第37話 理沙の受験と春樹の仕事と夕食と
スマホで時間を確認すると、9時半だった。
一応さっき連絡はしておいたが、既読がついていないのであまり安心はできない。
とは言っても、あいつは少し俺と似て、ルーズなところがあるので問題ないはず……機嫌が悪くなければ。
最近、本格的に受験勉強を始めたみたいだから、もしかしたらもしかするかもしれない。
まぁ多分大丈夫だろう。
とりあえずいつも通りでいこう。
家に着くとその勢いのまま玄関を開け、リビングに入った。
「ただいま~」
理沙はキッチンで皿洗いをしていた。
「お兄ちゃん、おかえり。遅かったね」
どうやら怒ってないみたいだ。
よかったよかった。
「まぁ文化祭の準備とか色々あってな」
「生徒会の仕事?」
「そうだな。後、実行委員の仕事もな。あ、でもそれも生徒会代表として参加してるから、結局生徒会の仕事だな」
「そうなんだ!最近、大変そうだね」
「まぁな。それにしてもよく生徒会の仕事だってわかったな」
普通、文化祭の準備と聞けば、クラスの出し物の手伝いを想像するだろう。
「それくらい分かるよ。クラスのみんなと一緒に何か作るなんてお兄ちゃんに出来るわけないんだから」
流石、わかってらっしゃる。
「それにクラスの方に行っても空気悪くするだけだしね」
おっしゃる通りです……だけどもうちょっと言い方考えてほしいな。
もうここまで当てられると苦笑いするしかない。
「そう言えば、一応学校出る時連絡したけど見たか?」
「いや。連絡なんか来てなかったと思うけど」
理沙はポケットから携帯を取り出して確認する。
「あーブロックしてたかも」
「………」
「………」
「…ブロックしてたかも」
「いや聞こえてるから大丈夫。それよりブロックってあのブロックだよな」
「そうだね」
どうやらレゴの方ではないらしい。
おっかしいな~。
自分で言うのもなんだけど、俺結構、妹からの好感度高い方だと思ってたんだけどな~。
正直だいぶ心に来るな、これ。
クラスではぶられるよりショックだわ。
てかそれは、もはや日常か。
「そんなに落ち込まないでよ。ちょっと間違えちゃっただけだからさ。 ほら、もうブロック解除したから」
そう言って、理沙は携帯の画面を俺に向けてくる。
「…まぁ俺も今日帰ってくるの遅かったし、おあいこってことで」
「うん、ありがとう」
「そう言えば、そのことなんだけどさ。別に理沙のために早く帰ってこようとか思わなくていいからね」
何かその言い方だと、俺が早く帰ってくると勉強の邪魔だから帰ってくるなっていう風に聞こえなくもないけど、違うよね?
お兄ちゃん信じてるからね!
「いやでもそうなると、少なくとも今週はずっと帰りこれくらいになっちゃうけど…」
「いいよ。お兄ちゃんが珍しく頑張ってるの、理沙知ってるから」
妹にそんなこと言われるとなんか泣けてくるな……一言余計だけど。
「じゃあ、そうさせてもらおうかな」
やっぱり理沙にはかなわないな。
「でも、理沙も受験勉強大変そうだし、これから夕食は俺がつくr」
「それはダメ!」
「いやでもな~」
理沙にとって今は相当重要な時期なはずだ。
それこそ人生の岐路といっても、決して大げさではない。
きっと本人もそれを自覚しているはずだ。
「ダーメ!こうゆうことがないように役割分担したんでしょ。私が料理と洗濯とリビングの掃除で、お兄ちゃんがごみとカビ」
いや略しすぎて、俺=ごみ&カビ みたいになってるんですけど。
「もう少し言い方考えてくれると嬉しいんですけど。後カビって何?俺の担当はゴミ捨てと風呂掃除だったはずだけど」
「え?だってお兄ちゃん。いつもお風呂の壁ゴシゴシ洗ってるから、カビ落とすの好きなのかなーって」
「いや、確かに壁ゴシゴシ洗ってたかもしれないけど、同じくらい浴槽も洗ってたし、第一うちの風呂でカビなんて見たことないし」
どこの世界にカビ落とすの好きな人がいるんだよ。
俺は龍じゃないぞ。
あ、漢字は龍じゃなくて竜だったかな。
ってもう古いか。
俺あれ好きなんだけどなー。
もう5回は見たな。
永遠と語り継がれる感動のラブコメ。
「まぁそんなことどうでもいいけど、これまで通りお兄ちゃんの夕食は私が作るから。わかった?」
「…はい」
よく考えてみれば、俺は理沙に言い合いで勝ったためしがない。
俺が理沙に甘いだけなのか、理沙が強情なのか。
まぁどっちもだろうな。




