第7話 宇佐美邸で朝食
シャワーを浴びて、クロエさんに案内されて食堂に行くと、純白のワンピース姿の結衣が待っていた。
「悪いなぁ、待たせちまって」
「いえ、全然大丈夫です。」
それにしても、すげぇ似合ってるなー
「あのー、春樹くん。そんなにまじまじと見られると、恥ずかしいです」
「あ、いやー、すまん。すげぇ似合ってるからつい」
「そ、そうですか? ありがとうございます」
結衣は、ぎりぎり聞き取れるくらいの声でそう言った。
「そ、そう言えば、今日は両親はいないのか?」
「は、はい、昨日から泊りで外出しています」
クロエは、ドアの前で立っていた。
「いつもクロエさんは一緒に食べないんですか?」
「はい、私は家令ですので」
「たまには一緒に食事ぐらいしてもいいんじゃないですか?」
「私もたまにはクロエと食事がしたいです」
クロエは少し考え込んでいたが、
「わかりました。お嬢様がそうおっしゃるのであれば、今日は特別に一緒に食べることにいたしましょう」
そう言って、厨房のほうに行って、しばらくすると、食事をもって出てきた。
「それではいただきましょう!」
食事はとても美味しかったが、俺はどうしても昨日のことが気になって、どうしてもそれどころではなかった。
「それで、昨日のことなんだけど……」
「そうでしたね。単刀直入に言いますと、昨日生徒会室に来たのはクロエだったんです」
「え⁉ でもどうしてクロエさんが?」
「8時を過ぎてもお嬢様が学校にいるようだったので、何かの事件に巻き込まれたのではないかと心配になって、急いで学校に向かったんです」
「どうして、結衣が学校にいるってわかったんですか?」
「お嬢様の携帯にGPSが搭載されていますので。 ちなみに、お嬢様の位置を把握できるのは私だけですけど」
「なるほど。でも学校閉まってませんでした?」
「私、ピッキングは得意ですので」
じゃああの時結衣が言ってたピッキングが得意な人ってクロエさんだったのか。
「じゃあ、昨日俺が殴ろうとしたのもクロエさんだったんですか?」
「はいそうです。あの時はつい反射的に手が出てしまいました。申し訳ありませんでした。念のため昨日の夜医者に来てもらいましたが、安静にしておけば問題ないということでした」
「そうか。そう言えば、あの時クロエさんフードをかぶってましたよね」
「はい。私の髪では目立ちますので」
クロエは、きれいな金髪を指で触りながらそう言った。
「そう言えば、お嬢様」
「どうしました?」
「あの隠し部屋にあったゲーム機とお嬢様の制服のポケットに入っていたレシートのことですが」
「え?あー、それは…ちょっと生徒会で必要だったというか、何と言いますか……」
「まぁ、いいでしょう。今回は見なかったことにしておきます。ですが、家には持ち込まないでくださいね。旦那様に見つかったら大変なことになりますので」
クロエは呆れ顔でそう言った。
「はい」
「結衣の父親って厳しいのか?」
「厳しい時もありますけど、基本的には優しいですよ。今度会ってみますか?」
「まぁ機会があったらそのうち適当にな」
「そうですね。きっとお父様も喜びます」
結衣にはそう言ったが、正直あまり会いたくはなかった。
会っても、緊張して何もしゃべれなさそうだし。
そんなことを話しているうちに、3人とも朝食を食べ終えていた。
「春樹くんはこの後、何か予定は入っていますか?」
「いや、特には」
「それじゃあ、この後勉強を教えていただけませんか? 次のテストの結果が悪いと大変なことになりそうなので」
「わかった」
「ほんとうですか!」
結衣は満面の笑みでこちらを見た。
「ああ」
というわけで、朝食を食べ終わった俺と結衣は結衣の部屋で勉強することになった。