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上司への相談と二度目の発光現象

 結局、今回起こった事態について、世界神の話によれば、俺が『錬金術』を使った際に何らかの弾みで『創造』を使ったことによる結果であると説明された。正直、無意識でのことだったのだろうが、俺自身としては正しく『錬金術』を使ったつもりだったので、納得ができていないのだが……。


『ふむ、ハルト様は納得されておられないようですが、私が確認した限り間違いありません。『降神の秘薬』を錬金しようとされた際に神力が漏れ出ていたようですから』


『えっ、神力が!?』


『はい。『創造』する際に必要となる神力がハルト様から漏れ出ておりました。それが原因で『降神の秘薬』を錬金しようとした際に、同時に『創造』も発動したのでしょう。神力の扱いが未熟だと、そういったことも起こりますので気を付けてくださいね』


 むぅ。どうやら、錬金術を使った際に意図せず神力が漏れ出てしまい勝手に『創造』してしまったことが原因らしい。それが本当なら、俺がこの世界に転生した時から神力の扱いが未熟なままということになる。そう考えるとちょっと落ち込んでしまう。


『ま、まぁそこまで落ち込まなくても大丈夫ですよ。神力は魔力以上に繊細な取り扱いが必要ですから。普段から神力を繊細に扱っていないと加減が難しいものなのですから。それに、ハルト様が普段から神力を扱うこともそうはありませんし、これから少しずつ慣れていけば良いのです!』


『……慣れと言われましても、神力を扱う機会なんてそうはありませんよ? それに、繊細に扱うなんてどうすれば……』


 魔導船スキズブラズニルを創った際に色々とやらかしてしまったので、それ以来魔導具店で販売する分の特級回復薬や特級解毒薬それに魔導カード『神の試練』を創るくらいしか神力を使う機会はなかった。それ以外だと、先日対魔王勇者派遣機構の拠点と王宮(?)のような自分たちの居住区をグリュック島で創造したくらいだろうか。


 ただ、自分で言うのもなんだが、神力を繊細に扱ったというよりは、膨大な神力にものを言わせて豪快に創ったので、神力の扱いを極めるための要素はなかった。


『ふむ。そうですね……。それでしたら、ハルト様の魔導具店で取り扱っている回復薬、それをヘルミーナやカイと同じように『小瓶に入っていない状態』で『錬金』し、それとは別に神力を使って『回復薬が入っていない空の小瓶を『創造』してみてはどうでしょうか。特技スキルである『錬金術』と神力を用いた『創造』、それぞれを扱う腕を磨く良い練習になるのでは?』


 ふむ、なるほど。確かに、これまで回復薬を錬金するにあたって、回復薬の錬金と小瓶の創造を意識して行ってはいなかったので、世界神の言う通りにしてみると錬金術と創造の練習になるかもしれないな。


 それに、錬金術だけで上質の回復薬を作れるかどうかも気になる。普段回復薬を創造する際には小瓶に入った状態で創っているせいか、外部の魔力の影響を受けることなく上質の回復薬となっているが、純粋に錬金術だけで創り出した場合は、恐らく外部の魔力の影響を受けてしまい上質とはならないと思われる。ヘルミーナやカイと同じように『魔力遮断』を付与したブレスレットを着用した状態でなければ上質のものは作れないだろう。


『……なるほど、確かに『錬金術』と『創造』の練習にはなりそうですが……』


 はぁ、と深いため息を吐く。


『結局、でき上がったものが通常の『降神の秘薬』とは違うわけで、皆には何と説明すれば良いのやら……』


 そう、ここまで世界神と話をしたわけだが、結局は何も解決していないのだ。


『それほど気にされることはないと思いますが……。大体、彼女らが求めている通常の『降神の秘薬』よりもより効果の高いものができ上がったのですから文句などないはずでは?』


 うーん、確かにそうかもしれないけれど……。でも、備考欄に『別名:アサヒナスペシャル』とか記載されているわけで、鑑定されると俺が作った(錬金した)ことが丸分かりだ。後々トラブルに繋がらないか不安になるのは仕方がないと思う。


『確かに、世界神様の仰る通りかもしれませんが、通常の『降神の秘薬』ですら、神の奇跡によって齎されたレシピと熟練の錬金術師でなければ作ることができないものということでしたので、それよりも効果の高いものを錬金したとなると色々と騒ぎになる気がしてならないのですが……。大体、『別名:アサヒナスペシャル』って一体何なんですか……。こんなの、名前からして俺が作ったのがバレバレじゃないですかぁ……』 


『確かに、高いレベルで鑑定されるようなことがあればそういった情報も読み取られるかもしれませんね……。ふむ。仕方がありません、この情報については秘匿しておきましょう』


『えっ!?』


「「「「「うわぁっ!?」」」」」


 世界神の言葉に戸惑っていると、突然部屋の中からユッタたちの驚く声が扉越しに聞こえてきた。部屋の中で何かが起こったらしく、慌ただしい様子が伺える。


『あの、世界神様。もしかして、何かされましたか……?』


『はい。ハルト様が気にされていた『降神の秘薬・改』の備考欄をちょちょいと編集して、別名については記載を削除しておきました! これで、ハルト様が作られたと他の方に知られることもありませんよ!』


 俺の質問に対して、『えっへん!』と得意がっているような世界神の様子が伺える言葉が返ってきた。ふむ、備考欄の編集。そんなことができるのか。流石はこの世界の神と言えるが……。


『なるほど。備考欄から別名表記について削除頂けたのでしたら、大変助かります。ところで、先ほど部屋の中から皆の悲鳴のような声が聞こえてきたのですが、一体何が起こったんでしょうか……?』


『あー……。えっと、そのぉ……。備考欄を編集した際に、ちょっと発光しちゃった、みたいな……?』


『あー……』


 そういえば、以前魔導船スキズブラズニルを近未来的なデザインで創造したことを、世界神からこの世界にはそぐわないデザインだということで、そのデザインというか形状を変更されたのだが、その際には神々しく神聖な光がスキズブラズニルを中心に立ち上ったことを思い出した。


 恐らく、それと同じことが部屋の中で、それもユッタたちの目の前で起こったのだろう。それも、先ほど俺が『降神の秘薬・改』を錬金し、同じように光の柱を立ち昇らせたばかりであり、彼女らにとっては時間にして数分ぶり二度目の強烈な発光現象に立ち会ったことになるわけで、何とも運が悪いと言える。


『と、ともかくです! これで、ハルト様の心配事も解決したわけですし、何の問題もありません! 引き続き、何かありましたらすぐに上司である私にホウレンソウ(報告・連絡・相談)をしてくださいね。では!』


『えっ? ちょっと! 世界神様!?』


 自身のミスを誤魔化すかのように世界神が突然神話通信を終えてしまい、俺は呆然とする。


 こちらから改めて世界神に神話通信を行うも出てくれない。むぅ、どうやら逃げられたようだ。上司としてその対応はどうなんだ、などと思いながら今一度状況を整理する。


 ひとまず、ちょっとした手違いで錬金というか創造してしまった『降神の秘薬・改』については、偶然作れたものとして皆に誤魔化すしかないだろう。


 結局、世界神からは『気にする必要はないのでは』という、何とも的を射ない答えしか得られなかったので仕方がない。ただ、備考欄の別名表記については世界神が編集して削除したということなので、その点については不安がなくなったと言える。とはいえ、それも改めて『降神の秘薬・改』を鑑定して初めて安心できるわけだが……。


 はぁ、結局は誤魔化すしかないっていうのはちょっと心配だなぁ……。それに、ユッタたちからは二度目の発光現象についても絶対質問されるだろうし……。


「はぁ……。今からこの扉を開けないといけないわけだけど、全くもって億劫になるなぁ……」


 はぁ……。


 幾度目かのため息を吐きながら、ユッタたちのいる部屋の扉に手を掛けた。

いつもお読み頂き、ありがとうございます!

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