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第31羽 油断


「お前たちは手を出すなよ。」


燃え盛る炎の中、エディルノの指示が飛ぶ。周囲の兵士たちは皆でオレたちを囲む。逃しはしないと言うことだろう。


戦闘に入る前にやることがある。オレは矢をつがえて魔力を込める。そしてルナに向かって射る。


「命乞いのつもりか?味方に攻撃するなど!」


その矢は着弾と同時に砕け散り光の粒子へと変化、天使を模ってルナを包み込む。



「天使の抱擁」




光の粒が輝き出し、ルナから流れ出ていた血が止まり、顔に生気が戻る。



昨夜、宿で契約をしたアユカの力だ。回復魔法は本来は術者が対象者に魔力を分け与え、組織の回復、魔力の回復に使うもので、有効範囲は術者のすぐ近くのみであったが、戦闘中にそんな余裕はないと、いつもの如く弓矢に組み込んで見た。


雷電地帯ゾードライトニングの様に矢が刺さった周囲を巻き込む形でも良かったのだが、回復量を考えると範囲を狭くし、対象を絞った方が効率的であった。


矢が砕けるようにし、天使のエフェクトを付けたのはただの趣味だ。魔法はイメージなのだ。



「あれ?痛く…ない?」




ちなみに、状態異常回復の効果も付けた万能な回復魔法だ。状態異常ではないがルナは冷静さを欠いていたからな。さてルナも回復し、落ち着きも取り戻したことで本番と行こうか。



「奇妙な魔法を使うな!お前も契約士か!戦闘では弱そうで使い物にならなさそうだが、あのモンスターの使役といい面白い。お前も部下に加えてやっても良いぞ。」


「お断りだよ。ウチのライトも、ルナもお前らなんかにやらねぇよ。」




「ならば、全員まとめて死ぬだけだな。」




「ライト力の限りあいつに攻撃を加えろ!オレが援護する。」


『おうよ!危なくなったら直ぐに逃げろよ。』


今、オレたちには有利な点が3つある。まず1つ目はヤツは完全にオレを格下だと見下し油断していること。2つ目は部下に手を出さない様に伝えているので2対1で数の有利はこちらにある。3つ目はオレを回復魔法使いの支援薬だと思っている事だ。


まずはライトの攻撃の隙間を縫って普通の矢で攻撃する。


「はっ、何だこの攻撃は?」


思った通りにライトの攻撃はしっかり防ぐがオレの矢は片手間に防いでいる。何本か刺さっているが気に留める様子もない。


ここまではブラフだ。

『ライト上手く避けろよ!』

ライトの攻撃に気を取られている隙に一撃必殺だ!炸裂弓撃を放つ。


「はっ、こんなもの…っ!!」


今までの攻撃と比べ異質の物を感じ取ったのかエディルノは今回は剣で正面から受ける。


『ナメんな!!』


炸裂弓撃アローバーストは並みの威力ではない。エディルノの持つ剣は真っ二つに折れ、矢は貫通して行く。



矢の通過した跡からは炎が噴き出し、燃やし尽くしていく。


「クソっ!」



剣で防がれ、射線が逸れたのが影響したのだろう。剣は貫通し、右腕は掠めた。だが急所は外した様だ。



「今だライト!ありったけの攻撃を叩き込め!」


延焼を始めた右腕を庇いながら、折れた剣でライトの攻撃をいなす。



やはりかなりの実力者だけあってしぶとい。だが、この調子なら!




「調子に乗るな!来いドルタワー!」


エディルノの絶叫と共に怪物が姿を現した。頭部からは角が3本生えて角竜のようだ。全身からは赤い禍々しい魔力が渦巻いている。大きさは2メートル程だが、厚い外皮に太い四本脚。実際にはもっと大きくみえる。質量はかなりの物だろう。



「こいつは…」

『召喚魔法です。術者の魔力で精霊自身を実体化。この魔力からすると、かなりの魔力消費のはずです。そう長くは持たないと思いますが…』

サファの解説に力が入る。実際に目の前にいるのは今までのモンスターなど比べ物にならない化物だ。




エディルノが精霊に跨がる。

「お前らの様な雑魚に奥の手まで使うことになるとは思わなかったよ。一瞬でバラバラにしてやる。」




そう言うとエディルノを乗せたドルタワーは地面を抉りながら突進をしてきた。


『ボサっとすんな』



寸前のところでライトがオレに突進し、進行ルートから逸らしてくれる。


突進の後には災厄の通り道が刻まれていた。




「さて3回戦を始めようか。」

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