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第2羽 魔法をつかってみた

夢か?そうか夢だな。

とても日本とは思えないし、蝶が話しかけてくるはずもない。心なしか背も縮んでいる様な気がするし、スーツを着ていたはずだが、冒険者風の服に着替えている。


1週間も自宅に帰って寝てないんだ。きっと会社で寝落ちしたんだな。作業内容は覚えているから起きてから打ち込めば、寝てしまった分は取り戻せる。その為にも早く起きねば、取り敢えず頬をつねってみる…普通に痛いだけだ。夢からは覚める様子はない。


痛みが足りなかったのか?少し怖いが拳を作って殴ってみる。


ボゴッん!!右頰に見事にストレートがきまる。あれ?痛い。すごく痛い。右頰が腫れて、鼻血まで出てきた。



『何をやっているのですか?』

空を見上げると翡翠の蝶が舞っている。同じ光景をつい先程も見た気がする。




『言っておきますが、これは夢ではありませんよ。正真正銘の現実です。』

近付いて来た。心なしか少し動きに怒りが満ちている気がする。





『貴方は生命の危機に瀕しておりました。たまたま異界への越境中に居合わせてしまった私ですが、あのままではあまりに惨めだったので僭越ながら貴方の生命を救わせて頂きました。貴方の居た世界では私も十全に力を発揮出来ませんので、私の世界ここグラウディアにお呼びし治療を施しました。異界に転送した影響で貴方自身の力も使ったので少し幼くなっています。』



何やら訳の分からないことを言っている。異界?グラウディア?聞いたことがない。オレの中にこんな厨二心が残って居たとは…





『貴方を連れて来た影響で私も力を多分に失ってしまったと言うのに、それなのに貴方は私を無視して、折角回復させた身体を自らの手で傷付けるなんて何を考えているのですか』

やっぱり夢だな、100%夢だ。そんな都合の良い話がある訳がない。それに薄ら記憶に残っている身体の感覚からして、あの重症で助かるはずがない。それこそ魔法の様な力があれば可能かもしれないが…



『聞いてますか?聞いてないですね?無視しないで下さい。いい加減悲しくなって来ました。』

羽ばたきに元気が無くなって来た気がする。状況を整理する為に話だけでも聞いてみるか。



「えーと?あなたが助けてくれたんですね。ありがとうございます。」



『ようやく話を聞いてくれる気になりましたか。えぇ、私は精霊のマリンと申します。』





うん、精霊とかマリンとか設定としてはファンタジーっぽいな。まずはどんな世界感なのか聞き出そう。





「マリンさん。オレは山田雅と言います。ミヤビと呼んでください。申し訳ないのですが、この世界は始めてなもので色々と説明して頂けますか?」





『そんなに畏まらずに、私のことはマリンとお呼び下さい。それではこの世界について簡単にお話しさせて頂きます…この世界グラウディアは精霊と人族をはじめとした様々な種族、モンスターが共生する世界です。人々は精霊に魔力を捧げて魔法の力を借りて生活しています。精霊も魔力が無ければ、力が発揮出来ないので持ちつ持たれつの関係ですね。』


コテコテの設定だな。子供の頃に同級生がやっていたゲームの様だ。憧れてはいたものの母に強請る訳にもいかず、オレとは縁のないものだったが…



『精霊の中にも人々に友好的な者や信仰、畏怖の対象とされる者など色々といます。精霊によって扱える魔法も違います。精霊と契約し多大な魔力を提供することで戦闘用の強力な魔法を扱う者もいます。』



戦闘?何やら物騒な話になって来たぞ?



『もちろんこの世界でどう生きるかは貴方次第です。戦いで名を馳せるも良し、冒険に生きるも良し、自給自足のスローライフを送るも良し。折角助かった生命です。自由を謳歌して下さい。』



MMO RPGと言うものか。ふむ確かに夢にしろ息抜きには良いだろう。仕事忘れられる時間も大切だ。現実では味わえない生活が出来るかもしれない。それに絶対にあちらの世界に戻らなければならない理由もないしな…



「なるほど。ありがとう、マリン。取り敢えずこの世界で生きてく上で魔法は必要不可欠と言うことか?オレは魔法を使った経験はないんだが、どうすれば良いんだ?」


『そうですね、まずは実際に使ってみるのが一番でしょう。手始めに私どもの魔法を使ってみましょうか?』


「私ども?」


『先ほどからいるではないですか。それでは紹介しましょう。私の姉妹たちです。』


マリンの話と共に、残りの11個の光球がオレの周囲を漂いだした。輝きを増し、周囲を顔を照らしてゆく。そして、光が解けてゆく。現れたのはマリンと同じ形だが、深紅、黄金、桜、濃紺、朱、白、碧、黒、若葉、蒼…あれは透明か?の色の翅を持つ蝶だ。



その中の一頭、深紅の翅を持った者が近寄ってくる。


『訳あって今貴方とお話が出来るのは私だけですが、魔力さえ提供してもらえれば魔法は使えます。この子はルリィと言います。それではルリィに意識を集中して下さい。そして、あそこの岩に向かって炎が飛んで行くことを頭の中にイメージして下さい。危険なのであまり大きな炎はダメですよ!』


オレは岩に飛んで行く炎の球をイメージする。するとルリィの身体から小さな炎球が飛び出る。それと同時に身体から力が抜けるような感覚がする。


炎球はそのまま真っ直ぐに飛び、岩にぶつかったところで消えた。当たった場所は少し焦げて黒くなっている。



おぉー本当に魔法が使えた!


火種も何もない所から炎が生まれる不思議な感覚だ。



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