第40話 ランチタイム
「これで終わりか?」
「そうですね。ありがとうございました」
二人だけでイスをこんなにも並べるなんて、きっと一生ないだろう。
ある意味、いい思い出かもな。
仕事がいい思い出とか、俺もだいぶ浸食されちまったな。
「もうお昼ですね。私、実行委員のみんなに言ってきますね」
「おう。俺はクラスにでも顔出そうかな」
「先輩がクラス行って空気悪くしないんですか?」
「いや皆、俺のことはいないものとして扱うから、空気は悪くならない。俺のスピリットが削れるだけだ」
「…そうですか。先輩のクラスの人たちは優しんですね」
「…そうなのかもな」
確かにぼっちにとって、決して居づらい場所ではない。
ぼっちにぼっちとしての役割をしっかりと与えてもらっているという点で言えば、俺のクラスの連中は優しいと言えるのかもしれない。
実際、俺は今のクラスでいじめや嫌がらせにはほとんどあっていない。
なんなら菊地とか青山とかの方からの嫌がらせの方が多いくらいだ。
とは言っても、あれは嫌がらせではなく、こいつらなりの俺へのコミュニケーションなのだろう。
菊地はちょっと俺のことをからかっているだけだし、青山は少し不器用なだけなんだろう。
「…それじゃ、私は先行きますね」
「あぁ」
さてと。俺も教室行くか。
何もしなくても、一応少しはいないとな。
教室に行くと、どうやらこっちも昼休憩らしく、いくつかのグループに分かれて、昼食を摂っていた。
地べたに弁当を広げて食べている人から、後ろに下げた机を戻してそこで食べる人まで色々だった。
結衣はいつも通り机とイスを出して、何人かの女子と一緒に弁当を食べていた。
まぁドレスを着ているので当たり前だが。
結衣は、俺ガイルのに気づくと、一緒にいる人たちに一言言って、立ち上がった。
俺は咄嗟に教室を出て、教室の裏へと移動した。
移動してすぐ、結衣が教室から出てきた。
「あ、いた。どうして隠れるんですか?」
「いや、別に隠れたわけじゃないけど。ただ、結衣が俺と喋ってるところを、クラスの奴らに見られるのはどうなのかなって思っただけだ」
「そんなこと気にしなくていいのに…」
結衣は少し落ち込んでいるようだった。
ぼっちなりの気遣いのつもりだったんだが、今回は裏目に出たようだ。
「そうか。それは悪かったな」
「まぁ春樹くんだし、しょうがないですね」
「まぁ俺だからな」
何がしょうがないのだろう。
俺だから嫌われててもしょうがないという意味なのか、俺だからクソみたいや行動を取ってもしょうがないという意味なのか、はたまた俺がしょうがない子という意味なのか。
まぁどれでも大差ないんだけど。
「それで、何か用事ですか?」
「いや、ちょっとクラスの様子でも見てこようと思っただけだ。まぁタイミングが悪かったみたいだけど」
「春樹くん、昼食はもう食べましたか?」
「いや、まだだけど」
「じゃあ一緒に食べませんか?」
「俺にあの女子だけのグループの中に入れと?」
誘いは嬉しいが、流石にそんなことしたらこのクラスの空気が地獄と化す可能性があるし、俺の精神が持ちそうにもない。
「あ~そうですね。じゃあ、生徒会室で一緒に食べますか?」
「いや、お前、他の奴らと一緒に食べてるんだろ? だったら俺に気なんか使わなくていいから、そいつらと食べて来いよ」
「…そうですね」
ちょっと自分でも厳しい口調になったと思ったが、結衣もそれに少し驚いたようだった。
けれど、ただでさえ今回の文化祭の件でいい様に使われたわけだし、今結衣の立場を悪くするのは俺にはできない。
とは言っても結衣は、嫌われてるわけではないし、どっちかというと、友達は多い方なのだろう。
まぁ天然というか、優しいやつだから当たり前だ。
今回はそこを使われたわけなんだが。
「まぁそうゆうわけだから、俺は生徒会室で弁当食べてくるわ」
「そ、そうですね。わざわざ来てくれてありがとうございました」
「いや来たのはお前のためじゃねぇよ」
「そうでしたね」
そう言って、結衣は俺の目の前で笑っている。




