第32話 ゲーセン
休日ということもあって映画館はそこそこ混みあっていた。
これはあれだな。諦めて帰るしかないな。
俺とは反対に、清水は何やら興奮しているようだ。
さっきから映画館をぐるぐると見ている。
いや、映画館なんてそんなに珍しくもないだろ。子供か!
「実は私、映画館来るの初めてなんですよ」
あ、だからそんなにきょろきょろしてるのね。
てか、高校生になって映画館に初めて来るなんて、あなたホントにナウなヤングですか?
そいうわけで、何も見ずに帰ることは出来そうにないな。
「何か見たい映画あるか?」
俺が聞くと、清水は悩むように上映スケジュールを確認しだす。
しばらくして、俺の方を向いた。
どうやら見たいものが決まったようだ。
「ハル先輩。私、これが見たいです」
どれどれ、上映時間は45分後か。丁度いい時間だな。チケットが余ってたらだけど。
作品確認する前に上映時間確認するあたり、常に気配りができてる証だな。うんうん。
作品は青春ラブコメを題材にしたものだった。
確かに俺もちょっと気になってはいたが、このタイミングで見るのはちょっとあれじゃないですかね?
この子、その辺あんまり考えてないよね。
まぁいいか。
「わかった。じゃあ券取ってくるわ」
10人ほど並んでいた。
まぁ休日にしてはすいてるほうか。
俺が列に並ぶと後ろから清水がちょこちょこと速足で俺の横に来た。
「私も一緒に並びます」
「結構歩いて疲れただろ。その辺で休んどいていいぞ」
「……別に疲れてません。子供扱いしないでください」
いや、子供扱いはしてないんだが。
せっかく珍しく気を使ってやったのに、結局こうなるのか。
やっぱり人間慣れないことはするもんじゃないな。
「大体お金ここで払うんじゃないんですか?」
「その辺は心配するな。後で送料込みの請求書渡すから」
「最低ですね。ちょっとは気が利くとか思ったのに、やっぱりハル先輩はハル先輩ですね」
「未来永劫変わらないのが本来の俺の姿だからな」
うん。ちょっとカッコいい。
「……」
いや、そんなあからさまに引くことないだろ。
え?この人何言ってるの?中二病?みたいな感じの顔になってるから。
そこまで顔に出されるくらいだったら、むしろ言葉にしてくれた方が楽なんですけど。
清水は一歩後ろにに下がって、俺のいる方とは反対の方を向いて、鼻歌を歌い出した。
そんなあからさまに他人の振りしなくても……てか、それ結構傷つくんですけど。
こう見えても、俺メンタル弱いからそうゆうことされると、すぐグサッと来て、血がドバドバーってなっちゃうから。
そんなことをしている間にも順番が来たようだ。
「ちょっと清水さん。順番ですよ」
清水はこっちを向いてちょこちょこと歩いてきた。
* * * *
「面白かったですね」
「あぁ、次はどうする? 少し早いけど昼食にするか?それともすぐそこのゲーセンでも行くか?」
「私、ゲーセンに行ってみたいです」
女子もゲーセンとか興味あるんだな。
まぁでも女子だけだと入りにくいだろいし、興味は湧くか。
「じゃあ、ゲーセン行くか」
「はい」
ゲーセンに入ると中は、ほとんどがカップルと男子の集団で占められていた。
やっぱり昼食取りたくなってなってきたな。
とりあえず、ここにあまり長居したくないな。
とは言っても、俺たちもはたから見たら、カップルに見えているかもしれない。
「わぁ、すごいですね」
おそらくゲーセンもほとんど初めてなのだろう。
まぁ初めてならその反応も分からないでもない。
清水は何かを見つけたのか、急に走り出した。
そして立ち止まるとこっちを振り返って大きな声を出した。
「ハル先輩。私、これやってみたいです」
あー、エアーホッケーね。
俺も一回やってみたかったんだよな。それ。
なんせ、絶対に一人ではできないからな。
「いいけど、やり方知ってるのか?」
「いえ、でも楽しそうじゃないですか」
適当だな。まぁいいか。
「簡単に言うと、相手のゴールに円盤を入れて得点を競うゲームだ。まぁ一回やってみるか」
お互いに100円ずつ入れてゲームがスタートする。
結果は圧勝だった。
軽くやったつもりだったのだが、清水が思いのほか下手だった。
空振りするわ、オンゴールするわでどれだけ手を抜いても勝つのは余裕だった。
「ハル先輩。女の子に本気でやるなんてひどいです」
清水は自分が相当下手だという自覚がないみたいだ。
そしてご立腹なようだ。
「悪いな。つい楽しくてさ。俺、これ始めてやったんだよ」
「…まぁ私も楽しかったのでいいですけど」
こいつ、意外とちょろいな。
「他に何かやりたいのあるか?」
「たくさんありすぎてよく分からないので、色々見て回りたいです」
確かに、ここは意外と広いしな。
ここからじゃ奥までは見えないし。
「そうだな」
とりあえず、手前のクレーンゲームのゾーンを一緒に見て回ることにした。
アニメのキャラクターやらお菓子やら、色々なものがあった。
「あ、ハル先輩。私、これが欲しいです」
清水が指をさした先にはキラキラした星の形をした携帯ストラップだった。
こんなのが欲しいのか。
まぁ女子はこうゆうキラキラしたの好きだしな。
でも、清水がこうゆうのに興味があるのは少し意外だった。
「………」
清水はニコニコした顔でこっちを見ている。
え?何この状況。
俺が取れってこと?
つまり俺の自腹ってこと?
まぁいいか。
100円で1回、200円で3回ね。
俺は財布から200円を取り出し、投入口に入れた。
3回目でどうにか取れた。
取れたストラップを確認すると、2つセットだったようだ。
ちなみに、ピンク色と水色だった。
「ほら」
「わー、ありがとうごあいます」
清水はストラップを受け取ると、水色の方を俺に差し出した。
「取ってくれたお礼です」
いや、もらっても使い道ないんですけど。
「いいよ。誰か他のやつにあげろよ。青山とか結衣とかなら意外と喜ぶと思うぞ」
「そうですね。青山先輩とか、色々言いながらも、なんだかんだですごく大切にしてくれそうですよね」
確かに。めっちゃ想像できるわ。
「…ハル先輩がそう言うなら、そうします」
そう言って、二つのストラップをポケットにしまった。
その後も、たいたつやDDRやクレーンゲームをやったのだが、正直清水はどれも上手くなかった。
けれど、それでも清水は楽しんでいるようだった。
「あ、次はあれがやりたいです」
清水が指さした先にはたくさんのプリクラがあった。
「いや、ああゆうのって女子同士で撮ったっり、恋人同士で撮るもんじゃないのか?」
「いいじゃないですか。撮りましょうよ」
いやー、でもなー。と渋っていると、清水が俺の腕に自分の腕を絡ませてきた。
「ほら。これならカップルみたいですよ。さぁ行きましょう」
そう言って、清水は無理やり歩き出した。
いやいや。これ、プリクラ撮るより困るんですけど。
清水はどうしてもプリクラが撮りたいみたいだった。
「わかった。わかったから腕離してくれるか?」
「だめです」
マジかよ。
プリクラの前まで来るとようやく腕組みという名の拘束を解いてくれた。
プリクラと言っても、種類がたくさんあるようだ。
何が違うのかは全くわからないけど。
「ハル先輩、この機種でいいですか?」
「あぁ、何でもいい」
俺の返事に清水は少し呆れたような顔をした。
中に入ると、偏差値30くらいの音声が撮り方の説明を始めた。
清水は音声に従って、写り方や背景や大きさを選んでいく。
そして、写真を撮ると落書きをしてみようとか言う指示で、清水が何やらキラキラさせたり、字を書いたりしている。
外に出て、出てきた写真を見ると、明らかに目が大きく、肌も白くなって、周りは所々キラキラしていた。
いやー、俺が俺じゃないみたいだ。
それにそれぞれの服の辺りに清水の字で『ハル先輩』『みどり』と書かれていた。
清水に写真を渡すと、清水は満足したように頷いて、それから写真をきれいに半分にして、俺に渡してきた。
「はい、ハル先輩の分です。今度はちゃんと受け取ってください」
流石にここで受け取らないのはあれなので、差し出された写真を受け取った。
まぁ多分、俺の部屋の引き出しの中にでも眠ることになるんだろうな。
「ちょっと疲れたので、少し休憩しませんか?」
確かにさっきからずっとゲーセンの中を歩き回っていたし、それに、もうすぐ3時になるがまだ昼食を取っていなかった。
「そうだな。俺も結構疲れたし、どっかで休むか」
ゲーセンを出たところにベンチがあったので、とりあえずそこで休むことにした。
清水は背もたれに完全に体を預けるように座った。
そうやら、俺が思っていた以上に疲れていたようだった。
なんか、気づいてやれなくて申し訳なく思った。
「朝から何も食べてないけど、何か食べるか?」
俺たちが座っているベンチの周りには飲食店がたくさんあったので、清水はくるっと周りを見渡した。
「それなら、私あそこのクレープが食べたいです」
清水はすぐ横にあったクレープ屋を指さした。
「じゃあ俺が何か買って来ようか?」
「それじゃあイチゴの入ってるのをお願いしてもいいですか?」
「了解」
クレープ屋の前でメニューを見ていると、バイトであろうクレープ屋の若い女の人が俺に睨みつけるような視線を向けていることに気づいた。
いや、俺男だけど、こんな顔だけど一応客だからそんな目で見ないで。
というか、最近はフルーツ男子とか流行ってるんじゃないの?
それとも単純に俺だから睨んでるだけ。
別に不審者じゃないんだけど……
まぁいいか。学校ではよくあることだし。
こんなことに慣れてるなんて、あんまいい気分じゃないな。
メニューの中にはイチゴと生クリームがメインのと、イチゴのアイスクリームがメインでイチゴが少し入ってるやつがあったので、とりあえずその2つを頼んだ。
まぁ俺もイチゴは嫌いじゃないしな。
クレープを両手に清水のいるところに戻ると、少しは疲れが取れたのか、さっきよりしゃんとした姿勢で座っていた。
「ほら、買ってきたぞ。どっちがいい」
「ありがとうございます。じゃあこっちで」
俺の手には、いちごのアイスクリームの入ったクレープが残った。
「あ、これいくらでした?」
「別にいいよ。付き合わせたお礼だ」
「付き合わせたのは私ですけど…まぁハル先輩がそう言うなら奢られてあげます」
やっぱり気づかれたか。
いやー、中々いい言葉が見つからなかったんだよ。
結構恥ずかしいな。
それより後半おかしくなかったか。
「奢ってやったのに、なんか上から目線だな」
「早く食べないとアイスクリーム溶けちゃいますよ」
そんなあからさまなスルーある?
……まぁいいか。
クレープを一口食べた。
美味しいけど、甘ったるいし冷たい。
もうすぐ冬だしこんなの食べたら体の中から外まで冷え切ってしまいそうだ。
清水は味に満足したのか、おいしそうにクレープを食べていた。
クレープを食べながら、次の行き先について考える。
この辺なら探せばカラオケくらいあるだろう。
そう言えばボーリングもあった気がする。
でも清水の運動神経を考えるとボーリングは止めておいた方がよさそうだな。
後はショッピングとかか?
となるとアニメイトか?アニメイトに行くか?
「清水。どこか行きたいところあるか?」
「私、買いたいものがあるんですけど、付き合ってくれますか?」
当たりだな。やっぱりアニメイトだったか。じゃあ早速行くか。
…違いますよね。知ってます。
「どうゆうものが欲しいんだ?」
「防寒具です。マフラーとか手袋とか」
なるほど。これから寒くなるしな。
確か、駅の方にそうゆうの売ってる店あったよな。
「…じゃあ駅の方に戻るか」
「はい」




