第42羽 窮鼠猫を噛む
ルナの限界が近い。グランドレオとの肉弾戦はお互いにかなり消耗しているようだ。時折ルナの足がもつれ転びそうになるのを何とか体勢を立て直している。
何か一つ、ルナの攻撃の決め手になる糸口を掴みたい。グランドレオの意識は完全にルナに向いているが、矢を放つのを察すれば岩槍で防いでくるだろう。
だが、それでもオレの攻撃手段は弓だ。届かないのであれば、無理矢理にでも届くようにすれば良い。
永久凍土の魔力チャージ開始。それと同時にグランドレオに向かって侵攻する。ルナとの打ち合いで使用した岩槍が至る所にあるため身を隠すには丁度良い。加えて防具による隠密のスキルにより、気付かれる事なく近寄る事が出来る。
永久凍土のチャージ完了。ルナとの打ち合いの隙を見て、岩槍の影から敵の死角へと飛び出す。グランドレオとの距離はおよそ3m。この距離であれば気付かれたとしても反応出来まい。直接叩き込んでやる。
だが放つ直前グランドレオに察知され、オレの足元から岩槍が突き出す。
「まだだ!!」
攻撃が来る事はある程度予測していた。今までの戦闘の様子から、ルナとの攻防中にこちらにも攻撃を仕掛けて来るとすれば、岩槍の一択しかない。確実に足留めさせるためには直接攻撃して来る事も分かっていた。
地面から岩槍が出現し、砂煙が舞う。オレはその中で岩槍を新たな足場にして跳躍。砂煙の中から飛び出していく。グランドレオも流石に驚いている様子で視線を空中のオレに向ける。敵との距離1m。これなら……
「グラァアァァァア!!」
今までルナに向かっていた攻撃が空中にいるオレに向けられる。グランドレオの右前足に地魔法の岩爪ができ、勢いよく振るわれる。
流石にこの攻撃はオレには耐えきれそうにないな。岩爪が迫っていく。近くで改めて見るとすごい迫力だ。こんな巨大な敵とずっと闘り合っていたルナは精神的にも強いのだと再認識させられる。時間にしてほんの一瞬。グランドレオの岩爪がオレを切り裂いた。
パキパキパキ
グランドレオの足元から濃紺の光が発せられ、四肢を完全に凍てつかせる。
「うへー、すげえ威力だな。」
グランドレオの動きを完全に止めたところで砂煙が晴れる。無傷のオレにグランドレオは驚きを隠せない様子だ。
「流石ライト。すごくリアルだったぞ。」
『ミヤビが横っ飛びする映像がよく頭に残ってるからなー』
「今の跳躍とは大分違うと思うが…」
確かに緊急回避でよく横っ飛びはしているが…
単純な話だ。オレも味わったライトの光魔法による投影分身。実体はないが、本物と遜色ない映像を見せる魔法だ。ライトの中にイメージがあれば、ライト自身でなくても投影することが出来る。岩槍を足場に上空に飛び出し、グランドレオに肉薄する映像を作ってもらった。
本物のオレはそれこそ横っ飛びで岩槍を避け、投影分身を囮にして移動した。隠密の効果と光魔法の投影分身で全く疑われることなく至近距離まで近付き、永久凍土を放った。
ここまで完全に動きを止めてしまえば…
「ありがと、あとは任せて。」
「あぁルナ任せたよ。」
ルナは胸の前で拳を突き合わせている。グランドレオは何とか脱出しようともがくが手遅れだ。次の瞬間、ルナが一瞬で移動。グランドレオを通り過ぎる。
鉛鉄乱・掌盛
ルナの拳を金色の魔力が纏い、必殺の一撃が繰り出される。オレ程度では視認も出来ず、気付いた時にはルナはグランドレオを通り過ぎていた。
「グラァ?」
だが、グランドレオは何事も無かった様子だ。不審に思ったのか、自らの身体を確認している。四肢は凍りついて動かないが、魔法は使えると分かったのか、魔力を込め出した。
「ルナ?」
「グ、グラァア……」
突如としてグランドレオの背中に抉られた様に連撃の跡が刻まれる。まるで生物が齧りとった様だ。
やはり外皮も地魔法で強化していたのか、削り取られた部分から石飛礫が飛び散っている。だが、もはや岩の装甲も形無しだ。
「ハァハァ…終わったよ!!」
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背中は抉れ、四肢は凍りつき虫の息だ。と言うかこのまま放置してもすぐ絶命するだろう。だが命のやり取りをした相手だ。敬意を払って少しでも楽に逝かせてやろう。
炸裂弓撃
『んだよ、結局面白れぇ所は出番なしかよ。』
グランドレオから火の手が上がる。矢の貫通で絶命した様だが、安らかに眠って欲しいものだ。
カラン
燃え尽きたグランドレオの体からテニスボール大の茶色の魔石が落ちて来る。今まで倒した魔物のものと比べてもかなりのサイズで光沢もあり、魔石と言うよりも宝珠と言った方が正しいかもしれない。忘れないように空間魔法に仕舞っておく。
『やったな!』
『だね。でももうルナは限界……』
前に倒れこむルナの肩を掴んで受け止める。かなりの消耗だった様でそのまま気絶してしまった。
「しばらく寝かせておこう。」
ルナを膝の上に寝かせる。この状態で射るのは画的に良くないので、効率は最悪だがそのまま回復魔法をかける。ルナの身体はボロボロで防具も所々岩槍によって破かれ、穴も開いている。
こんなになるまでオレたちを守って先陣を切り戦ってくれたのかと労いを込めて頭を撫でると気持ち良さそうにルナの表情が崩れる。
「『お疲れさま。』」




