第37羽 迷宮
ルナの力であっという間にDランクまでランクアップした。
Dランクまで到達した冒険者はダンジョンへの入場が許可される様になる。
ダンジョン内は資源の宝庫と言われ、珍しいアイテム、素材が手に入る。その分モンスターも森や渓谷などにいるモンスターとは桁違いに強い。Dランクの冒険者は多いが、危険が多いため、ダンジョンには入らない。または入ったとしても高ランクの冒険者とチームを組む。高ランクのクエストとして発注し、モンスターがいなくなった所を資源を回収する者がほとんどで、ダンジョンでモンスターを狩って生計を立てようとするのはほんの一部だ。つまりCランク以上は本当の意味で冒険者なんだ。未知のダンジョンを冒険し、強力なモンスターと戦う。得られる物も多いが全てを失う可能性もある。人生をかけた冒険だ。
最も今のオレたちにとってはCランクすら大したモンスターではないだろう。ここまで全てルナのワンパンで終わっている。ライトの撹乱もオレの援護射撃もする暇なく倒されて行くのだ。
「なぁ、これってオレたちいるのかな?」
『知らねーよ。近付く方がアブねぇよ。』
Dランク冒険者にとっては危険なモンスターが次から次へと原型を留めずグチャグチャになって行く。
テラムス遺跡ーーーーーー
それは獅子、豹などの大型の猫型のモンスターが統べる巨大な迷宮だ。切り出した岩が積まれた迷宮はピラミッドの様な物だと説明すれば分かりやすいだろう。上層に登るに連れてモンスターの強さや迷宮の複雑さが変わってくる。
過去にここには猫型の精霊を信仰する古代文明が存在した様だが、現在ではモンスターの住処となっている。
滅亡の原因は不明。過去には食器や武器なども発掘された様だが、下層階はすでに冒険者による探索が進みめぼしい物は残っていない。素材などは一定時間で復活する様なので採取クエストとして発注されることは多い。冒険者たる者珍しいアイテムや素材などを求める者が多いため上層階まで進出する者もいる。探索に向かったパーティが帰還しているかは不明だ。報告のある最高到達点は42階層である。
今回、目指すレイドパンサーは5階層、グランドレオは20階層の階層主である。
現在は4階層ーーーー
「たぁっ!!」
「ルナさん、次の角右ね…」
相変わらずのルナ無双が続いている。オレもライトもまだ一度も攻撃に参加していない。空間魔法による道案内、光魔法によるフロア全域の光源の確保と2人とも迷宮攻略に必要不可欠ではあるが、自分たちが必要なのか自信がなくなってきた。
4階層でこれだと5階層の階層主とは言え、ルナだけで余裕だろう。と、一際大きな部屋が空間探知にヒットする。
何だこの部屋?今のところ広い以外は何も仕掛けは無いようだが?
空間探知は性質上、物理的なトラップであれば問題なく発見出来る。ここまで順調に進んで来れたのも大部分がこれによるところだ。
『マリン、何か感じるか?』
『私が見る限りでは特に異常は無いように思います。ただの広い部屋としか…』
『モンスターハウスと言う可能性もありますね。』
突然話に割り込んできたのはサファ先生だ。
『迷宮内の広い部屋には魔力が溜まりやすく、冒険者が足を踏み入れた途端にモンスターが召喚されると言った話があります。何も無い場所からモンスターが形作られる原理は解明されていませんが、警戒するに越したことはないでしょう。』
『そうか、ありがとうサファ。』
モンスターハウス警戒しておいても良いだろう。いくらルナが強いとは言っても大群を相手に1人では限界がある。オレは範囲技もあるので今回ばかりは役に立てるはずだ。
オレはサファ先生から聞いた情報をルナとライトに伝える。2人ともすぐに警戒態勢に入った。
着実に部屋に近付き、目の前には今までの道から考えれば明らかに不自然な大空間が広がっている。サファのお陰で全員の準備も万全だ。
「行くぞ。」
モンスターハウスに一歩足を踏み入れる。それと同時に部屋の中に充満していた魔力が部屋の中心に引き寄せられ、規模を拡大して渦巻いて行く。
室内とは思えない強風が吹き荒れ、黒いスパークが迸る。そして数瞬の後、部屋の中心部で、爆ぜた音が響き魔力が部屋中に広がって行く。魔力が通り過ぎた後からはモンスターが出現。あっという間に部屋の中がモンスターで埋め尽くされた。
「おいおい、これ程とは聞いてないぞ……」
ざっと見渡しても100は居るだろう。スカイクロウの討伐クエストの際に小さな群れと戦った事はあるが、この数は未知の領域だ。加えて、数の恐ろしさは思い知っている。背中に冷たいものが伝う。
今ならまだ逃げられるか…いや、ここで逃げていてはダメだ。これから冒険者ランクを上げてルナを養ってやるんだ。こんな数だけのヤツらに負けていられるか!
「やってやる、行くぞパース!!雷電地……」
シュッパー
…………
……………………
何が起きた?
ただ目の前には直線に道が拓けた。先程まで蠢いていた猫型のモンスターたちは目を丸くし、口を開けたままの状態で完全に動きを止めている。
道を辿って戻って来た先にはルナがいた。オレの隣で拳を振るった後の残心を取っていた……




