表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
131/173

128 海への旅路は、あまりにも過酷です

「お姉さま、本当に行ってしまわれるのですね。リヴィアは寂しゅうございます……」

「案ずるな、余は必ず帰ってくる」


 目に大粒の涙を溜めるリヴィア。

 妹の頭を撫で、マリエールは優しく諭す。

 リヴィアがルキウスの訃報を耳にした時、一日中泣き明かしたと後から家臣に伝え聞いた。

 自分にとって妹がこの世で唯一残った肉親であるように、妹にとっても自分がたった一人の血を分けた家族。

 エキセントリックな言動の数々も、寂しさの裏返しであることをマリエールはよく知っている。


「余はリヴィアを絶対に一人にはせぬ。離れていても、心はいつも一緒だ。家族なのだからな」

「お姉さま……、はい! わたくし、お姉さまが留守の間、この城を立派に守ってみせますわ!」

「うむ、信頼しておるぞ」


 最後に固く抱擁を交わすと、魔王はマントを翻して振り向き、高らかに宣言する。


「余はこれより、レムライアに赴く! 長年の友好国ではあるが、国家元首たる余が自ら訪れるは魔族の歴史上初となる。これは歴史的に大きな意義を持つことである! 皆の者、この門出を盛大に祝すが良いっ!」


『オオォォォォォォォッ!!!』


 意気盛んな兵士たちに大きく頷くと、


「シャイトス、これへ!」

「ははっ!」


 家臣団の中から歴戦の老将を呼びつけ、跪いた彼に対し指示を出す。


「お主は兵を率い、我らを魔都の郊外まで護衛せよ」

「老骨には身に余る大役ですが、謹んでお受け致しましょう」


 命を受けたシャイトスは、直ちに手勢の兵士たちを取りまとめた。

 その迅速な差配に周囲の兵士たちからどよめきと感嘆の声が上がる。

 アルカ山麓の戦いにおいて、老将シャイトスの勇名もまた、改めてアイワムズに轟いていた。


「魔王様、準備完了いたしました」

「うむ、見事な統率だ」


 満足気に頷くと、共に旅へ出向く仲間たちに最後の確認を取る。


「リース王女、やり残したことはないか?」

「正直、山ほどありますわ。でも、続きは戻ってからですわね」


 勝気な笑みを湛える王女。

 この九日間、親善大使として公務を行う中で見せた彼女の手腕にマリエールは感服している。


「そうだな。此度の尽力、御苦労であった。アウスよ、公務の引き継ぎ、滞りないか」

「万事抜かりはありませぬ。妹様には全て、伝えてありますわ」


 隣に控える側近は、穏やかな表情で淡々と述べる。

 優秀な彼女が抜かりないと言うのだ、信用しても全く問題ないだろう。


「よし、大義である。クロエよ、オリハルコンの加工は困難を極めると聞く。手にした暁には、お主の腕、頼みにさせてもらうぞ」

「任せてよ。アダマンタイトに続いてオリハルコン、鍛冶師冥利に尽きるってもんさ!」


 伝説の金属・アダマンタイトを鍛えて見せた彼女以上の腕前を持つ者は、このアイワムズにもいないはずだ。


「頼んだぞ。……セリムよ、またも大変な依頼を頼んでしまい、すまなかったな」

「いえ。マリエールさんが困ってるんですもん。見捨てておうちに帰れませんよ」


 可憐に笑みを湛える、世界最強の称号を持つ少女。

 あの時彼女と出会えなければ、どうなっていただろうか。

 セリムに対する感謝は、いくら伝えても伝えきれないほどだ。


「感謝する。では、行くとするか」

「あたしは?」

「……ソラよ。忘れ物は無いか?」

「バッチリ!」

「そうか。では行くぞ!」

「……なんか、あたしだけ雑じゃない?」


 いよいよ出立の時。

 盛大にファンファーレが吹き鳴らされる中、老将の率いる兵百人弱に護られ、一行は魔王城前の跳ね橋を渡る。

 中央通りに出た瞬間、大勢の魔族が魔王の到来を出迎えた。


「おぉっ、王都を出た時とおんなじ感じだ……」

「いえ、これは……」


 どうもあの時とは様子が違うような。


「マリエール様ーっ、こっち向いてー!!」

「キャーッ! 魔王様、今日もちっちゃくて可愛いいぃぃぃ!!!」

「L・O・V・E、ラブリーマリちゃん、フーッ!」

「えっなにこれ」


 魔王城の跳ね橋の周りで待機していた、出待ちの魔族たち。

 その正体は、魔王であるマリエールのファン。

 アイドル的な人気がある魔王様には、熱狂的なファンも大勢いる。

 こうして兵士に護衛させなければ、ノータッチの禁忌を破るべく有象無象が殺到しかねない。


「あの、マリエールさん? 魔王の威厳は……」

「これも余の威厳と人徳が成せる業である。そうだろう、アウスよ」

「左様にございます、お嬢様」

「そうかな……」


 魔王の威厳というものが分からなくなっってしまったソラだったが、しかし跳ね橋を遠ざかると、沿道に集まったまともなアイワムズの住民が、敬愛する魔王たるマリエールに、あるいは精力的に活動を行っていたリースに、最強の名を轟かせつつあるセリムに歓声を送る。


「お、おぉ……! マリちゃん、本当に変な感じ以外でも慕われてるんだ」

「当然であろう。お主、まだ余のことを疑っておったのか?」

「最近はそうでもなかったんだけどね……」


 中央通りの花道を通り抜け、一行は南門を抜けて街道へ。

 南門の前にシャイトスの手勢が並び、老将はマリエールの前に膝を折る。


「魔王様、この老いぼれがお供出来るのはここまで。どうか、どうかご無事で帰ってきてくだされ」

「心配は要らぬ。心強い供が大勢おるでな。お主こそ、余が留守の間にぽっくり逝くでないぞ」

「はっはっはっ、せいぜい気を付けるとしましょう。では、ご武運を」


 豪快に笑いながら立ち上がると、老将は最後にリースに声をかける。


「まさかあなた様まで旅に出られるとは……。戦場で某に語った夢、本気のようですな」

「ええ、本気も本気よ。メアリスを越える、それが私の夢。この旅は、その夢に近づくための大きな一歩となるわ」

「ははは、その勝気な笑み、芯の強さ。本当に良く似ておられる」


 かつて戦場で何度も相まみえたメアリス。

 恨み重なる怨敵であるにも関わらず、彼女と良く似た面影を持つこの少女を見ると、何故だか喜びが湧いてくる。

 右目でニコリと笑いかけると、彼は引き締まった表情で居を正す。

 そして部下と共に頭を深々と下げ、主君を送り出した。


「では、魔王様! いってらっしゃいませ!」

「うむ、行ってくるぞ」


 大勢の家臣と国民に見送られ、魔王は今、再び旅に出る。

 誰よりも信頼を置く従者と、この上なく頼りになる友らと共に。



「ところでマリエールさん、ここから港町……オレンでしたっけ。その間に宿場は——」

「無いぞ。二十日はかかるが、無いぞ」

「…………」


 旅立って数分、セリムの心は早くも折れようとしていた。




 ○○○




 魔都を出発して一週間。

 一行は西へ西へと進み、草木が生い茂る緑の平原地帯から、ひび割れ乾燥した荒野へと景色が変わっていく。

 乾いた風が吹き、砂が舞い上がる不毛の荒野。

 赤茶けた大地が広がる中、一行は街道をひたすら西へと進み続ける。


「荒野かぁ……。剥き出しの地層、良い鉱石が取れそうだ。ねえ、ちょっと掘って来てもいいかい?」

「我慢してくれ、クロエ。まだ十一日はかかる予定なのだ。船が出るのは十三日後。旅の中で予期せぬトラブルが起きぬとも限らん。日程には余裕を持っておきたい」

「……そっかぁ。残念だけど、仕方ないね」


 珍しい鉱石の気配を敏感に感じ取ったクロエだったが、マリエールの言葉にため息混じりにツルハシを引っ込める。


「ですけどマリエールさん。この地図によると、この先街道は大きく半円を描いて、ひの字状に砂漠を迂回していますよね。オアシスの町アイダムに寄るとなると、ここからでも二十日はかかります」

「左様、それでは間に合わぬ」

「じゃあ……」

「砂漠を突っ切る」

「……え」

「さば……くを……?」


 魔王が短く口にした、信じがたいセリフ。

 セリムは思わず我が耳を疑い、リースの顔がサーっと青ざめる。


「ちょ、ちょっと待って。砂漠ってアレよね。砂があって、とっても熱いヤツよね」

「しかも夜はとっても寒いんですよね。当然宿場なんて無いんですよね!?」

「当然ながら、ございませぬわ」


 主に代わり、にこやかに返答するメイド。

 希望を絶たれた女子力高めの二人は、死にそうな顔でうなだれた。


「セリム、元気だそ?」

「ソラさん……。私、ソラさんともう一週間もイチャイチャしてません……。これからあと一週間以上イチャイチャできません……。助けてくださいぃ……」

「よしよし」

「ダメです、髪を撫でないで……! きっと油でベトベトです、ソラさんに触られたくありません……!」

「そんなことないよ、サラサラだよ」


 イチャイチャしていないなど、どの口が言っているのだろうか。

 今まさにイチャついている二人にジト目を向けつつも、クロエもリースを心配する。


「リース、大丈夫かい? 辛いなら……」

「……いえ、この程度で音を上げてなんていられない。大戦当時、戦場の衛生状態は最悪だったと聞くわ。メアリスならこの程度で、絶対に弱音を吐いたりしない!」


 憧れの姫騎士に追いつくために、なりたい自分になるために。

 リースは自らを奮い立たせ、弱い自分を見事ねじ伏せて見せた。

 キッと前を見据え、乾風吹き荒ぶ中彼女は歩く。

 その腕に、ターちゃんを大事に抱えながら。


「ほらほら、セリム。お姫様も立ち直ったよ? セリムもさ、見習えとは言わないよ。セリムはセリムだもんね。でもさ、もう少しだけ頑張ってみよ?」

「うぅ、ソラさん……」


 ソラの必死の励ましで、セリムも立ち直る兆しを見せる。


「これから行く砂漠について詳しく聞いてみようよ。もしかしたらオアシスとかあって、綺麗な泉で泳げたりするかもだし」

「オアシス……。そうですね、きっとそうです。アウスさん、どんな砂漠なんですか?」

「危険地帯ですわ」

「……え」


 メイドが短く口にした、信じがたいセリフ。

 セリムは思わず我が耳を疑い、ソラのテンションが急上昇する。


「き、危険……地帯……?」

「おぉぉぉぉっ!!! ついに、ついにソラ様ブレードのお披露目じゃん!」

「あ、あの……、アウスさん。その危険地帯、オアシスがあったりとかは……」

「ないですわね。少なくとも、通り道には」

「あっ、あぁ……っ」


 最後の希望を打ち砕かれたセリム。

 ソラはとうとう訪れた試し斬りの機会に舞い上がっていたため、彼女を励ます者は誰もいなかった。




 ○○○




 危険度レベル46、ダムドール砂漠。

 アイワムズからオレンへ向かう場合、砂漠を真っ直ぐに突っ切れば、旅程はおおよそ十五日の短縮となる。

 しかし、このルートを通るのは余程の命知らずか剛の者だけ。

 ほぼ全ての旅人が、日程が大幅に伸びることを承知で長い迂廻路を通る。

 高い危険度を誇るモンスターと度々巻き起こる砂嵐によって、この場所はアイワムズでも屈指の難所、文字通りの危険地帯だ。

 季節は夏、強い日差しが照り付ける炎天下の中、魔王一行はマントに身を包み、砂の混じった風の中を進んでいた。


「突っ切るのはひの字状のくびれた部分だ。大体二日か三日程度で抜けられるが、水は大切に使え。……いや、セリムの時空のポーチに山と入っていたか」


 なんでも無尽蔵に入るセリムのポーチには、六人と一匹分の水と食料、合わせて百日分はたっぷりと入っている。

 遭難する心配も、食糧難に陥る心配も無用だろう。


「本当に頼りになるな、セリムよ」

「いえいえ、それほどでもないですよ」


 何かが吹っ切れたのか、いっそ清々しい笑顔で答えるセリム。

 極限状態に陥った時、彼女は何かのスイッチが入るらしい。


「ところでさ、モンスターはまだ出ないの? 危険地帯に入ってから、もう三時間以上歩いてるんだけど」

「……出ないに越したことないわよね」

「お姫様はそうかもしんないけどさ! あたしは早く試し斬りがしたいの!」

「ボクもソラの剣、見たいけどさ。このドリルランス改も、試してみたいんだよね」


 折り畳んで背中に背負った、革袋を被せたドリルランスをクロエは片手の親指で指し示す。


「仕込んだギミックも勿論だけど、回転の速度も大幅に上げたんだ。今まで以上に硬い装甲をブチ破れるよ!」

「ほえー、よく分かんないけど凄いんだね」

「稼働部分に砂が入り込んだら嫌だから、袋を被せてあるけどね。砂漠でも短時間の使用なら、問題ないと思う」

「……皆さん、気を付けてください」


 会話に花を咲かせる中、不意に耳に届いたのは緊張感を孕んだセリムの声。


「何かが近寄って来ます!」


 気配を敏感に察知したターちゃんがリースの肩から飛び立ち、慌ててセリムのポーチに潜る。

 次の瞬間、砂塵を巻き上げて地中から飛び出した巨大なワームが一行に立ちはだかった。

 本来はピンク色だろう全身は砂にまみれ、鋭い牙が生えた大口を開き、獣のような唸り声を上げる。

 太さは三メートル以上、体の大半が砂に埋もれて長さは計り知れないが、見えているだけでも軽く十メートル以上はある。


「これは……危険度レベル49、グランドウォームです!」

「ギガントオーガよりも上か……。おーし、相手にとって不足は——」

「フォトンシューター」

「ない?」


 ソラが剣を抜き放つよりも早く、リースの右手から放たれる光の魔砲撃。

 収束された強大な魔力の一撃を食らい、グランドウォームは大きく怯む。


「ちょ、ちょっと! ここはソラ様の出番……」

「っ! 地中に潜るわ!」


 フォトンシューターを食らい、焼け焦げた皮膚。

 相手を手強しと見た魔物は、頭を砂地に突っ込むと、地中深くに潜行を開始する。

 長い体が最後尾まで瞬く間に地中に消え、辺りは静寂に包まれた。


「……逃げちゃった?」

「なら楽なんだけれど」

「残念ながら違います。地中から潜行して突き上げてくるはずです。皆さん、足音を立てないように注意してください」

「足音って?」


 セリムの方へと振り向くソラ。

 その時、踏みしめた砂がザリッと音を立てる。


「ダメです、ソラさん! 空気中の音はともかく、それは……!」

「へ?」


 次の瞬間、ソラは強烈な殺気を感じ取った。

 野生の感で前方に飛びこむと、数瞬前まで彼女がいた場所を大口を開けた魔物が突き上げる。

 頭突きを繰り出したグランドウォームは、攻撃が外れたと見るやすぐに頭を引っ込めてしまった。


「あっぶな!」

「何やってんのよ、アホっ子!」

「あんな感じで、地面に伝わる音を敏感に感知してくるんです。こうして喋ってる分には割りと平気なんですけど、下手に動くとまずいですね」

「で、どうするのさ!」

「余の水魔法で砂を固めてみるか?」

「いえ、サイクロンで誘き出してひき肉に致しましょう」


 実際のところ、この敵は彼女たちにとってかなりの格下。

 いくらでも料理をする手段はあるのだが。


「いやいや、トドメはあたしが……」


 ザリッ。


「のわああぁぁぁ!!」


 またも足音を立て、襲撃に遭うソラ。

 寸でのところで突き上げ攻撃を回避し、バクバクと鳴る胸を片手で押さえる。


「何やってるんですか……」

「だってぇ……!」

「この敵、近接型のソラには向いてないみたいだね。ボクにやらせてよ」


 袋を取り去り、クロエはドリルランスを背中のアタッチメントから取り外す。

 柄のボタンを押すと、ガキィ、と大変小気味よい音を立てて、三つに折れた柄が真っ直ぐに繋がった。

 真ん中から半分に折れて柄尻の方を向いていた穂先は、ガシィン、と機械音を響かせながら本来の向きに戻り、合体して本来の姿に。

 最後にクロエは頭上でグルグルと振り回し、両手で下向きに構えた。


「完成、ドリルランス改!」


 穂先が陽光を受け、光を反射して輝く。


「おぉ、すっごくカッコいい……!」

「おっし、行くよ!」


 目を輝かせるソラを尻目に、クロエはドリルランスに雷のカートリッジを挿入。

 ボタンを押すと、穂先が高速で回転を始める。


「アイツの攻撃、頭突きなんだよね。砂に覆われてよく見えないけど、相当石頭なんだろ、セリム」

「ええ、その通りです。硬い甲殻に頭部が覆われていて、それが最大の武器なんです」

「やっぱりね。面白いじゃん。その石頭、ボクのドリルランス改の貫通力に勝てるかな!」


 クロエは靴底で砂を踏みしめ、ザリザリと音を出す。

 二度のソラの失態で、潜行突撃が来るタイミングは掴めた。

 突き上げの直前、クロエは大地を蹴り、空高くへ跳び上がる。

 空中で姿勢を下向きに変え、真上に向けて飛び出して来たグランドウォームと相対すると、ドリルランスのバーニアを点火。


「食らえっ!!」


 超高速で真下に突っ込むクロエ。

 回転する穂先がグランドウォームの頭とぶつかり、一瞬の拮抗の後に装甲をブチ抜いた。


「ギギャアアァァァァァァァァッ!!!」


 穂先が深々と脳天に食い込み、肉を抉られ、グランドウォームは悶え苦しむ。


「こいつで、トドメだっ!」


 続けてドリルランスの砲門を開き、砲撃モードに移行すると、挿入されていた電撃のカートリッジの全魔力を込めたいかずちの魔砲撃がゼロ距離で発射され、グランドウォームの頭部を粉々に破砕した。

 断末魔すら上げることなく巨体を地に倒し、魔物は息絶える。

 その骸の上から飛び降り、軽やかに着地したクロエ。

 手持ちの布で得物に付着した血を拭い、ドリルランスをコンパクトに変形させると背中のアタッチメントに装着した。


「一丁上がりっ。どうだった? 新しいドリルランスの力。ま、ほんの一部なんだけどさ」

「驚いたわ。かなりパワーアップしてるみたいね」

「ホント、すっごいよ! ……あれ、あたしの出番は? 試し斬りは?」

「片は付いたな。では、先を急ごうか」

「試し斬り……」


 まだまだ先は長い。

 このような巨大な魔物の解体はかなり時間がかかってしまう。

 採れる素材が少々勿体ないが、骸は捨て置いて六人は先を急ぐ。



 彼女たちが立ち去った後、砂漠の中に一人の男の影が揺らめいた。


「キィーッヒッヒッヒ。いたよいたよぉ。さぁて、どうしてやろうかねぇ……!」


 ゴーグルの奥の瞳を狂気にギラつかせ、彼は再び、その姿を消した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ