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付与魔法の確認と鑑定結果(前編)

 空間拡張された部屋は、さながら『精◯と◯の部屋』の様であり、真っ白で、どこまでも続くその空間を見れば、当然時の進みも外界よりも穏やかなのでは? そんなことを考えがちであるが、全くもってそのようなことはなく、外界と同じように時間が過ぎていた。


「主様、そろそろ夕食の時間です……」


「セラフィ!? あれ、もうそんな時間ですか……?」


 俺が空間操作によって創り出したスペースから執務室に戻ると、確かに、窓から見える外の様子は既に夕刻のそれであり、お腹も空腹を訴えるように大きな声を上げていた。


「熱中し過ぎたみたいですね。セラフィ、教えてくれてありがとう。それじゃあ、食堂に向かいましょう」


「はい、主様!」


 こうしてセラフィのおかげでザシャの夕食を食べ損なうというミスを犯さずに済んだ。因みに、本日のメニューは極厚の山猪のステーキとサラダにパン、そしてザシャの特製『野菜とオーク肉のシチュー』であり、非常に満足のいくものだった。


 夕食を食べ終えた俺は、再び執務室内に置かれた木製の扉に手を掛ける。今度は、付与魔法についての確認を行うためだ。


「ふむ、世界神様のお話だと俺がの付与魔法は装備をコーティングするようなイメージで掛けていたから、魔剣ティルヴィングによるデバフ効果に打ち勝てなかった。その対策として、魔法の術式を付与対象に織り込むように掛けるんだっけか」


 世界神の言葉を思い出しながら復唱する。だが、世界神の話すように付与魔法を織り込むように掛けられたとして、それが本当に効果があるのかを確認できなければ皆に装備を渡すわけには行かない。


 一応、ヴェスティア獣王国からアルターヴァルト王国へ戻ってきた時に、皆が使用していた装備を一度返却してもらっている。今回の件については、付与魔法が本当に魔剣のデバフに打ち勝つことが証明できないと、というか、安全性が確認できないと皆に装備を返すことができない。


「そう考えてはいるものの、魔剣ティルヴィングほどのデバフ効果なんてあったっけ……。あ、あったかも!?」


 そう、俺には王国の図書館で得た魔法に関する知識があった。


 最近は使用している魔法のほとんどが闇魔法か土魔法だったりするので、特にデバフ効果のある闇魔法についての理解は、王都にいるその辺の魔法使いよりも優れているのではと思うほどだ。


「ならば、早速試してみようじゃないの!」


 早速新たな付与魔法の実験用に、簡単な作りの腕輪を創造する。


 俺の腕ではぶかぶかだが、成人した大人の女性なら十分に扱えるだろうサイズ感の、何の装飾もない金色の腕輪だった。これを二つ用意する。


 それらの腕輪をそれぞれ右手と左手の両手に持つと、左手に掴んだ腕輪には、これまで通りの付与魔法を、右手に掴んだ腕輪には、世界神から聞いていた通り、付与魔法を金色の腕輪に織り込むように掛けることにした。


 というのも、世界神の話の通りに付与魔法を掛けられたとして、その効果がこれまで通りの付与魔法よりもデバフへの耐久性が優れているのか確認しておく必要があったからだ。そうこうしているうちに、左手に持った腕輪に付与魔法を掛け終わった。


 一方、右手に持つ腕輪への付与魔法は未だに続いていた。当然、付与魔法を織り込むイメージをするにはそれなりに時間が掛かり、以前皆への装備を創造した時よりも時間が掛かるのだと実感する。だが、それだけに今回の実験が成功するのではないかという期待が膨らむ。


 因みに、今回二つの腕輪に付与した効果は『物理無効』『魔法無効』『状態異常無効』『即死無効』『疲労耐性』『全属性耐性』『病気耐性』『腐食耐性』の八つであり、今までの装備に付与してきたものと同様にしている。


 たかだか実験にそこまでする必要はないと思われるかもしれないが、実際に使用する装備と同じ耐性を確認しておいたほうが良いと考えたのだ。


 どうか、上手く付与魔法が織り込めますように! 皆を守る力が備わりますように!


 そんな風に祈りを込めるように付与魔法を続けていたのだが、暫くすると右手に持っていた腕輪への付与魔法も無事に完了することができた。左手の腕輪に掛けたこれまでの付与魔法と比べると、掛かった時間はほぼ二倍ほどである。


「さて、これで問題ないはずだけど……」


 二つの腕輪を見比べてみるが、特に見た目上に何の変化もない。もしも二つをシャッフルしてしまうとどちらがどっちの付与魔法を掛けたのかも分からなくなるほどだ。


 そう考えると、見た目に違いを出しておいたほうが良かったかも……。今更だけど。


「さて、念の為鑑定してみるか」


 鑑定の魔眼により、まずはこれまでの付与魔法を掛けた左手の腕輪を見つめてみる。


『名前:名もなき腕輪

 種別:装飾品

 詳細:朝比奈晴人が創り出した腕輪。

    身に着けることで付与魔法による効果を発揮する。

 耐久:C(物理:D、魔法:D、異常:B)

 効果:物理無効、魔法無効、状態異常無効、即死無効、疲労耐性:Lv10、全属性耐性:Lv10、病気耐性:Lv10、腐食耐性:Lv10

 備考:完成品(損傷率:0%)、構成素材(不明)』


 ふむ。脳内に表示された鑑定結果を上から順に確認していく。


 名前は、まぁ特に付けていないのでとりあえずスルーしておいても問題ないだろう。詳細についても、俺が創ったという点は特に問題ない。その次にある『身に着けることで付与魔法による効果を発揮する。』という内容を確認し、問題なく耐性付与ができていることを確認する。実際、その下に記載されている効果の欄にも付与した各種耐性の記載があるので間違いないだろう。


 俺が一番気になったのは『耐久』という項目だった。


『耐久:C(物理:D、魔法:D、異常:B)』


 ふむ、耐久というのは恐らくこの装備自体の耐久性能を表しているのだろう。『物理』と『魔法』の項目はそれぞれ物理攻撃と魔法攻撃による耐久性能だと分かるが、『異常』というのは……。


「……恐らくは、状態異常に対する耐性ということだと思うけれど……」


 確証は持てなかったが、恐らくはそういう意味合いなのだろう。つまり、デバフ効果への耐久という意味だ。確認の為、俺は再び腕輪を創り出して鑑定を行う。


『名前:名もなき腕輪

 種別:装飾品

 詳細:朝比奈晴人が創り出した腕輪。

 耐久:D(物理:D、魔法:D、異常:D)

 効果:なし

 備考:完成品(損傷率:0%)、構成素材(不明)』


 今度は付与魔法を掛けていない状態であることから、詳細の欄には『身に着けることで付与魔法による効果を発揮する。』といった記載はなく、当然ながら効果の欄にも特に記載がなかった。


 そして、気になっていた耐久の欄だが、『異常:D』となっており、俺が付与魔法によって耐性を付与した腕輪と比べて二ランク下のDとなっていた。ということは、やはり、『異常』という項目は状態異常に対する耐久性能という認識で間違いないだろう。恐らく、俺が付与魔法により耐性を付与した結果、状態異常に対する耐久性能が二ランク上昇したのだと考えられる。


 それにしても、俺が創造したアメリアたちの装備も、この腕輪と同様に状態異常への耐久性能はBランクだったと考えられるのだが、それをいとも簡単に無効化してしまうほどのデバフ能力を魔剣ティルヴィングは持っていたということになるのだが……。


「本当に、良く勝つことができたよな……。セラフィがいなかったら今頃俺たちは……」


 今になって、その恐ろしさを実感することになったのだが、やはり皆の身の安全のことを考えると、世界神の話していた付与魔法を織り込むという技術を身に着ける必要がありそうだ。


 そんなことを考えながら、俺は最後に残った腕輪を手に取り鑑定を行うことにした。そう、これは先ほど右手から付与魔法を織り込むように掛けた腕輪だった。

いつもお読み頂き、ありがとうございます!

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