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065 アウスさん、私が行くまで頑張ってください

 セリムのアッパーによって巨竜が天高く撃ち出された頃、王を守る一団が闘技場を脱出した。

 アウスを先頭に、場内の警備に当たっていた騎士や衛兵が前後左右を固める。

 中心で守られるのはアーカリア王とマリエール、そしてルーフリー。

 南区画には既にモンスターが出現し、民衆がパニックに陥っていた。

 闘技場前に展開した二十匹ほどのモンスターは、いずれもレベル15から30程度の鳥獣系。

 王の姿を認めるや一斉に飛びかかり、アウスの振るう蛇腹剣で細切れにされる。


「なんたることだ……。街中に、それも我が王都にモンスターが、民に被害が……」

「王よ、今は嘆いている時ではない。敵の狙いは明らかに余とそなたの命。ここで足を止めては敵の思うつぼぞ。我らが生き延びれば、敵の目論見は失敗に終わるのだ」

「……そうだな。悲嘆に暮れるのは後だ」

「さ、こちらですわ」


 目的地である王城は大きく見えているが、実際の距離はかなり離れている。

 アウスに先導され、一団は小走りで先を急ぐ。

 闘技場前を通る南大通り、その終点は貴族街へと続く南門。

 貴族街を抜ければようやく王城だ。

 問題はモンスターがどの範囲まで進出しているか。

 南区画だけなら被害は最小限に留まるが、他の区画や貴族街にまで広がっていたならば首都機能すら麻痺しかねない。


「モンスターは王都のどの範囲まで広がっているのか。ルーフリーよ、お主はどう考える」

「そうですな、王国の滅亡を目的としてのヴェルム・ド・ロードの投入でしょうが、こうしてあの少女の足止めに使わざるを得ない状況。今の敵の目的は、飽くまで王の命。となれば、いたずらに戦力を分散する事は致しますまい。被害は南区画のみ、と見るが妥当かと」

「ふむ、さすがはルーフリー。この国一の知恵者よ」


 大通りに立ちはだかる敵を、アウスは次々と蛇腹剣の錆にする。

 背後で交わされる会話は、彼女の考えとおおよそ合致した。

 セリムの実力を知っていたにせよそうでないにせよ、世界最強と名高いモンスターはセリムの足止めに使われている。

 逆に考えれば、セリムもドラゴンを足止めしてくれているのだ。

 大通りの半分まで来たところで、アウスは上空を見やる。

 縦横無尽に旋回する巨竜の姿が目に映り、彼女は驚嘆した。

 あれほどの巨体を持ちながら、飛行性能は小型の飛行特化モンスターをも凌駕している。

 加えて、口から吐き出される火炎弾。

 かの鉄壁を誇るテンブですら、一撃受け止めるのが精一杯だったと伝わる恐ろしい威力を秘めた火球を、低級魔法のように連発している。

 アウスが何より驚いたのは、片手でその火球を弾くセリムの姿だったのだが。


「どうやら、上の方の心配は必要なさそうですわね」


 彼女がいる限り、ドラゴンがこちらに攻撃を加えて来る事はないだろう。

 後顧の憂いは消え、彼女はひたすら前を見て突き進む。


「こんな雑魚モンスターでわたくしを止めようなど、思い上がりも甚だしいですわ」


 襲い来るモンスターは、やはり中級レベル帯の各地でよく見られる種類。

 ヴェルム・ド・ロードがいれば戦力は充分と踏んで、予備の戦力が手薄だったのだろうか。

 空を見上げれば、恐るべき力を秘めたドラゴンが三体に増えている。

 なるほど、あの戦力ならば一国を蹂躙するにも過剰なレベル。

 それに、強大過ぎるドラゴンを三体制御するには多大な力が必要なのだろう。

 あまりにも味気ない地上戦力には、そういった背景がありそうだ。

 もっとも、どんな理由があるかなど関係ない。

 蛇腹剣を振るい、アウスはひたすら道をこじ開ける。


「皆さま方、この辺りの敵は片付けましたわ。先を急ぎましょう」


 鬼神の如き奮戦で、アウスのメイド服は返り血に赤く染まる。

 足下には細切れになった鳥獣系モンスターの肉片が散らばり、南大通りはまるで血の池のよう。

 荒事とは無縁の場所にいた王は、凄惨な光景に思わず口元を覆う。


「うっ……!」

「王よ、顔色が優れぬが……」

「いや、大事ない。このような場所で足を止めてはおれぬでな……」


 吐き気はぐっと堪え、走る。

 南大通りを直進し続け、貴族街へと続く門はもう目の前。

 門前では、門の警備に当たっていた部隊が魔物を相手に奮戦している。


「見えたぞ、貴族街への門だ!」

「ふむ、どうやら魔物の侵入は彼らが食い止めている様子。おそらくあの先に、魔物は存在しないでしょうな」

「中々苦戦しているようだ。アウスよ、助太刀に行ってまいれ」

「承りました」


 騎士と衛兵に警護を任せ、アウスは戦場へ突進する。

 熊型モンスターの首を背後から刎ね飛ばすと、魔物の群れに右手をかざし、風の魔力を解き放つ。


「サイクロン」


 敵の群れの真っ只中に生み出された巨大な竜巻。

 巻き込まれた魔物は真空の刃に切り刻まれ、風の渦はみるみる赤く染まっていく。

 形勢は逆転、士気を上げた警備兵たちによって、サイクロンから逃れた敵も一気に殲滅された。

 竜巻が消滅すると同時、兵たちは剣を掲げて勝鬨を上げる。


「お嬢様、仰せの通りに致しましたわ」

「うむ、大義であった」

「兵達よ、諸君らもよく守り抜いてくれた!」

「ア、アーカリア王! 皆、控えよ!」

「ははっ!」


 アーカリア王が進み出ると、兵はみな片膝を突き頭を垂れる。


「よい、今は危急の時。速やかに体勢を整え、引き続きこの場所を守ってくれ」

「仰せのままに。皆の者、持ち場に戻れ!」


 王の一言によって部隊長が高らかに号令をかける。

 統率の取れた動きで、部隊は素早く陣形を整えた。


「我らも急ごうぞ。ルーフリー殿の話では、この先に敵は居らぬはず」

「うむ。では——」


 その瞬間、頭上に青空が広がった。

 分厚い雲が吹き飛び、顔を上げればあり得ない規模の爆発が遥か上空で巻き起こっている。

 衝撃波が地上へと降り注ぎ、かなりの間があって爆発音も届く。

 よくよく見れば、セリムと対峙するドラゴンは二匹に減っていた。

 今の爆発がセリムの本気の一撃なのか。

 マリエールはあんぐりと大口を開けて、空を見上げる。


「……コホン。お嬢様、はしたのうございますわ」

「す、済まぬ。予想以上だったのでな」


 あの攻撃を地上で放てば、間違いなく地図を書き換える羽目になる。

 失われかけたセリムへの恐怖心が、またぶり返してきた。

 圧倒的な力を見せるセリムを見上げ、アーカリア王は呟く。


「あの少女は、一体……」

「——マーティナ・シンブロンの一番弟子、セリム・ティッチマーシュ。僕が一番興味ある人間さ」


 王の疑問に答えたのは、どこか楽しげな声。

 いつからそこにいたのか。

 黒いローブに全身を包み、黒いフードからわずかに覗く赤い瞳。

 異様な力を感じ、アウスはマリエールを庇い前に出る。

 警護に回っていた騎士や衛兵、門の警備隊も、王を背に展開し、この人物に切っ先を向けた。


「セリム様のこと、随分詳しいみたいですわね。では、あなたは何者でしょうか。名乗って頂けると助かりますわ」

「名乗る程の者じゃないさ。ちなみに目的は、そこにいる髭のおじさんの命だよ」


 兵の間から顔を覗かせる王に人差し指を突きつけ、不敵にも宣言する。


「無礼者めッ! 皆のもの、敵は一人だ! かかれぇぇぇッ!!」

「——っ! いけません!」


 アウスの制止も空しく、部隊長を先頭にした十人の警備兵が斬りかかり——一瞬で彼らの首と胴体は分かたれた。

 アウスの頬に、大粒の汗が流れる。

 彼女にすら、今の攻撃は見えなかった。

 始動も、軌跡も、見えなかった。

 ただ立っているだけ、そうとしか見えなかった。


「ひどいなあ、問答無用で斬りかかってくるなんて。家臣のしつけがなってないよ、国王のおじさん。ねえ、君もそう思わないかい? マリエール・オルディス・マクドゥーガル」


 赤い瞳がマリエールに向き、幼い魔王は恐怖に竦み上がる。

 セリムに追いかけられた時とすら比べ物にならない、根源的な恐怖。

 その瞬間、アウスの目に殺意の炎が灯る。


「……お嬢様に手を出すというのなら、黙ってはいませんわよ」

「おぉ、怖い。あのね、僕は平和主義者なんだ。自分の手で誰かを殺すなんて嫌なんだよ。今のだって彼らが殺そうと襲ってきたからやむなく返り討ちにしただけ。その辺り、分かってくれると助かるなぁ」

「戯言を……!」


 明らかに話が通じる相手じゃない。

 その強さも、文字通り次元が違う。

 もしかすると、セリムに迫るかもしれない程の力。

 挑んでも一瞬で屍を晒すだけだろうが、マリエールが狙われている以上、挑まない訳にはいかない。


「そんなに力まなくても大丈夫だよ。僕は自分で戦う気なんてさらさらないんだって。戦うのはこの子たちだよ」


 まるで諭すように優しく語りかけると、両手を左右に広げる。

 ローブの下からのぞく肌は、かなりの色白。

 広げた腕の先、空間に二つの歪みが発生し、黒い穴からモンスターが二体飛び出してきた。

 危険度レベル36、雷を操る獅子型モンスター、ボルテックライオ。

 危険度レベル33、風魔法を自在に扱う怪鳥、アルケードロス。

 どちらも上級冒険者が恐れるほどの力を持つモンスターだが——。


「甘く見られたものですわね。その程度の相手、わたくしには役不足でしてよ」


 アウスとのレベル差は大きい。

 金色の毛並みを持つ雄々しき獅子も、緑の羽毛を持ち天空を翔ける怪鳥も、彼女の敵には成り得ない。


「もちろんわかってるさ。ショーはまだまだこれから、焦らない焦らない」


 続けて、並んだ二体に向けて両手をかざすと、手のひらから魔力が放出され、二体の魔物は淡い光に包まれた。


「……まさか、これは」


 マリエールは、同じくアウスも、その光景には見覚えがあった。

 その魔法は、セリムの創造術クリエイトに瓜二つ。

 あり得ない、そんなはずがない。


「——とか思ってるんでしょ。あり得るんだなぁ、これが」


 ニヤリと笑うと、黒フードの人物は高らかに魔法を唱えた。


融合術フュージョナイズ!」


 光がひときわ強く輝き、視界を奪う。

 強い発光が収まると、二体の魔物がいた場所に立っていたのは、


「なんですの、あのモンスターは……」


 獅子の胴体に緑の巨大な翼が生え、太く逞しい四肢の先に鳥のような強靭な足が付いている、見たこともないモンスターの姿だった。

 二又に分かれた尻尾にはそれぞれ毛皮と羽毛が生え、風と雷が迸る。

 何よりも異様なのはその頭部。

 右側に鳥、左側に獅子。

 二つの首が生え、それぞれが意志を持って唸り声を上げた。


「紹介するよ。僕の創り出した世界に一匹だけのモンスター、レボルキマイラ。危険度レベルに換算すると、そうだなあ……。60くらいかな」

「二体のモンスターを、合体させたというのか……!」


 そんな芸当が出来るクラスなど、マリエールは聞いた事もなかった。

 マリエールはおろか、この場にいる——ただ一人を除いた、誰一人として。

 兵は竦み上がり、その場から一歩も動けない。

 ただ王を守るという使命感だけが、逃げ出そうとする足を何とか押しとどめていた。


「危険度レベル60……、中々厳しそうですわね」


 60という数字。

 格上ではあるが、何とか戦いにはなりそうなレベルの差だ。

 アウスの実力は、冒険者レベルに換算すると57。

 上空では、二体目の巨竜が爆散したところだ。

 彼女の戦いが終わるまで持ちこたえられれば、時間稼ぎに徹すれば勝機はある。


「ですが、負けるつもりはございません」

「いいよいいよ、じゃあ始めようか。行けっ、レボルキマイラっ! なんちゃって」


 主の指示を受け、合成獣はアウスに飛びかかる。

 背後にはマリエールや王がいる。

 隙を見せれば狙ってくるだろう。

 突進攻撃を横っ跳びで回避すると、


「ウィンドカッター!」


 突進を止めるため、牽制の低級魔法を放つ。

 敵の力がわからない以上、迂闊に攻め込むのは危険だ。

 キマイラは翼を広げ、巨体に見合わぬ素早さで空へと舞い上がった。

 ウィンドカッターは石畳を破砕する結果に終わる。

 上空からアウスを見下ろしつつ、キマイラはお返しとばかりに魔力を解き放つ。

 風魔法、ウィンドカッターの乱撃。

 威力はアウスよりも上、まともに食らえば体が切断されるだろう。

 しかし、攻撃の軌道は直線的。

 一定の距離を取りつつ、軽やかなステップで回避。


「風を操るわたくしに、風魔法が通用すると思って?」

「なるほど、じゃあ方針転換だね」


 レボルキマイラの獅子の瞳が見開かれ、その全身が電撃を帯びた。

 ボルテックライオは、電撃の魔法を飛ばしての遠隔攻撃を使えない。

 その得意とする戦法は、電撃を全身に纏い身体能力を活性化しての高速突進。

 もしも合成獣がそれぞれのモンスターの特徴を併せ持っているのなら——。


「やはり、ですわね……!」


 電撃を纏ったまま翼を広げ、超高速で飛来するキマイラ。

 その速度は、通常のボルテックライオの突進速度を遥かに超えている。

 突進を転がって回避したアウスが体勢を立て直すよりも速く、旋回したキマイラは反対方向から再び突っ込んで来た。

 凄まじい飛行速度に見合わない、物理的にあり得ないほどの空中での姿勢制御は、風魔法を利用してのものだろう。

 風と雷、二つの属性を操るモンスター。

 そんなもの、自然界には絶対に存在しない。


「トルネードウォール!!」


 回避は間に合わない。

 片膝を付いたまま、三本の竜巻が連なった壁を展開する。

 この魔法は単なる防御壁ではない。

 竜巻の中に一歩足を踏み入れれば、複雑な乱回転に巻き込まれ、敵の体は千切れ飛ぶ。

 これだけの速度での突進、そう易々とは止まれないはず。


「そのまま突っ込んで、肉片とおなりなさい」


 荒れ狂う暴風の壁に触れる直前、キマイラは空中でピタリと静止する。

 最高速から一気に停止状態へ。

 その飛行性能は、アウスの想定を遥かに越えて——


「やはり、動きを止めましたわね」


 いなかった。

 既に次の手は打たれている。

 続けざまに繰り出した魔法は、圧縮した空気圧を敵の頭上に叩きつける大技。


「アトモスプレッシャー!」


 圧縮空気による見えない天井が、空中の敵を地に堕とし、石畳にめり込ませた。

 並のモンスターなら圧死してもおかしくない圧力下で、キマイラは力に逆らい、無理やり立ち上がろうとしている。


「——エンチャント」


 トルネードウォールを消滅させると共に、アウスは蛇腹剣に自らの魔力を込める。

 刀身が風の魔力を纏い、真空の刃が渦を巻く。


「敵の方がレベルは上。時間をかければ抜け出せるでしょうが、そんな時間は与えませんわ」


 動きが封じられている今こそ、トドメを刺す絶好の機会。

 風を纏った蛇腹剣をアウスは振りかざし——。


「……なん、ですって」


 その右手に、何も握っていない事に気付く。

 落とした覚えも、奪い取られた感覚も、いつ無くなったのかさえ、アウスには分からない。


「お姉さん。お探しのモノはこれですか?」


 背後から聞こえる声に振り向くと、黒フードの右手に蛇腹剣が握られている。

 コイツが奪い取ったのか。

 音も無く一瞬で近寄り、強く握りしめられた蛇腹剣を、いとも簡単に奪い取ったというのか。

 反応どころか、気付くことすら出来なかった。

 アウスは悔しげに歯噛みする。


「手出しはしないと言ったはず!」

「ちゃんと聞いてなかったのかい? 僕は戦わないって言ったんだ。嘘はついてないよ? ただ単に、可愛いペットの後方支援をしただけさ。それよりも、僕とのんきにお話してていいのかな」

「——ッ!」


 迂闊だった。

 戦闘中に敵から目を離すなど、普段のアウスならば絶対にしない。

 動揺が生んだ致命的な隙は、敵の致命の一撃をもたらす。

 空圧から復帰したレボルキマイラは、その全身に電撃を纏い、アウスに向けて猛突進をかけた。

 回避は間に合わない、防御も間に合わない。

 迎撃しようにも、武器は失った。

 彼女は何を思ったか、口元を歪めて笑みを浮かべる。


「こうして助けられるのも、二度目ですわね」


 アウスには見えていた。

 突っ込んでくるキマイラ目がけて上空から飛来する、ドリルの付いたオレンジの筒。

 トライドラゴニスの素材から作った虎の子の爆弾は、凄まじい速さで電撃の鎧を突っ切り、獅子の胴体に命中する。

 ドリルが回転してその体内に潜りこむと、次の瞬間巻き起こる大爆発。

 体の内側から吹き飛ばされ、レボルキマイラは爆発四散。

 バラバラになった体が飛び散り、ボトボトと音を立てて落下する。


  ————————————————


   ドリルボム


   レア度 ☆☆☆★★


   ボタンを押すとドリルが

   回転し、敵の体内深くに

   潜りこんで大爆発を起こ

   す。本当に取り扱い注意

   の超特級危険物。


   創造術クリエイト

   タイマーボム×ドラゴン系の爪


  ————————————————


「アウスさん、マリエールさん、それに王様も。何とか無事みたいですね」


 合成獣を一撃で葬った少女は、天空から軽やかに舞い降りる。

 彼女の姿を目の当たりにし、マリエールは心の底から安堵した。


「セリム様、助かりました。また命を救われましたわね」

「当然の事をしたまでです。それよりも——」


 周囲の惨状にセリムは憤る。

 石畳に転がる、十人もの警備兵の無残な死体。

 未だ聞こえる悲鳴に、各所から立ち上る黒煙。

 色とりどりの小旗は石畳の上に踏みつけられ、通りに立ち並んでいた出店はことごとくモンスターに蹂躙されてグシャグシャに崩壊している。

 絶対に許すわけにはいかない。

 アウスの蛇腹剣を右手で弄ぶ、異様な気配を放つ赤い瞳を、セリムの緑の瞳が睨み据える。


「あなたですね、今回の事件の原因は」

「そうだよ。で、だったらどうする気?」

「当然、ぶん殴ります」

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