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第二王子と国王陛下

 立ち上がって俺たちを見下ろすハインリヒとエアハルトの二人は、未だに混乱している俺に、混乱の原因について説明してくれた。つまり、それは何故『リュディガー』がエアハルトで、『アデリナ』がハインリヒなのか、ということについてだ。


「ふむ、そろそろ種明かしをするべきかな?」


「そうですね、いつまでもここに留まるわけにも参りませんし」


「種明かし、ですか?」


「うむ。アサヒナ子爵よ。其方が何故、エアハルトのことを『リュディガー・アクス』と、そして何故、我のことを『アデリナ・バルツァー』と認識したのか……。アサヒナ子爵よ、其方は『鑑定の魔眼』を持っておるな?」


「!?」


「「「「『鑑定の魔眼』!?」」」」


 ハインリヒの言葉に驚くと、リーンハルトとパトリック、それにユリアンとランベルトまで驚いたように声を上げた。


 そういえば、彼らには俺が鑑定の魔眼を持っていることについては伝えていなかったのを思い出した。まぁ、元々あまり俺の能力については口外しないほうが無難だろうと、アメリアたちとの会話で理解できたので、アイテムボックスも含めてアメリアたちのように俺の仲間(というか、出張所のメンバー)以外には極力『見せない』、『話さない』、『使わない』の『三ない運動』を心掛けていたというのもあるが。


 とりあえず、リーンハルトたちのことはさておき、今はハインリヒの質問についてだ。


「……どうしてそのことを?」


「やはり、か……。うむ、この仮面は『偽りの仮面』といってな、これを身に着けると、相手からは別人として認識されるという魔導具、いやアーティファクトなのだ。もちろん、其方のような鑑定の魔眼を持つものからの鑑定結果も偽りの情報にすり替わる優れ物だ」


「どうです、もう一度鑑定を試してみられますか?」


 エアハルトが改めてアーティファクト『偽りの仮面』を装着する。すると、銀髪爽やか狼耳イケメンから、何ともガタイの良い黒髪に白髪交じりの熊耳オジサンに変化したのだ。黒尽くめの姿だと頭の上の耳が見えなかったのだが、リュディガーは熊耳の獣人だったらしい。


 さて、それではエアハルトから言われた通り念のため鑑定してみる。


『名前:リュディガー・アクス

 種族:獣人族(男性) 年齢:39歳 職業:近衛騎士(第二王子専属)

 所属:ヴェスティア獣王国

 称号:暗殺者

 能力:A(筋力:A、敏捷:A、知力:D、胆力:A、幸運:C)

 体力:5,280/5,280

 魔力:0/0

 特技:暗器術:Lv9、暗殺術:Lv9、体術:Lv9、威圧:Lv6、礼儀作法

 状態:健康

 備考:身長:187cm、体重:92kg』


 ふむ、確かにリュディガーのステータスだ。エアハルトに鑑定したことを伝えると、再び彼は偽りの仮面を外す。


「さぁ、アサヒナ子爵。もう一度鑑定してみてください」


「では、早速……」


 エアハルトに促されて改めて鑑定する。そういえば、人から言われて鑑定するのは初めてだな。


『名前:エアハルト・ブリッツ・ヴェスティア

 種族:獣人族(男性) 年齢:22歳 職業:次期国王候補

 所属:ヴェスティア獣王国

 称号:ヴェスティア獣王国第二王子

 能力:A(筋力:B、敏捷:A、知力:S、胆力:S、幸運:B)

 体力:6,980/6,980

 魔力:0/0

 特技:暗器術:Lv9、暗殺術:Lv9、体術:Lv9、交渉術:Lv7、隠密術:Lv7、気配察知、殺気感知、礼儀作法

 状態:健康

 備考:身長:182cm、体重:67kg』


 目の前にいるイケメンがヴェスティア獣王国の第二王子であるエアハルト本人であることは分かった。だが、それよりも、いやそれ以上にその能力の高さと特技に驚いた。


 爽やかイケメンだと思ったら、意外と強い。というか、知力と胆力がSというのはビアホフ以来だな。


 しかし、それにしてもエアハルトの特技って、リュディガーとして見えていた特技からほとんど変わってないじゃん! 暗器とか暗殺って、爽やかイケメンとは対極な特技じゃないか……。だが、気配察知と殺気感知、それに隠密術。グスタフの手勢からここまで逃れてこられた理由としては、十分納得できる。


「なるほど、確かにエアハルト様ご本人のようですね」


 そう伝えると、エアハルトは微笑みを返してきた。イケメンの微笑みなど俺にとっては何も嬉しくないのだが。


「ふむ、では次は我の番だな。アサヒナ子爵よ、我のことも改めて鑑定して見るがよい!」


 エアハルトの鑑定を終えてやれやれと思っていた矢先に、今度はハインリヒまで鑑定するようにと言ってきた。エアハルトのおかげで、すでに『リュディガー』と『アデリナ』の姿がアーティファクト『偽りの仮面』による認識変更の効果であったことには納得しているのに、だ。


 だが、相手は他国の国王陛下。断るわけにもいかないので、鑑定させてもらう。


『名前:ハインリヒ・ブリッツ・ヴェスティア

 種族:獣人族(男性) 年齢:48歳 職業:国王

 所属:ヴェスティア獣王国

 称号:ヴェスティア獣王国国王

 能力:S(筋力:S、敏捷:S、知力:A、胆力:S、幸運:B)

 体力:16,980/16,980

 魔力:0/0

 特技:体術:Lv10、交渉術:Lv5、話術:Lv3、気配察知、殺気感知、自動回復(毎時3%回復)、礼儀作法

 状態:健康

 備考:身長:196cm、体重:82kg』


 なんと、ハインリヒの能力はSランク、つまり上位精霊とも互角に渡り合える可能性を秘めていた。こんな人間はビアホフ以外に出会ったことがない。というか、エアハルトの時にも引き合いに出てきたが、何気にアルターヴァルト王国の執事長は化け物ではないだろうか……。


 しかも、こちらのハインリヒは体力お化けであり、攻撃に関連する特技は体術だけしかないものの、レベル10という達人だ。それだけでなく、エアハルト同様に気配察知や殺気感知を持ったうえで、自動回復まで持っている。回復量がセラフィよりも少ない毎時3%ということだが、毎時500近い体力を回復できるというのは、凄い能力と言える。


 ハインリヒのステータスを鑑定して一つ気になったことがあった。エアハルトもそうだが、二人ともこの世界では獣人族の中でもトップレベルの実力者だというのは間違いないだろう。


 それにもかかわらず、何故第三王子のグスタフの手によって追われる立場になってしまったのか、という点だ。俺は二人が王都を追われた経緯について聞いてみることにした。

いつもお読み頂き、ありがとうございます!

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