第54羽 A級弓士
恐らくスカイクロウの魔石だろう。貫通するだけでもかなりの威力であるが、ここは矢を放った地点から1500m地点だぞ。魔石の中心をピンポイントで貫くことなんて可能なのか?
「予め突き刺しておいたなんてことはありませんよね?」
「何を馬鹿なことを言っている。木の根元を見てみろ。」
「根元?」
そこには鏃から矢先に向かって十字に4等分に別けられた、矢が2本落ちていた。
「嘘だろ…」
正確とか、そんな次元の話じゃない。
全く同じ場所に3本突き刺したと言うのか!
そんな事が可能なのか!?
「言っておくが、お前がやっていた様な魔力を込めて矢を操る様な事はしていない。魔力は硬質化に使い貫通力を上げるのに回しているのだよ。」
「はぁっ!?じゃあ本当に純粋に弓術だけで?」
「Aランクの弓士ともなればこれくらいは当然だ。むしろお前の腕でBランクなのが驚きだ。弓術だけならFランクだな。よほど精霊に頼りっぱなしだったのだろう。」
「うっ…」
「おおよそ使っている内に上達するとでも思っていたのだろう。少しは鍛錬をしているようだが、止まっている的にただ射るだけで全く実戦的でないことでもしているのだろう。」
「ううっ…」
「追い込まれれば得意の魔法か、仲間にカバーしてもらうかどちらにせよお前が弓術だけで強敵と渡り合えたことはないのだろう。」
随分と的を射た言い方だ。
確かにこれまで弓術に意識を向けたことはあまりない。鍛錬はしているがあくまで当てることを目的にしたものだ。威力は考慮に入れていないし、動きながらの弓撃の練習もしていない。
だが…逆に捉えれば弓術を上達させることが出来れば今の魔法だけでも十分に強敵と渡りあえるということだ。ならば…やるしかないな。
「シドロさんオレに弓矢を教えて下さい。」
こいつに頭を下げることになろうが今は関係ない。強くなる近道がそこにあるなら進むだけだ。
精一杯の礼儀を込めて頭を下げる。
「バカかお前は?何故オレがそんなことをしなければならないのだよ。」
………
はぁ?お前オレにコーチしに来たんじゃないのかよ?じゃあ何しに来たんだよお前?
「はっきり言って今のお前とオレとでは弓士としての格が違い過ぎる。教えることなど何も無い。その辺でのたれ死んでいろ。」
オレの中での何が切れる音がした。
「何なんだよアンタは!さっきから好き勝手に言うだけで、こっちが下手に出て頭を下げても助けようともしてくれないのか!何のためにアオイさんに呼ばれて来たんだよ!」
「お前が頭を下げたところで、それに何の価値がある。頭を下げれば何でも教えてもらえるとでも思っているのか?ずいぶんと平和な頭だな。」
「強くならなきゃいけないんだ!守られてばかりじゃいられない。1人でも仲間を守れるように。」
オレにも引けないものがある。先の戦いで自分の弱さを痛感した。ライトが死にかけたのもオレのせいだ。ライトだけじゃない、アオイさんがいなければルナの命も危なかった。とにかくいち早く強くならなければならない。
「フンっ。まずはオレが教えるに値するだけの腕を磨け。実戦の中でしか弓術は磨けない。一矢でも多く射って一体でも多く倒せ。矢を射る時はピンポイントで狙いを決めろ。一矢ごとに狙いとのズレを確認しろ。」
……
「はいっ!!!」
「言い忘れたが魔法を使うのは禁止。当然だが魔力で弓を操作するのも禁止だ。アームドベアを弓術だけで倒せるようになったら弓を教えてやってもいい。」
よしやってやる。すぐにでもシドロにオレのことを認めさせて、弓を習ってやる。覚悟しておけ。




