずがない(前世の世界だったらできるとは言っていない)。


 俺は、俺にできる範囲で魔動人形の衣装を用意することにした。


「創造『戦乙女装備』!」


 正直、女性の衣類などイメージできるのがあまり無かったので、アレクシス氏が創った魔動人形『戦乙女ゲルヒルデ』の装備一式を元にイメージすることにした。


 ただし、ベースとなるイメージカラーは青と白を基調としたものから、黒と赤を基調にしたものに変更した。黒い三対の翼を持つ彼女には、そのほうが似合う気がしたのだ。ついでに武器は少し凝ってみることにする。見た目は両刃の長剣で普段は腰にぶら下げることができるが、鞘から抜くと柄の部分が伸びて槍にもなる優れ物だ。


「こんな感じでどうでしょうか?」


「アンタ、本当に何でもありね……。もう驚くのに疲れたわ」


「まぁ、いいじゃないか。それより、普段着は用意してあげないのか? こんなに可愛いのに厳つい装備だけだとかわいそうだよ」


「そうなんですよね。ただ、私はそういうものには疎いので、是非皆さんのお力を貸して頂ければと思うのですが、よろしいでしょうか……?」


「心配ない。私がこの子に似合う可愛いのを見つける。可愛い服が多いお店も知ってる」


「カミラさん、ありがとうございます!」


「ふふ。可愛い弟のため。ひと肌脱ぐだけ!」


 そういってカミラはアメリアとヘルミーナを連れて、すぐに店から出ていった。魔動人形の普段着はカミラのおかげでなんとかなりそうだ。


 暫らくして三人は包みを両手いっぱいに抱えて戻ってきた。


 早速、包みの中身を店のカウンターに広げてくれて見せてくれたが、確かに可愛いデザインだった。俺が用意した装備と同じように黒と赤が基調のものが多いが、大きく違う点があるとすればヒラヒラしたところが多いことだろうか。こういうのをゴシック・アンド・ロリータというんだろう。


 ともかく、これで準備も整ったことだし、魔動人形を起動させてみよう!

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

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