第3羽 あぶない精霊につかまってみた
マリンの説明が続く
『精霊に意識を集中。そして使いたい魔法をイメージする。それが魔法の基本です。込める魔力、そしてイメージによって魔法の効果は変わってきます。もちろん自身の力以上の魔法はイメージが出来ていても扱えませんのでご注意下さい。』
なるほどな。自分の扱える魔法は事前に把握しておかないといけない。いざと言う時にスカになったら悔やんでも悔やみきれない。
ん?そう言えば先の説明で精霊によって扱える魔法が違うと話していた。そうなると…
「一つ聞きたいのだが、ルリィ以外の者、例えばマリンは炎以外の別の魔法が使えるのか?」
『あら私のことが気になりますか?私の魔法はルリィとは違うものですし、他の姉妹たちも扱えるのは別の魔法ですよ。』
そうなると12頭いるから12種類の魔法が扱えるのか?いやイメージや組み合わせによってはそこから更に増えることも…
『それぞれが扱うものは属性や概念と言った方が分かりやすいかもしれませんね。ルリィの魔法は炎熱魔法。炎を出したり操ったり、物質の熱を操る属性です。あとは貴方のイメージ次第で魔法の可能性は無限に広がります。』
『ただし、残念ながら今の私たちは貴方をグラウディアに運んで来て治療をした影響でかなり弱体化しています。こうして話が出来る程の力が残っているのも私のみ。もし貴方が私どもと契約をして魔力を提供して貰えれば力が戻ってくるかもしれませんが…』
ふむ元はと言えばオレを助けてくれたのが原因であれば断り辛いな。しかし、契約という言葉には重みがある。仕事でもそうだ。ここで簡単に決めてはいけない。
「契約することで何かデメリットはあるのか?」
『むっ、用心深いですね。強いて言うなら2点。魔力を大量に消費することと契約出来る数に上限がある事でしょうか?契約が行える精霊の数は個人の資質に依ります。そもそも契約を行えるのも資質のある者だけです。複数の精霊と契約出来るものはこの世界でも僅かです。』
おいおい…さっき魔法を使った時の脱力感もあった。魔力を大量にという事はかなり体力を使うんじゃないか?その前にオレに契約出来るだけの資質があるのか?それも12枠だぞ?
ここは慎重に行くべきだ、うん。出涸らしになるまで力を絞り取られそうだ。生命の危険をビンビンに感じるぞ。
「すまないが、即答はでき…
『も・ち・ろ・ん!貴方を助けたのが原因で私どもは力を失っている訳ですからそれ相応のお返しは頂けますよね?全員とは言わないまでも何人かとは契約を結んで頂けますよね?ね?ね?』
あれ?さっきと聞いてる話と違うよね?自由に生きて良いって、好きなように生きて良いって言ってたよね?
『私たち頑張ったんですけどね~死にかけの貴方を運び出して、回復。』
「はい、そうですよね。」
『雨で汚れた貴方を洗って綺麗にさせて風邪をひかないように乾かし…』
ヤバい何か変なスイッチ入ってる?
『異界に転送の影響で少し幼くなった貴方にブカブカのスーツのままでは可哀想だからと服を着せて…』
何この子ちょっと怖いよ?それに他の子たちも12頭の蝶、皆が眼前に迫ってきている。
『この世界で生きて行くために魔法の使い方まで教えた。その上で何もしないと言うのは些か薄情ではありませんか?』
「はい、その通りでございます。ただ僕に皆さん全員と契約出来るだけの資質があるかが疑問であります。」
そうなのだ、1頭だけではないのだ。12頭いるのだ。複数契約はこの世界でも限られた者だけ…それをついさっきまで魔法を使った事もないオレにやれと言うのはそもそも無理なのではないか?
『つまりその問題が解決すれば皆と契約を結んで頂けると?』
「は、はい。」
『うふふ、ならば問題ありませんね。ではまずはこの子と契約を結んで頂きましょうか。』
マリンがそう言った後オレに近付いてきたのは透き通った透明の翅を持つ蝶だ。