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生徒会での…  作者: 藍井 湊
第0章
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第9話 喧嘩⁉ 

結衣の豪邸の最寄りのバス停からバス、電車と乗り継いで、約一時間。

今は約6時だ。


後数分で家に到着する。

とりあえず、何とか穏便に済ませる方法はないか考えていた。

そんなことを考えていると、もう家のすぐそこまで来てしまった。


歩きながら、軽く窓から家の様子を確認しよう。と思って、家の中を一瞬覗いた時、少しさみしげな表情をした妹と目が合ってしまった。

ヤバい。そう思ったが、今更どうすることもできない。


そう思って、玄関を開けた。

「ただいまー、ってうわ」

玄関を開けた少し先に、ショートカットの妹の理沙が立っていた。

はたから見ても、怒っているのは一目瞭然だった。

今、下手に出ると、説教1時間コースの後、当分は口をきいてくれなさそうだ。

とりあえず、今は適当なことを言ってごまかして、夕食時ぐらいに冷静になったことろでゆっくりと話したほうがよさそうだ。


「あの、あれだな。昨日はいろいろ仕事が忙しくって帰れなくてさー。さ、最近の世の中ってホント大変だよなぁー。あ、ご飯まだなら、今日は俺が料理するから理沙は部屋で勉強してていいぞ」

自分でもよくわからない、サラリーマンのようなことを言いながら、理沙の横をすり抜けようとした。が、そう簡単にいくはずがなかった。


「ちょっとお兄ちゃん、わけわかんないこと言って、ごまかそうとしてんの?」

そう言って、俺の制服の襟をつかんで、俺の背中を壁にたたきつけた。

ですよねー。

やっぱそうなりますよねー。

てか、こいつこんな力強かったっけ?

これは壁ドンならぬ背中ドンだな、なんて考えている場合ではなかった。


「それに、ご飯の準備はもうできてますー! ついでに言うと、昨日の夕食も、今日の朝食も昼食もちゃんとお兄ちゃんの分も準備してありましたー。 お兄ちゃんの人でなし!最低!死ね!二度と喋りかけんな!死ね!」

理沙は一通り言うだけ言うと、リビングに消えてしまった。

てか死ねって二回も言うことないだろ。


俺は一瞬金縛りにあったように動けなかったが、すぐさま理沙の後を追ってリビングに向かった。

背中超いてーし


リビングでは、理沙がテーブルに置いてある二つの食事のうち、一つにラップをして、冷蔵庫の中にしまおうとしていた。


「お兄ちゃんの今日の夕食はないから!これは明日の理沙の朝食にするから! 勝手に食べたら殺すから」

とても、年頃の女の子とは思えない言葉遣いだ。

この調子だとホントに殺されかねないな。


「あのー、理沙さん昨日は本当にーーー」

「うるさい!出てって!もう勝手にどこにでも行けばいいじゃん!」


こうなると、もう俺にはどうしようもないので、仕方なく自分の部屋に行くことにした。


自分の部屋でいろいろと考えたが、結局これといった策は思いつかなかった。


  * * * * * * * *


 次の日は、日曜日だったが起きた時には、すでに理沙は外出していて、夜まで帰ってこなかった。

俺はというと、冷蔵庫の中にあるものを適当に食べ、勉強やら読書をしたり、好きなアニメを見て何となく過ごした。

別に、料理ができないわけではなかったが、何かを作る気になれなかった。


  * * * * * * * *

 

 次の日は学校だったが、昨日と同様起きた時にはもう理沙は学校に行ってしまっていた。

俺はいつまでも、憂鬱な気分ではいけないと思い、開き直ることにした。

この状態が続いたほうが、これから受験勉強が忙しくなる理沙にとっては、早起きの習慣がついていいんじゃないか、などと、本心にもないことを思いながら、学校へと向かっていた。


クラスでは、基本いつも一人なので、俺の心中以外はいつも通りだった。

昼休みになり、弁当を持ってきていない俺は学食にパンを買いに行った。


無事パンを買って帰ろうとすると、前から両手にパンを持った見慣れた人がこっちに向かってきた。

「あら、今日はいつもに増してひどい顔してるわね」

くそ!こいつは今日もいつも通りだな。


「そんことばっか言ってるとみんなから嫌われるぞ」

「は?そ、そんなことどうでもいいじゃない! それよりあんたどうせ暇でしょ。どっかで一緒に昼食食べましょうよ」


心なしか、青山が少し動揺しているように見えた。

「すごい偏見だな」

「じゃあ何か予定でもあるの?」

「まぁそりゃあ、あれだ。パン食べたり、次の授業の準備をしたり、長い昼休みをゆっくり過ごしたり、やることはたくさんーーー」

「もうそうゆうのはいいから。要は暇なんでしょ!さっさと来なさいよ。昼休みなくなるでしょ!」


そう言って、青山は後ろも振り向かずさっさと歩きだしたので、仕方なく俺は青山の5メートルほど後ろからついて行った。

青山が向かった先は生徒会室だった。

もしかして、こいつ、いつもここで一人でメシを食べてるんじゃないよな?

まさかな。俺じゃあるまいし、青山にだってクラスに友達くらいいるだろう。



「それで、どうして俺を誘ったんだ?」

「いつも以上にキモイ目をしてたから、いつか死んだ魚の絵を書くときに役に立つかなと思って」

こいつ、今日はいつに増して鋭くないか。


「お前ホントいい性格してるよな」

「あら、褒めてくれるの?ありがとう」

「ちげぇよ」


「それより、あんた金曜日は結衣の家に泊まったの?」

「あぁ。まぁ気づいた時には朝だったけどな」


「それで、そのあとは何かあったの?」

「特にこれと言って変わったことはなかったな。しいて言うなら、あの家の執事の人に会長のことを名前で呼べって言われたから、名前で呼ぶようになったくらいかな」

「あぁクロエさんね。あの人ちょっと変わってるわよね」

確かに。超変わってる。

俺のこれまでの執事の印象返して、って言いたいぐらいだ。


「それより他にこの休日なんかあった?」

「いや、特になかったな」


「ホントに?」

どうやら青山は、俺がいつも以上に元気がなさそうなのを心配してくれているらしい。


こいつ、実は結構いいやつなのか? なんて思いながらも、それでも、いや、それだからこそ、今回の問題は俺が悪いわけで家族間の問題を他の人に心配される義理はないし、俺一人で解決しなければいけない問題なので、青山の優しさはありがたいが、今回は適当にごまかしておくとしよう。


「まぁ、しいて言うならあれだな、最近になってようやく、クラスの連中がたわむれたがる理由がわかったってとこだな」

「何が言いたいのよ?」

「要は、みんなで集まってワイワイ騒いでるやつらは友達ごっこをして、俺はここにいるぞ!ってのを証明したがってるんだよ。一人になると、自分だけ他の世界に取り残されてしまっているように感じるんだろ」


「共感半分、共感できないの半分ってとこね」

「まぁ半分分かってくれれば御の字ってとこだな。自分の存在証明なんて、我思う故に我あり、の一言で十分だと思うんだけどな」


「ちょっと今のはよく分かんないけど。それにしても、今日はいつもより口が達者ね」

「まぁな。基本的に俺がこうなるのは、機嫌がいい時か悪い時のどっちかだな」


そう言うと、昼放課が終わる10分前を告げるチャイムが鳴った。

「今日はどっちなの?」

「どっちだろうな。まぁ、察してくれ」

椅子から立ち、ドアへと向かいながら俺はそう言った。

「いろいろやらなきゃいけないこと思い出したから俺先行くわ」

「そう」

俺は、生徒会室のドアに閉めた。


閉める直前に青山の独り言が聞こえたような気がしたが、俺は聞こえなかったふりをして教室へとゆっくり戻った。


教室につくと、一番窓際の一番後ろにある俺の特等席に座り、イヤホンを耳に当てた。


青山にはさっき、やることがあると言ったが、クラスでぼっちの俺にそんなものが存在するはずがない。


さっき青山にそう言ったのは、あの空気の中、青山とあれ以上いたら、週末にあったことを話してしまいそうだったからだ。

きっと青山も俺に用事がないことは、わかっていただろうが、気を使ってくれたのだろう。


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