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上司への相談と神の奇跡

『(世界神様、今お時間よろしいでしょうか?)』


『ハルト様! お疲れ様です、先ほどぶりですね。何かございましたか?』


 俺はちょっと前まで神話通信を通じて話をしていた世界神に対して、改めて神話通信を掛けていた。


 というのも、ハインリヒたちに今回の件について諸々の説明を行ったのだが、魔剣の効果についてはある程度信じてくれたものの、戦争が起こる可能性があったことや、魔王が誕生したこと、そして今回の件が魔王によって齎された災厄であることについては、ハインリヒに信じてもらえなかったのだ。


 リーンハルトが機転を利かせて、俺が世界神から神託を授かることがある『神子』であること(一応、アルターヴァルト王国の第一級機密事項らしい。初耳だが)を伝えてもらい、それらの情報源が世界神、つまりこの世界の神であるスルーズ神であるということを信じてもらおうとしたのだが、到底信じられるものではないと突っぱねられてしまったのだ。


 まぁ、俺もその気持ちは良く分かる。正直に言って、リーンハルトたちが俺の話したことを信じてくれたのも、今になって考えれば不思議に思う。あの時は、御用錬金術師として認められて、多少なりとも信頼関係が築けたからかなと思っていたが、特に俺が神託を授かったという証拠を見せてはいなかった。本当に俺の言葉だけを信用してくれたのだ。


 そんな彼が王国の機密情報をばらしてまで俺の言葉を信じさせようと動いてくれたのだ。流石に、その思いに応えなければ男が廃る。というか、現実問題として、今後の関係にも影響があるしね。


 そこで、俺はハインリヒに対して神託を受けることができる(つまり、神様から情報を得ることができる)ということの証明を行うために、大変申し訳ないのだが、上司である世界神に協力を仰ぐべく、再び神話通信を行ったのだ。部下の業務が円滑に進められるよう上司にちょっと動いて頂こうと、そういうわけだ。



『(……というわけで、獣人国の国王であるハインリヒ氏と私に対して何らかの神託を与えて頂ければ、互いにどのような神託を受けたか答え合わせをすることで、私が神託を受けられると信じてもらえるのではないかと、そう思ったのですが、いかがでしょうか?)』


 そう、俺が考えた方法は、ハインリヒと俺の双方に世界神から神託を授けてもらい、お互いに授かった神託の答え合わせを行い、どちらも同じ内容を授かったことが分かれば信じてくれるのではないかと、そう考えたのだ。


『……うーん。ハルト様の案はあまりお勧めできないですよ?』


『(何故です?)』


『そもそも、神託は神と繋がりが深い者にしか与えることができません。つまり、マギシュエルデにおいて日頃よりわたしに対して祈りを捧げる者、つまり神殿の関係者でなければ難しいと思います。その者は毎日、わたしに祈りを捧げているのでしょうか?』


『(あ、そうか……。神殿関係者でないと難しいか。それにハインリヒ氏が毎日祈りを捧げているかどうかは分かりませんし、恐らくそこまで信心深くないと思います……)』


『それにですね、そもそものお話になるのですが。もし、仮に神託を与えることができたとしても、その神託といいますか、私の声が神の声であると、その者に信じて頂けるのでしょうか……?』


『(あぁ、それもそうですね……。下手をすれば、俺が何か魔法か術を使って話し掛けていると思われるかもしれんませんし、確かに良くないですね……)』


 良いアイディアだと思ったのだが、確かに世界神の言う通り、結構穴だらけのアイディアだったようだ。世界神が言うには、世界神の声かどうかは分からないものの、神力を込めて話し掛けることで神々しさのようなものを感じ取ることができるらしいのだが、それも神との繋がりが大きいほど効果が高く、小さいほど効果が低くくなる。どちらにせよ、ハインリヒに対して効果が得られるとは考えにくい。


 となると、どうすればハインリヒに納得してもらえるだろうか……。


『ハルト様。もし、その者を信じさせるだけで良いのでしたら、神託ではなく『奇跡』を見せてはいかがでしょうか?』


『(えっ!?)』


 どうしようかと悩んでいると突然世界神から思ってもみなかった言葉が出てきた。『奇跡』それは、『神託』と並ぶ、世界神が管理する世界に対して干渉できる手段の一つだと聞いたことがある。その奇跡を見せるというのは一体どういうことなのだろうか。


『ハルト様は、私と話ができる、えっと、つまり神託を授かれることをその者に示したいのですよね?』


『(えぇ、まぁ)』


『でしたら、私がこれから起こす奇跡について、ハルト様がその者に説明した後、実際に奇跡を起こせば信じてもらえるのではないでしょうか?』


『(おぉっ! 確かに!)』


 なるほど! 事前にこれから起こる奇跡をハインリヒに神託を授かったとして伝えたあと、実際にその奇跡が起こる様子を見せられれば、信じるほかないだろう。だが……。


『(それで、具体的にどのような奇跡を起こせるのですか!?)』


『そうですねぇ、例えば大地を真っ二つに引き裂いたり、海を真っ二つに割ったりする地形変化や、何日も晴れの日を続けたり、大雨を振らせたりする天候変化とか……』


 うーむ。確かに、奇跡と呼ばれる類のものかもしれないが、それって現地に住んでるものにしてみれば、奇跡というよりも災害ではないだろうか……。世界神の説明はまだまだ続いているが、どれもあまり喜ばれるものではなさそうだ。


『……あとは、疫病や害虫を駆除したり、呪われた大地を浄化したりする神光浄化、それと最後に、伝説の武具や優れた能力を与える神能祝福、ざっくりとお話ししましたが、以上ですね』


 ふむ。正直地形とか天候の変化等々は分かりやすいが、特に誰からも望まれない奇跡なんて意味がない気がする。となると、最後にちらっと説明された神光浄化や神能祝福しか残ってないんだが。


 とはいえ、伝説の武具や能力をこの世界の誰かに与えるなんて厄介事が増えるだけな気がするし、俺たちが受け取ったとしても果たして使っていいのかどうか。人事部あたりから文句を言われる気がする。


 となると、残るのは……。あっ、そういえばアポロニアが気になることを言っていたな……。うん、それなら誰も不利益を被らないし、むしろヴェスティア獣王国に対してはメリットしかないだろう。


『(では、このようなことは可能でしょうか。えっとですね…………)』


『はい、大丈夫ですよ! では、すぐに準備致しますね』


『(ありがとうございます、世界神様! お手数をお掛けしてしまい申し訳ありませんが、よろしくお願い致します! 奇跡を起こされる際には事前にご連絡頂けると助かります)』


『分かりました、お任せください!』


 世界に起こす奇跡をどのようなものにするか決めた俺は、早速その内容を世界神に伝えると神話通信を終了した。さぁ、これから始まる神の奇跡をしっかりと皆の目に焼き付けてもらおう!

いつもお読み頂き、ありがとうございます!

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