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Aランク冒険者達との出会い

「誰!?」


 まぁ、そういう反応になるよな。


 魔法アタッカーのエルフの女に声を掛けたところ、ビクリと身体を震わせてこちらに視線を投げ掛けてきた。顔は双頭蛇に向けたままであり、こちらと双頭蛇の両方を警戒しているようだ。だが、それも当然だろう。今にも襲い掛かろうとしている双頭蛇と、その双頭蛇と自分たちしかいないと思っていたこの部屋で、突然知らない人間に話し掛けられたら誰だって驚く。


「あ、驚かせて申し訳ありません。私は下の階層フロアから上ってきた者です。どうやらそちらは大変な状況のようですので、よろしければ助太刀しようかと思いまして。冒険者が討伐中の魔物に対して、他の冒険者が手を出すのはマナー違反と以前伺ったことがありましたので、確認のため声を掛けさせて頂いた次第でして……」


「お願いっ! 手伝って!」


「承知です! 『風刃・強』!」


 彼女から助勢の許可を得たので、これまで遭遇した魔物と同じように威力を高めた『風刃』を双頭蛇に向けて放つと、特に問題もなく『風刃』は双頭蛇の皮膚を切り裂き、残っていたもう一方の頭を胴体から切り離した。


「はい、これで終了ですね」


「な、なんて威力なの……!?」


 魔法アタッカーのエルフの女は何やらぶつぶつと呟いていたが、それはともかく頭を落としたものの未だにぐねぐねと身体を動かし、消滅しない双頭蛇が何とも気持ち悪かった。随分と生命力が高い魔物のようだ。


 というのも、このダンジョンに現れる魔物は倒すと何故か死体が残らず、光の粒子に変わって消えてしまうのだ。その様子は何だかゲームのようだが、それがダンジョンに現れる魔物の特性らしい。そして、倒した魔物の跡には所謂ドロップ品が落ちていたりする。うん、本当にゲームだな。昔遊んでいたMMORPGを思い出す。


 さて、そういう意味では、今目の前でぐねぐねと動く双頭蛇はまだ完全には倒せていないことを意味していた。ふむ。これまで『風刃』一発で倒してきた、ここ三十階層よりも下の階層主よりも随分と強力な魔物らしい。本当に、こんな魔物の毒が売り出されているものだろうか? そんなことを考えていると、先ほど『風刃』で切り落とした頭が俺に飛び掛かってきた。


「おいおい、モ○かよ!? それで、俺はエ○シってか!?」


 某アニメ映画のワンシーンのように頭だけで俺に襲い掛かってきた双頭蛇の頭に思わずツッコミを入れながら、火魔法『爆炎弾』を放つ。そういえば、火魔法を使うのはうちの屋敷の確認をしていたときに訓練場でアメリアたちにその耐久性を伝えるために放って以来だったな。


 ドガアアアアアアッ…………!


「きゃあっ!?」


 うん? 何だかあの時よりも威力が強いような……? 軽く放ったつもりだったが、どうやらこれまで『風刃』の威力を高めていたからか、つい同じ威力で『爆炎弾』を放ってしまったらしい。


 だが、その甲斐もあってか、無事双頭蛇を倒すことができたようだ。俺に向かって襲い掛かってきた双頭蛇の頭は当然のこと、それまでぐねぐねと蠢いていた双頭蛇の胴体も光の粒子へと変わり、その跡にはドロップ品であろう双頭蛇の革と牙に肉、それに毒が落ちていた。


「さて、危険は取り除いたので、皆さんを治療でも始めましょうかね」


 アイテムボックスから特級回復薬を取り出すと、まずは魔法アタッカーのエルフに手渡した。


「こちらの回復薬を差し上げます。まずは貴女の体力を回復してください」


「……え、えぇ……」


「あぁ、それとこちらの魔力薬も渡しておきますので、必要ならどうぞ」


 そう言って、このダンジョンで手に入れたゲビーツ草から錬金した特級魔力薬もアイテムボックスから取り出して渡しすことにした。双頭蛇と戦っていたせいか、少し呆けていたが、魔法アタッカーのエルフの女は後方から戦っていたこともあって、それほど重症を負ってはいなかった。とはいえ、魔力は随分と消費していたようなので、魔力を回復する魔力薬も渡すことにしたのだ。


「えっ、あっ……!? 私よりも、ユッテやレオナたちを助けてっ!」


「もちろん、すぐに取り掛かりますからご安心ください」


 俺は再び特級回復薬を取り出すと、魔法アタッカーのエルフの女の近くで倒れていたバッファーのエルフに駆け寄る。様子を窺うと、命には別状はないものの、先ほど双頭蛇の尻尾に襲われたこともあって打撲と各所の骨折、それに擦過傷が酷いことになっていた。その様子を見て、ひとまず特級回復薬の半分を全身に振り掛け、残りの半分を飲ませることにした。まだ意識があるので何とか飲ませることができた。


「……ン……。ここ、は……?」


「階層主は倒しました。貴女の怪我も傷一つなく治りますから、ゆっくり休んでくださいね?」


 俺は闇魔法『睡眠』と光魔法『精神安定』を掛け合わせたオリジナルの混合魔法『安眠』をユッテに掛ける。これで不要な騒ぎも起こらずに残る三人も救助できるだろう。


 続いて、ヒーラーのアルラウネの下へと駆け寄ると、まずは特級解毒薬を飲ませる。鑑定すると、やはり先ほどまではアポロニアと同様に猛毒(双頭蛇の毒)に掛かっていたのだが、特級解毒薬の効果で解毒できたらしい。とはいえ、まだ猛毒によって消耗した体力は戻っていない。


「あれ、アタシは……?」


「安心してください、階層主は倒しました。階層主の猛毒のブレスによる状態異常は回復しましたが、体力までは回復できていませんからこちらの回復薬をお飲みください」


「え……? あ、ありがとうございます……。ん、ゴクン……。えぇっ!?」


 気が付いたアルラウネの女は特級回復薬をゴクゴクと飲み干した。どうやら、無事に体力も回復できたらしい。念のため、ユッテと同様に『安眠』を掛けて静かにさせる。


 残るは野郎の二人、ドワーフのゲルトと虎の獣人カールにも同じように特級回復薬を振り掛け、意識が戻り次第残りを飲ませて回復させると、ユッテと同様に『安眠』を掛けて休ませることにした。


 こうして、魔法アタッカーのエルフの女とその仲間たちは、三十階層の階層主との戦いでの負傷により後遺症が残った、ということも特になく、他に敵も出ない階層主のフロアでゆっくりと休憩することにしたのだった。もちろん、俺もね。



「すまねぇっ! 本当に助かった! ありがとう! 俺はカールという。よろしくな!」


「ワシも久々に死を覚悟したわい……。お前さんがおらなんだら、確実にワシらは今頃あの蛇の腹の中じゃった! 本当にありがとう、礼を言うぞ! ワシの名はゲルトじゃ、よろしく頼む」


「……全く、カールとゲルトが吹き飛ばされた時はどうしようかと思ったけど、貴方のおかげで本当に助かったわ。私はユッテ、よろしくね」


「まさか、三十階層の階層主にあれほど強力な毒を持つ魔物が現れるとは思ってもいませんでした……。貴方はアタシたちの命の恩人ですっ! あ、アタシはアルラウネのレオナです。よろしくお願いしますね!」


「……改めて、仲間を助けてくれて礼を言うよ。私たちはAランクの冒険者パーティー『精霊の守り人』。そして、私はパーティーのリーダーでユッタという。そこのユッテとは姉妹なんだ。他の皆も縁があって、私たちとパーティーを組んでいる仲間だ」


「あ、私はハルト・フォ……。その、ハルト・アサヒナと申しまして、Fランクの冒険者です。偶然、下の階層から戻る途中で皆さんが戦っておられるのを見かけて、様子を窺っていたのですが、苦戦されている様子だったので、ついお声を掛けた次第でして……」


 一応、今の俺の一般的な立場としては、アルターヴァルト王国の伯爵兼ヴェスティア獣王国の伯爵であるが、そのような者がダンジョンに一人でいるなんて怪しすぎるし、嘘臭い。大体、こんな子供のような見た目では、そもそも伯爵家の当主であるなどと信じてもらえない可能性が高かった。そこで、俺は過去に身分証明書の代わりに冒険者として登録していたので、そのギルドタグをユッタに渡して自己紹介することにしたのだが……。


「「「「「「え、Fランクぅ!?」」」」」」


「えっ、あっ!?」


 そもそも、Aランクの冒険者たちが倒せないような階層主を、Fランクの冒険者が単独で、それも、ほぼ一撃で倒すことなどあり得なかった。そんなわけで、ユッタたちは驚きの声を上げたのだとすぐに理解した。


「あ、あの、Fランクと言っても、冒険者登録をしただけで、これまで本業が忙しくて依頼を受けてこなかったので……。自分で言うのも何ですが、実力ならそんじょそこらの冒険者よりも腕に自信はありますよ?」


「「「「「…………」」」」」


 暫し、ユッタたちの沈黙は続いたが、ユッタが信じてくれたおかげで、他の皆も信じてくれたようだ。


「……それにしても、冒険者としての実力は俺たちよりも上だろうに、冒険者として活動していないなんてな。本業とは一体何をやっているんだ?」


 カールがそんなことを聞いてきたので、特に問題ないかと思い、素直に答えることにした。


「えぇ、私の本業は錬金術師でして。皆さんを助ける際に使った回復薬や解毒薬、それにオリジナルの魔導具なんかを作って売ってます」


「ほう、錬金術師じゃったか。ユッタやユッテと同じエルフのようじゃが、彼女らとは違って生産系の特技スキルを持っておるようじゃな……。うん? ここの階層主を倒したということは、戦闘系の特技も持っておるのか……!?」


 双頭蛇を倒したときにはゲルトは倒れていたから、実質俺の戦闘能力を知る者はユッタただ一人だったが、改めて皆に俺の力を説明するのも面倒なので、ゲルトの言葉を『あははは』と相槌を打ちながらスルーすることにした。


「……その回復薬や解毒薬について質問があります! あの階層主はただの双頭蛇ではなく、間違いなく『亜種』でした! 普通の双頭蛇の毒程度ならアタシの得意とする魔法で解毒できるのに、あの魔物の毒にはほとんど効果がなかったのです! それなのに、アナタが飲ませてくれた解毒薬は一口で身体中の痛みが消え、二口目には身体中の熱が下がり、三口目には全ての苦しみが消えていったのです……。あれは、あの解毒薬は一体何なのですか!?」


 ヒーラーのアルラウネ、レオナが俺のほうを揺さぶりながら聞いてきた。


 彼女は光魔法による『光治癒』だけでなく、水魔法による『水治癒』も得意としており、当然のように解毒についても得意としていた。それにも関わらず、猛毒を解毒できなかったから、今のように問い詰めてきたのだろう。


「あー、あれは私の作った特級解毒薬です。以前も、双頭蛇の猛毒に冒された者を助けたことがありまして、その時の経験が活かせただけです。因みに、皆さんに使った回復薬も、私が作った特級回復薬です。流石に死者を生き返らせることはできませんので、皆さんが丈夫な人たちで良かったですよ」


「「「「「特級解毒薬に特級回復薬ですって(だと)!?」」」」」


「……確かに特級解毒薬なら効果については納得できるけれど、それにしても、こんな子供が作れるものなのかしら……?」


「あー、ゲルト。そもそもだけどよ、特級解毒薬とか特級回復薬っていくらするんだっけ……?」


「うむ……。まず、特級と付く解毒薬や回復薬はここいらでは手に入らん。ゴルドネスメーアの帝都ヴァイスフォートでも一本あたり白金貨一枚、いや二枚は下るまい……」


「「「「白金貨二枚!?」」」」


 カールの質問にゲルトが答えると、皆が驚くように声を上げた。まぁ、それも当然だ。そもそも特級回復薬を作ることができるのは錬金術師の中でも錬金術のレベルが9以上でなければならない。つまり、相当熟練の錬金術師である必要があり、それだけ高価な代物なのだ。普通の特級回復薬ですら五本だと白金貨十二枚はする。


 それがアサヒナ魔導具店特製(つまり俺が作った)の特級回復薬五本に特級解毒薬一本だと、合計で白金貨二十三枚と金貨四枚になってしまう。うん、日本円だと大体二億三千万円を超える大金だ。流石にAランクの冒険者パーティーといえどもそう簡単に支払える金額ではない。


 それを自由に使えるのは創造で量産が可能な俺ぐらいなものだろう。今回使ったものも、そうして創ったものなので特に費用も掛かっていない。なので、特に費用を請求するつもりはなかった。そもそも、頼まれてもいないのに、俺が勝手に使っただけだしね。


「あ、別に代金については気になさならないでください。私が創ったものを勝手に使っただけですので。それに、困ったときはお互い様と言いますしね。それよりも、そこのドロップ品を頂いてもいいでしょうか?」


「え、えぇ。貴方が倒したんだもの、別に構わないわ。皆も良いわよね?」


「あぁ、俺ぁ構わないぜ」


「ワシもじゃ」


「アタシも別にいいわ」


「もちろん、私も問題ないわ。それに、私たちが探していたものも見つかったようだしね?」


「「「「(コクコク)」」」」


 ユッタの言葉にカール、ゲルト、レオナ、そしてユッテも頷いた。ユッテの言葉に皆が頷いていたが、意味が良く分からない。とりあえず、双頭蛇の毒は俺のほうで回収しておいたほうが無難だろうと思っていたので、彼女たちに申し出てみたのところ、思いの外すんなりと俺の要望は通った。なので、ユッテの言葉については気にしないことにしたのだ。


 さて、完全に回復したAランク冒険者パーティー『精霊の守り人』の皆は、更に下の階層を目指すのかと思いきや一度地上へと戻るという。それならばと俺も彼女らに同行させてもらうことにした。

いつもお読み頂き、ありがとうございます!

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