表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

書き始めた頃からおかしな事が起こった。これは一体何?

作者: 神名代洸

僕は物を書くのが大好きで、…でもプロじゃない。アマチュアと言っていいものかもわからない。その程度の物書きだからだ。

そんな僕が面白半分で投稿した小説が現実になるなんて思いもしなかった。

その内容はこうだ。


ある一般家庭のごく普通の家族が集まっている時、それが起こった。

みんな寝ていたのだ。夜だから。

その真夜中にキーッと何かを引っ掻くような音が聞こえた。それで目が覚めてしまったのだが、今僕がいるのは二階だ。

二階なのになんで音が聞こえたのかって?深夜の音は響くのだ。

だからわかっただけ…。

にしても気味が悪い。

僕もそう思った。


僕はユックリと階段を降りる。

最後の一段まで来たところで足が止まった。

ガタガタと音がするからだ。

風の音かのかもしれない。でも違う気がする。怖くなったがユックリと足を出した。

一歩、また一歩と歩くと音がだんだん大きく聞こえてくる気がする。



そこまで読んでビクッとした。

小さな音に反応したのだ。

「ったくなんなんだよ〜。ビックリするじゃないか。」

独り言を言う僕。

書いてた物語が途中で止まる。

勢いでここまで書いて来たのだ。最後までこの勢いで書きたかった。

でも勢いは止まってしまった。

後ろを振り向くも何もない。そう、僕は一人暮らしだ。だから誰かの足音とかが聞こえてくるわけがない。唯一聞こえてくるのはテレビから流れてくる音楽や、バラエティ等。

賑やかな笑い声が部屋に響く。


「っくう〜。さてと続きを書くかな。」

背伸びをしてからそう呟き、ペンを手に取る。今時携帯から書くことをしないのかと言いたいのかもしれないが、僕はこの方法が好きなだけだ。ペンの匂いが創作意欲を掻き立ててくれる。

それでも今回は違った。

全く頭に浮かんでこないのだ。

「参ったなぁ〜。」

今日中に書き上げて投稿したかったのに…。

諦めて別の物語を書いてみることに。

気分転換になるかもしれないし…。

書きかけたペンが進まない。

そちらも止まってしまっている。

ガタン!パサッ!!

その音は何かが落ちる音のようだ。

うず高く積まれた本が崩れ落ちていた。僕は何も触ってないよ。きちんと積まれていたはずなのに、雪崩でも起きたかのような崩れ方だ。

「よっこいしょ。」

そう言いながらため息をつきつつ片付けの作業に入った。

すると今度はカリカリカリと何かを書くような音がした。

この部屋はなんだ?

霊でも出るのか?今までそんなこと一度だってなかったのに…。

手を見ると両手共震えているではないか。

そんなに怖かったのかと人ごとのように感じている僕はなんなんだろう…。

それでも僕はペンを手にして書こうとするも震えて利き腕が思うように動かない。

もう片方の手で利き腕を押さえ込んで今無理やり書いている。



僕が今いるのは一階の廊下。

音がしたのはキッチンの方のようだ。

トントントンとリズミカルな音がする。

そう、まるで誰かが台所に立っているかのような音だ。

僕はそっと音がする方は足を向けた。

そしてキッチンを見たが誰もいなかった。

その時ふと後ろが気になった。誰かいる気配がした気がしたのだ。

怖かった。でも…。

そこで僕が目にしたのは。



そこまで書いてまた止まる。

何故なら…そう、目の前にあり得ないものが見えたから。

それは、【目】だった。

目だけが見えている。

しかも片目だけ。

何故?僕にははっきり言って霊感の類もない。それなのに見えたって…。焦る僕。

徐々に後ろに後退していく。

すると目もこちらへと動いてくる。

ヤバイよヤバイ。

《逃げなきゃ。》

とっさにそう思った僕はその場から立ち上がり、逃げ出すことにした。でも何処へ?

友達とかは…圏内にはいない。その場所を選んだのは僕だから…。それでもすがるしかない。

連絡のついたダチに事情を説明して泊めてもらおうとしたら、受話器の向こうで女の声が聞こえた。

「どうしたの〜?ねぇ〜、遊ぼうよ。」

その言葉を聞いた僕は無意識に携帯の通話ボタンをきってしまった。その時は何も思えなかったのだ。この時間、ダチに彼女がそばにいてもおかしくない。逆にいない僕の方が可笑しいのかもしれない。そう思ったのだ。

でもどうしよう…。

あとは街中にあるカプセルホテルにでも行くしかない。

1人でラブホテルに入る気はしないし、普通のホテルは予約しないと多分入らないだろうと冷静に考えてのことだ。

鍵と財布を持って、着の身着のままでカプセルホテルにやって来た僕はチェックインするとすぐにベッドに潜り込んだ。

何だったんだ?あの【目】は…?

今も体が震える。

そのての小説を書いたからか?ならそういうのばかり書いてる人は体験とかしないのか?聞いたこともないからわからない。

自分の部屋に帰るのが怖い。

でも明日には帰らないと。

ここで、いや、ここからでも携帯からなら投稿は可能だが、原本がないとわからない。なので、ここでは新しい話の構想を考えて時間を潰すことにした。そして、徐々に眠気が襲い、僕はそのまま眠りについた。


翌日、朝早くにチェックアウトし、自宅へと急いだ。

玄関の鍵を開け、恐る恐る中に入るが何も変わったところはない。昨日のままだ。

そこで僕は最後まで一気に書けあげようと机の前に座った。



僕が目にしたのは黒く長い髪の頭だった。後ろを向いたまま首から下はない。その後頭部がパカっと口を開けたのだ。

その驚きといったらない。

脳味噌がはっきりと見える。

気持ち悪い。

頭蓋骨はどこにいってしまったのだろうか?

わからない。が、気を失いそうになるのを必死になって我慢する。

「わぁ〜!」

僕は家族の元に走って逃げる。

皆まだグッスリと眠ったままだった。

僕は何度も揺さぶって起こしにかかる。時間にしてどれくらい経ったのだろう?気がつくと怖いものの姿は消えており、両親が何事かとねむそうな顔をして僕を見ていた。

僕はついさっきあった事を両親に話して聞かせた。信じてない顔をしているが、言葉は違った。

「怖かったな。もう大丈夫だ。一緒に寝よう。おいで?」父さんはそう言って布団をめくって僕を呼んだ。

僕は年甲斐もなく甘えたくなり中に潜り込んだ。そしてひょこっと顔を出した時見たものを絶対に忘れないだろう…。

それは…。



そこで物語は書き終えた。

ようやく終わった書き込みにホッとした僕は油断していた。僕にもおんなじことが起きないわけないのに…。

《目》が、また見えた気がした。

視界の隅に…。

またあの恐怖の始まりかと僕は身構えたが《目》はその場から動かない。

僕は自身の目をこすって再度見た方向を見て見たが今度は何もなかった。

ホッとした僕の目の前を《目》が通り過ぎていた。怖くなって固まってしまっていた。

「今度もかよ。」と呟いたが、自身が聞いていたのかはわからない。ほんの呟きだ。

僕は今度見たら書くのをやめようと思ったが、書きたい欲求に勝てるかはわからない…。

だから今日もきっと見るのだろう…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ