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生徒会での…  作者: 藍井 湊
第1章
34/43

第34話 ギャップ萌え

 * * * * * * * *


今日も先週までと同様に会議室で実行委員の仕事を黙々としていた。

時刻は5時を回ったところだった。


今日はここ以外にも行く場所があるので、今日の実行委員の仕事はこれくらいでにしておこう。

俺は荷物をまとめて、会議室を出た。



実行委員の3倍は行きたくないな、とか考えながら階段を上がる。


ドアを開ける前から騒がしい。

まぁ、この中が特別騒がしいというわけではなく、どの教室も等しく騒がしいわけだが。

教室の中に入ると、だいたい30人弱くらいの人がいて、それぞれが楽しそうにワイワイやっていた。


俺は、文化祭前の準備をすればいいということになっていた。

つまり大道具、小道具の担当ということでいいのだろうか。

とは言っても今日初めて来たし、聞ける人も教えてくれる人もいないので、何をやればいいかさっぱり分からない。


ぐるっと教室を見渡すと、教壇の上に結衣がいるが何やら忙しそうなので聞けそうにない。

結衣は白とピンクのドレスを着ていた。

つい、似合ってるな、なんて思ってしまった。

あれ、あいつの自前なんだろうか?

家があれだけお金持ちなら、ドレスくらい持っていて普通だろう。


そんなことを考えていると、俺のことに気づいた結衣がこっちを見たので慌てて視線をそらした。


やっぱ誰かに聞こうかな。

できるだけ優しそうなやつに。

でも空気悪くするの嫌だしな。

無視されるのも嫌だし。


「宮本くんもこうゆうの参加するんだね」

出たよ、爽やかイケメン。

ナイスタイミング。


「まぁ一応な」

まぁこいつはこうゆうやつだ。

「それで、何かやることあるか?」

というか、そうゆうやつとして存在させられているのだ。


「そうだね。そこの画用紙の文字を下書き通りになぞってくれるか?マッキーはそこにあるから。色は適当でいいよ」

でたよ。俺の苦手なアドリブ。

適当でいいとか言っておいて、全部黒でなぞったら地味とか言われて、黄色にしたら見えないとか、カラフルだとキモイとか……


「了解。ありがとな」

城山は少し驚いたような表情を見せた。

いや、俺も人間だからお礼くらい言うし。

それとも何?

この人まともに会話できるんだ~的なやつ?


「城山くん、ちょっと手伝ってほしいんだけど」

明らかにあんまり仕事してない女子が城山のことを呼んでいる。


「ほら、呼ばれてるぞ」

「あぁ。じゃあよろしく」

そう言って、城山は呼ばれた方へ行った。


城山は優しい人だ。

というレッテルを張られている。

それを皆が有効活用する。

そして、城山はそれに極力応えようとする。


並大抵のことじゃない。

人気者は人気者なりの苦労がある。

俺には到底真似できないことだ。


俺にもたくさんあるであろう仕事の中で一人で出来る仕事を選んだ。

きっとそれくらいことは意識しなくてもできてしまうのだろう。


そんなこと考えながら、俺は地べたに座って、教室の隅の一番人口密度の低いところで、画用紙の下書きに沿って赤、緑、青、黒などの色を適当に使い分けてなぞっていく。

画用紙は全部で15枚ほどあった。

内容はだいたいが客寄せの宣伝用のやつと劇の説明だった。


確かに量は少し多いが、やることがはっきりしていて、ゴールがわかる仕事は気持ち的には楽だ。


実行委員の仕事なんて、やることも曖昧で終わりが見えないからモチベーションを維持するだけでも大変だ。

遅れてるところのフォローということは、すべての仕事が終わるまで仕事をし続けなきゃいけないということだ。

それにどれだけやったって、手柄はそこの担当の人に持っていかれるのが落ちだ。


10枚くらい終わらせたところで、画用紙をはさんだ向かいに誰かが座った。

その行動だけで何となく誰かは予想がついたし、何よりこのクラスでその衣装を着ているのはさっき似たところ一人しかいなかった。


「どうした?もう終わったのか?」

俺は顔を上げずに言った。

「はい。なので応戦しに来ました」

「それ、着替えなくていいのか?」

「後ででいいです」

「そうかい。じゃあよろしく」

そう言って、画用紙を渡した。


この仕事は効率とかあんまり関係ないから、単純に人数が多ければその分早く終わる。


流石というか、結衣はそれっぽく可愛い感じになぞっていく。

俺はさっきと変わらず、適当になぞっていく。



そして15枚すべてなぞり終わり、画用紙を重ね始める。


そう言えば、これを始めてから終わるまで、一回も顔上げなかったな。

無意識にこの教室の人たちを視界にいれたくなかったのかな。

いや、これに集中してたからだな。

きっとそうだ。


「俺はこれから生徒会室に行くけどお前はどうする?」

「私も行きます。ちょっと待っててください」

そう言って、結衣はハタハタと教壇の方へ行った。


俺は腰を上げ、時計を見ると5時45分だった。

多分まだいるだろう。

俺は画用紙を元あった場所に戻すと教室を出た。


結衣には待っててと言われたが、あれの着替えにはだいぶ時間がかかるだろうから生徒会室で待つことにする。


昨日、清水には生徒会室に来てほしいと言われたが、今日清水は学校に来ていなかったのであまり気にはしていなかった。

ただ最近ほとんど生徒会室に行っていないのは事実なので、少しでも顔を出しておかなければいけないとは思っていた。


後ろから走る足音が聞こえた。

いつものことだ。


その足音の主が、俺の後ろで、えいっという声を出すのと同時に俺の背中に何かが乗っかってきた。

危うく転びそうになるのをなんとかしのいだ。


白い衣装のおかげで俺の背中に何が乗っているのかすぐわかった。

「待っててって、待ったじゃないですか」


「それより重いから今すぐ降りろ」

重いというより、誰かに見られるとまずいので、とりあえず早く降ろしてほしかった。

それにこのままだと俺の理性が持たない。

てか、なんで着替えてないんだよ。



「私、そんなに重くないです。罰としてこのまま階段まで連れてってください」。

それ結構マジでヤバいから。

いろんな意味で


「マジで?」

「会長命令です。 ほら今なら誰も見てませんよ」

どうやらマジらしい。


誰にも見られないといいけどな。

結衣は完全に体重を俺にかけているので、歩くたびに背中に柔らかい感触が伝わってくる。

ヤバいよヤバいよ。


後、階段まで後10mくらいのところで、階段から教師が現れ目が合ってしまった。

しかも運悪く白石先生と。

白石先生は俺たちを見るとニヤッとした顔をして、こっちに歩いて来た。

ヤバいよヤバいよ。part2


「2人とも仲良くやってるようだね。いろいろと」

流石にこれは何か反論しなければ。

「いや違うんですよ先生。これは」

そこまで言った時、俺の声を遮るように結衣が言った。


「そうなんですよ。春樹くんがどうしてもって言うので。これから式場まで連れて行ってくれるみたいです」

「「なっ!」」


俺と先生は同時に驚きの声を上げた。

こいつ、なんてこと言ってくれてんだよ。


「…そ、そうか。それはよかったな。こんなに早く相手が見つかるなんて。…そ、そう言えば、用事があったんだった。それじゃあまた」

そう言って、先生は足早に去っていった。

可愛そうに。

意外といい人なんだけどな。

まだ相手見つからないのか。

可愛そうに。


それより、今はそのことではない。

「お前、何言ってんだよ」

「うっかりしてました」

そう言って、まだ階段までは少しあるが、結衣は俺の背中から降りた。


「うっかりじゃないだろ」

「ここまでにしてとくので許してください」

まぁいいか。

流石に先生も冗談だってことくらい分かってるだろう。

「わかったよ」

「ありがとうございます」


「そう言えば、お前着替えなくていいのか?」

「生徒会室で着替えるので大丈夫です」

そうかい。


それからは無言のまま階段のことろまで行く。

「…そう言えば、お前って誰にでも敬語だけど昔からなのか?」

「うーん。…よく覚えてないですけど、ずっと敬語だったんだと思いますよ」

結衣はそのまま考えているようだった。

「そうか」


階段を折り返して下るが、3,4段下がって結衣が足を止めていることに気づいて振り返った。

振り返ると結衣がまっすぐ俺の方を見ていた。


今日、結衣の顔をまともに見たのはこれが初めてだった。


「春樹はこっちのほうが好き?」


ヤバいよヤバいよ。part3

効果抜群の技がクリティカルヒットしたような感じだった。

これが噂のギャップ萌えか。


俺は少ししてから慌てて顔をそらした。

結衣が階段を少し早めに降りてきて、俺の横につく。


「どうでした?いい感じでした?」

「あ、あぁ良かったんじゃないか」

明らかに動揺していた。


「春樹くん。顔赤いですよ」

「うるせー」


そう言って俺は顔を結衣と反対側に向けた。

俺は少し早く階段を下る。


結衣はくすっと笑って俺の後について階段を下りる。


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