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ハーゲンと遊技台

 魔導具店でヘルミーナと一緒にベンノと情報共有をした後、早速溜まっていた特級回復薬の注文や在庫の確認と補充、そして今後新たに売り出していくことになる各種解毒薬の創造を倉庫で済ませると、今度はハーゲンから相談を受けていた遊技台の創造を行うことにした。


 そんなことをしている内にハーゲンがうちの魔導具店までやってきたので、早速遊技台を提供したのだが、どうやら遊技台を設置した飲食店(ハーゲンの言うところの遊技場)を王都に更に四ヵ所増やすつもりらしい。それだけでなく、近隣の街や村落にも小規模な遊技場を増やしていくそうだ。


 その計画を聞いて、俺が考えている魔導カード『神の試練』の第二弾と、遊技マットと遊技台の第二弾の発売について伝えたところ、ハーゲンは唸りながら頭を抱えることになった。


 その理由は簡単で、今新たに遊技台を購入しても、その直後に第二弾の遊技台が発売されるのなら、購入した遊技台が無駄になると考えたからだ。ただ、ハーゲンにとって、現状遊びたくても遊技台が空いてなくて遊べないというユーザーを取りこぼすのも、商人として決して許せることでもなかった。


「むぅ。今遊技台を仕入れなければ、大きな機会損失を生むだろう……。だが、今遊技台を仕入れても、すぐに新しい第二弾が販売されるとなると、無駄な投資になってしまう可能性がある……。なぁ、ハルト……。錬金術師としての商売に口を出したくはないが、正直言って毎回新しい遊技台を購入するとなると、遊技台で得られた儲けがぶっ飛んじまう。何とかならないか?」


 そう懇願するようにハーゲンが相談してきたので、俺は任せろとばかりに胸を叩いた。


「問題ありませんよ、ハーゲンさん。既に購入頂いている遊技台はそのまま第二弾にアップデートして頂くことを想定していますので、新たに遊技台を購入頂く必要はありません。まぁ、アップデート用の魔導具は別途購入頂くことになりますが」


「おおっ! 流石はハルトだ!」


 そう、元々魔導カード『神の試練』をどのように実現しようかと考えていた時に一番頭を悩ませたのが、販売済みの遊技台をどうやってアップデートさせるか、ということだった。


 遊技台のバージョンが上がる度に改めて遊技台や遊技マットを購入してもらうというのも一度考えてみたが、一台当たりの単価が高いことからハーゲンのように購入を躊躇するだろうと思い至った。やはり筐体(本体)となる遊技マットや遊技台はアップデートができるような構造であるべきだろうと考えたのだ。だが、この世界にはインターネットという便利なものはない。自前でネットワークを構築するというのも流石に無茶だ。となると、手動でアップデートするくらいしか方法はない。


 というわけで、俺が考えたのは、遊技マットや遊技台にデータやプログラムのデータを保存するストレージのような記憶領域を用意し、そこに魔導カード『神の試練』の心臓部ともいうべきプログラムを保存、その記憶領域に対して、別途用意するアップデート用の魔導具を使うことで最新のプログラムにアップデートする、というものだった。


 当初は有名なゲーム機のようにカード型のROMを差し替えるような構造にしてはどうかと考えたのだが、遊技台はともかく遊技マットには合わなかったので、最新のアップデートを組み込んだ非接触型ICカードのような魔導具を別途用意し、遊技マットや遊技台の上にその魔導具をかざすことで更新できる仕組みにしてみたのだ。


「まぁ、まだ第二弾自体は準備中なので、ご用意できましたらご連絡させて頂きますよ。それよりも、実は魔導カード『神の試練』をヴェスティア獣王国でも販売しようと考えておりまして」


「何、本当かっ!?」


「えぇ、本当です。因みに、まだどなたにもお話ししていない情報ですよ?」


「ほぅ。それはありがたいが、何かあるのか?」


「いえいえ、純粋にいつもご贔屓にして頂いている御礼ですよ。あぁ、でも、もし可能でしたら、ゴルドネスメーア魔帝国から味噌と醤油、乾燥させたトゥーフ草、その他珍しい食材や調味料などを仕入れて頂けると大変嬉しいですね。もちろん、ちゃんと代金はお支払い致しますので」


「コメだけでなく、向こうの食材か。それにしても、随分と詳しいな」


「えぇ、実はヴェスティア獣王国の市場で故郷の料理で使う食材を見つけたので購入したところ、これらがゴルドネスメーア魔帝国から輸入されたものだと店主に教えて頂きまして」


「なるほど、ハルトの故郷の食材か。うん? ということは、ハルトはゴルドネスメーア魔帝国の出身なのか?」


「まぁ、そんなところです」


「そうか。あぁ、別に詮索するつもりはないから安心してくれ。それで、ハルトが提供してくれた情報の謝礼がゴルドネスメーア魔帝国から輸入する食材や調味料で良いというのなら、こちらとしてもありがたいが……」


「是非お願いします! その代わり、遊技台をたくさん買って下さいね?」


「あぁ、もちろんだ! 王都アルトヒューゲルで百台、ヴェスティア獣王国用に百台、合わせて二百台用意してくれ!」


「ご注文ありがとうございます!」


 こうして、ハーゲンから遊技台の注文を受けた俺は倉庫に向かうと早速遊技台二百台を創り出し、その日のうちにハーゲンへと納入することとなった。流石に、ハーゲンも一台金貨五枚の遊技台二百台分もの大金を持ってきてはいなかったので、代金の支払いは後日と相成った。


 その後、ハーゲンは足早に店を出て帰っていった。恐らく、俺の情報を元にヴェスティア獣王国で遊技場を開く為の準備を進めるのだろう。


 そうこうしている間に、壁に掛かった時計の短針がいつの間にか午後六時を指しており、ほどなく晩課の鐘が鳴った。アサヒナ魔導具店も閉店の作業を行うということで、俺とヘルミーナはそろそろ御暇することにした。


 本当ならベンノたちを手伝うべきなのだが、アポロニアとニーナが屋敷に戻ったという連絡をラルフから受けたので、屋敷へと戻ることにしたのだ。

いつもお読み頂き、ありがとうございます!

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