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第28羽 少女

ボニ村に向かう道中は非常に穏やかな雰囲気だった。天気も良く冒険日和だ。ライトも自由に飛び回れて楽しそうだ。順調に進みボニ村まで残り1/4程の道のりとなった。



『ミヤビあっちの方に小川が流れているようですよ。』


「本当かマリン。少し休憩していくか。」



険しい山道であるが、出てくるモンスターはF〜Gランク。捕捉したところから弓で射って倒している。ライトの出番もまだなしだ。


周りにモンスターもいないし、マリンの見付けてくれた小川でクレアさん特製のサンドイッチを食べる。ライトの分の干し肉も街で仕入れて置いたので一緒に食べる事にした。



『気遣いはありがてぇが、自分で狩りをせずに飯にありつけるのは何か落ちつかねぇな。』



元々、野生で生きて来たライトなので要らぬ気遣いだったようだ。次の食事からは自分で採ってくるらしい。街中では干し肉で我慢してもらう。



ちなみにマリンたち精霊は魔力で生きているので食事は必要もしない。食べる事は出来ると話していたが、想像できない。クエスト報酬の花の蜜ならあるいは…と思ったのがこのクエストを受けたもう一つの理由でもある。



さて休憩も済んだし、出発するかと腰を上げたその時、


ガサッ



茂みが揺れる音がした。茂みの中なので詳しい形が把握出来ない。オレとライトはいつでも戦闘が出来るように構える。


『ライト行けるな?』『あぁ、いつでも』


敵が出てくるのを今か今かと待つ。


「わっとと、った。」

ドテっと茂みから女の子が出て来て派手に転んだ。

『…………』『…………』

「あれ?見たことない人だ!何してるのこんな所で?」

「あぁボニ村まで物資の運搬を…」

「ウチの村に?じゃあ冒険者さんだ!遠くまでお疲れ様です。私はルナ。よろしくね。」


ルナと名乗った少女は丸っこい耳と尻尾と金髪が特徴的な女の子だ。ネズミ?いや毛色から察するにハムスターの獣人?身長は140cm位とちびっこであるが、凶悪なものが2つ付いている。



「オレはミヤビ、こっちはライト。ボーグで冒険者をやっている。」



「よろしく!ミヤビってモンスター連れてるんだ珍しいね。それに周りに綺麗な蝶々がたくさん。友だち一杯なんだね。」



!!!


「見えるのか?」

「うん。精霊さんでしょ?色んなところに居るけど、こんなに沢山連れてる人は初めて。あなた達のお名前は?」


『この子もかなり魔法の資質がある子のようですね。ミヤビ、あまり私共のことは話さない方が…』


「あはは、そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。私もミツキって言う精霊の子と一緒だもん。」


ヒョコッとルナの服の胸元から精霊が顔を出す。つぶらな瞳が可愛い、真っ白な体毛の動物…

「これはイタチ?」


『誰がイタチだ!オレ様はオコジョだ。ウチのルナに手をだそうってんじゃないだろうな。』

「こらミツキ初めての人に失礼でしょ。しっかり挨拶しなさい。」


ミツキがペシッと頭を叩かれる。若干嬉しそうにして居るのが気持ち悪い。



お互いの自己紹介が終わり、ふと気になることがあった。


「そう言えばルナは何でこんな所に1人で居るんだ?」


精霊を連れており、何かしらの魔法の資質があったにしてもこんな所に小さな女の子が1人でいるのはおかしい。


「ウチのおばあちゃんが病気なの。薬はあるんだけど食べ物がね。村の食べ物は狩猟で手に入った肉とか魚ばっかりで、山道には山菜とか果物がなる木もあるから採りに来たんだよ。」



おばあちゃん娘なのか、感心だな。確かに運んで来た物資の中は穀物や野菜が中心だった。


「それくらいなら手伝えるかも知れないな。もし良ければこの辺りを案内してくれないか?」

「えっ、良いの?助かったー果物って高い所になるから落とすの大変だったんだよね。」


と籠一杯の果物を見せてくれた。見た目は完璧にりんごだ。色も形もそうだが…



移動の道中でルナの話を聞きながら移動した。

曰く、ルナは生まれつき精霊の姿、声が認識出来た。その事で村の人からは気味悪がられて、友だちは出来なかった。物心ついた頃には両親はおらず、病弱な祖母と2人で暮らしていた。


「でもルナは精霊さん達といつもお話ししてたから寂しくはなかったんだよ。ルナよりもおばあちゃんの方が今まで仲の良かった人達も離れていって本当にルナと2人だけだったの。だからおばあちゃんの為に一杯頑張ってるんだ。」



太陽のように光輝く笑顔で笑う子だ。村人から疎まれ、孤独を感じて来たであろうに、そんな事など無かったかのように一片の曇りもなく希望に満ちた笑顔だ。


「でもね、最近精霊さん達が何だか騒がしい?落ち着かない様子なんだよね。この辺にいる精霊さん達も少なくなって来て…何かあったのかな?」



「そうなのか?この辺は初めてだから良く分からないが特に危険なモンスターも居なかったし、道中誰とも会わなかったがな?」



「まぁ、田舎の村だからねー商人も冒険者も滅多に来ないから人には会わないかも。名物と言っても花の蜜位だし、あとは遺跡がある位かなー」



「ふーん、遺跡ね。おっ、果物の成る木ってあれか?」


話の途中であったが果物を見つけてしまった。木になる赤い果実はまんま林檎だ。


「じゃあ落とすぞー」

「はーい、よろしく!」


オレは矢に魔力を込めて縦横無尽に動かす。まだ難しいが格段に矢のコントロールが付くようになって来た。一矢で5個落とすことができた。もちろんヘタの部分を狙っているので果実に傷はない。


「次いくぞ!」

「はーい」


5射ほど繰り返して30個の果実を手に入れた。

「ミヤビすごいね。でもこんなにどうやって運ぼう?籠はもう一杯だよ。」


「あぁ、それなら」


ヒュン


「わわっ、消えた!何今の?」

「これはマリンの力で、別の空間に果物を入れておいたんだ。」

「へぇーマリンちゃんすごいんだね。」


こんな感じで果物の回収を進めながら、ボニ村に向かった。天気が怪しくなって来たので少し急ごう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー




村まで後少しと言ったところで突然ルナが呟いた。

「何か変だよ?精霊さん達が騒がしいし、それにこの臭い。」

「あぁ、オレも感じる。何かある、急ごう。」



村までの最後の山を登りきった所で眼前に信じられない光景が広がった。




「村が燃えてる……」


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