第33羽 帰還
ボニ村の事件の翌日。
ルナのお婆ちゃんを埋葬し、村を見渡せる場所にお墓を作った。ルナと2人でよく遊びに来ていた場所だったそうだ。
身寄りのないルナはひとまずオレのパーティに加わったのだが…
「ねぇ、ミヤビ!頭撫でて!」
「疲れちゃったミヤビおんぶして!」
「ねぇミヤビ」「ミヤビ!ミヤビ!」
とすっかり懐かれてしまった。ハルのことは好きだから別に良いんだけどな。
今はボーグに帰っている途中だ。何故か肩車をしている。ルナの頭の上にはライト、谷間にはミツキだ。と言うかこれだけの人数なのに縦に一直線に並ぶというよく分からん状況だ。
「そう言えばルナってステータスカード持ってるのか?」
「んー?何それ?私そんなの持ったないよ!村で持ってる人も居なかったんじゃないかな?」
「じゃあ街に着いたら作らないとな!ボード見るのも楽しみだな!まだまだルナも強くなると思うぞ!」
「本当に楽しみ!あっミヤビ!ボーグってあれ?」
『おぉー、あれだぜ嬢ちゃん!』
「お前らの視力で言われてもオレには分からん!もうちょっと近づいてから言ってくれ!」
こんなやり取りをしているうちにボーグについた。ライトは鳥籠に戻し、ミツキには姿を消しておいてもらう。
ルナはステータスカードが無かったがオレの連れという事でザックが通してくれて、入場。1日ぶりにボーグに帰宅した。日帰りの予定だったので宿とギルドには伝えてないから心配してるかもな。
まずはギルドに報告だな。ステータスカードも作らなければならないし、最優先で向かう。まずはフィーナさんを探して…
「ミヤビさん!!!!!!生きてたんですね!!うわーん、良かったです。帰りが遅いから心配してたんですよ!」
「あぁ、フィーナさんただいま。遅くなってごめんなさい。」
「ぐすっ、良いんです。私が100kgも運ばせてしまったのがいけないんです。いくらミヤビさんでも常識的な量にしておくべきだったんです。」
「物資の量は関係ないから!それよりマクスタット支部長を呼んできてくれないか。ボニ村のことで急いで伝えたい事があるんだ。」
「支部長?分かりました。ちょっと聞いて来ますね。」
数分後、フィーナさんはマクスタット支部長を呼んで戻ってきた。昨日の事件の顛末を話し、すぐにボニ村へ兵団を送ってもらうように要請した。
初めはマクスタットも真面目に取り合ってくれなかったが、オレとルナの説得により兵は出せないまでも、一度ボーグお抱えの冒険者パーティを向かわせてくれる事になった。
ヴァルザーグ兵たちは全員を縛り、小屋に詰め込んであるため自力で逃げる事は困難だ。フランに引き渡されれば、簡単に口を割るとは思えないが、ヴァルザーグのフラン、レイナードへの侵攻は国際問題として扱ってもらわなければ困る。後の処理は国の仕事なのでマクスタットに任せるとしよう。
「フィーナさん、ありがとう!あと、この子のステータスカード作りたいんだが、お願い出来るか?」
ちびっ子さからオレの陰に隠れていたルナがひょこっと顔を出す。可愛いなコイツ。
「な、何者ですか?その子は?」
「ボニ村のルナだ。訳あってウチのパーティに加わることになった。よろしく頼む。」
「フィーナちゃんって言うんだ!私はルナ!よろしくね。」
「よく分かりませんが、よくステータスカードを作成するパーティですね。じゃあ申請書お願いします。」
「はいよー」
サラサラっと名前を書き終え、ステータスカードを発行してもらい、ルナに差し出す。
「ルナ、これに魔力を流してくれ!」
「何それ?どうやるの?」
「はっ?お前魔法普通に使ってたじゃん!強化魔法!」
「あれ?ミツキが強くなったルナを想像しろって。魔力なんて考えたことないよ?」
「無意識ってことか?まぁそれなら取り敢えず持ってみれば出来るんじゃないか?」
ルナがカードを受け取ると、すぐにステータスが表示される。おいおい魔力垂れ流しってことか…
兎も角、ステータスが表示されたので確認する。
ルナ 19歳
獣人族 女
職業: 拳闘士
レベル 10 未分配能力値: 20
Rank:G
HP 480/480(+360)
MP 189/248(+186)
攻撃 364(+273)
防御 268(+201)
魔攻 69
魔防 86
敏捷 288(+222)
スキル
強化魔法
契約精霊
ミツキ
よし何からツッコんで行こうかな。
まずステータス上昇値だ。何だこれ?
おい、強化魔法チートだろ!!元のステータスの4倍じゃないか!物理系のみとは言え数値がおかしい。
加えて、未分配能力20。そうだよな。ステータスカードの存在すら知らなかったんだもんな。割り振られてる訳ないよな。
ステータスボードは確か攻撃や防御等は+5だった気がする。元の数値が上がるから、例えば攻撃に極振りの場合+400されると言うことだ。現時点でエディルノと張り合っていたルナだが、これが有ったらワンパンだったんじゃないか?
そして、極めつけはこれだ…
19歳……
……
……
19歳!!!!!!!!!!!
異世界転移で若返ったオレより年上!!!!
「ルナさん?あなたってそんな大人だったの?」
「え?多分ミヤビよりは年上だと思うよ?」
ルナの顔は何を当たり前の事を?と訴えて来ている。
何と言うことだ。こいつ合法ロリだったのか。これまでの道のりで感じていた罪悪感は何だったのか…身寄りも何も自立しているじゃないか!勝手にウチで引き取るつもりだったぞ!
「取り敢えずルナ、これは隠しておこう。文字が見えなくなるようにイメージしてみろ。」
「?うん、分かった。」
こんなもの見た日には、フィーナさん寝込んでしまいそうだ。スカイクロウ50羽如きであの動揺だったんだ。これも隠しておこう。そうしよう。まぁ見られたところでフィーナさんなら黙っておいてくれるだろう。前回、空間魔法を見た時も黙っていてくれたし。
何はともあれ無事にステータスカードの発券は終わった。フィーナさんに礼を済ませて次は宿に向かう。クレアさんも心配している事だろう。
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「ミヤビちゃん帰って来たんだね!良かったよ、長期のクエストになるなんて聞いてなかったから心配してたんだよ。夕飯も準備してたんだからね。」
「心配をおかけしました。色々あって帰りが遅くなりました。オレは怪我もしてないので安心してください。」
見た目はボロボロだけど、身体は元気だ。余計な心配は掛けたくないが…
「何を言ってるんだい!そんなボロボロで、また無茶したんだろう!冒険は生きて帰って来なきゃ意味がないんだよ。命あっての物種だろ!そんな馬鹿はウチの客には要らないよ。」
クレアさんは本気の目だ。心なしか震えているようにも見える。気を遣わせまいと思ったが、余計な事だったようだ。
「ごめんなさい、村が襲われていてどうしても見捨てる事が出来なかったんです。」
「それで助けに入ってその様かい。人助けは正しい事かも知れないけど、思い上がるのも大概にしな。1人の力で何が出来るって言うんだい。自分を大事に出来ない人は他人を救う事なんて出来ないんだよ。」
「ごめんなさい、心に留めておきます。でも大丈夫ですよ。オレは1人じゃないし、信頼出来る仲間も出来ましたから。」
ルナとライトは少し誇らしい様子だ。2人とも一緒に死線を越えた仲間だ。オレなんかよりも全然強い。それに何より…オレには個性豊かな、ちょっと抜けた?頼もしい精霊達がいるしな。
『何か失礼な事考えてませんか?』
「はぁ、もう良いよ。くれぐれも無理はするんじゃないよ。あんたはウチの客なんだから。客はみんな子供みたいなもんなんだよ。」
クレアさんは渋々ながらも許してくれた。厳しいながらも優しい人だ。
「ミヤビ?泣いてるの?」
「へ?」
気がつくと頬に熱いものが伝う。以前にも似たような感覚を味わった事がある気がする。少し胸が締め付けられるような感じがした。
「あれ?どうしたのかな?少し嬉しくってさ。心配してくれる人がいるのって。」
クレアさんに本当の母を重ねたのかもしれない。地球に帰って墓参りしないとな…
「ほらほら!今日も泊まってってくれるんだろ?子どもみたいとは言ってもタダじゃ泊めないからね!そっちの子はどうするんだい?」
「ミヤビといっ…「別の部屋でお願いします。」」
「えー、なんでー?」
良いのだ。有無を言わさず別部屋で良いのだ。例え年齢的には問題なくてもオレの中のモラルが必死に本能を止めている。
「はいよ、じゃあ2部屋準備しておくよ。」
「えー、やだー!」
ルナはふくれっ面だがクレアさんは華麗にスルーしてくれた。流石はオレの第2の母だ。息子が過ちを犯さないように察してくれている。
「それはそうと他に顔出しておく所はないのかい?いつものお姉ちゃんには報告したのかい?」
「あっ!アオイさん!」
「だれ?それ?」
ヤバい、アオイさんに報告してない。心配してくれているとは到底思えないが、あの人に余計な手間を掛けさせると後々面倒そうだ。っと言っても、アオイさんとは直接連絡は取れないから…
取り敢えず武器の補充がてらレシッドさんの武器屋に行くか。
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「こんにちは!レシッドさん!」
「あれ?今日は来たんだ。昨日来なかったのに。」
そう言えばレシッドさんの店にも毎日の様に来ていたな。
「昨日は1日がかりでクエストに…それよりアオイさんは来てますか?」
「アオイ?昨日から見てない。何で?」
「いえ報告しておきたい事があってご存知ないなら大丈夫です。新しい武器と防具を見繕ってもらえますか?」
「また防具壊したの?で、そっちの子は?」
「この子は新しいパーティメンバーです。この子の分も一緒にお願いします。」
「ふーん、毎度。」
レシッドさんはオレとルナの新装備を選び出した。クエストの違約金は保留になっているので、金銭的には余裕もある。今後のためにも、少し良い装備を買っておきたい。
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時間は少し戻りーーー
ボニ村民家




