第30話 金時計
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金時計の辺りで周りを見渡すが知っている顔は一つもなかった。
顔を上げて時刻を確認すると針は8時30分を指していた。
指定された時間にはまだ30分程あった。
金時計と言われれば、ここら辺の人はここを思い浮かべるだろう。
よく金時計と銀時計を間違えて反対側にいるということも、よくあることではある。
でもまだ早いし、とりあえずはここで待ってみるか。
てか、ここ人多すぎない?
確かにここはいろんな鉄道やら新幹線やらの駅にはなってるけど、それにしても多すぎだろ。
まぁ日曜日だから仕方ないか。
でも、もっと人が分散されるような作りにできなかったのかよ。
その点、大阪駅とかめっちゃ立体的で考慮されてたぞ。確か。
その分慣れないと訳わかんないけど。
後、できれば大阪駅と梅田駅を統一してほしいんですけど…
ほとんど距離ないだろ。
それともあれか?地元の人の並々ならぬこだわりでもあるの?
多分、ここら辺とかはこだわりとか無さそうだよな。
なんせ、日本の主要都市魅力度ランキングで堂々のワースト1位だからな。
しかもここら辺の人はそのこと認めちゃってるし。
確かに市内で遊べるところなんて数えれるくらいしかないしな。
お陰で、どこ行っても知り合いに会う始末だ。
住むにはいいところなんだけどな。
まぁそれは住んでる人にしかわからないわけだが。
でもこの県、10年以上事故件数ワースト1位だっけ。
やっぱダメだな。
まぁでも、長年住んでれば愛着だって湧くものですよ。
昨日の昼頃に急に青山から連絡が来て、ここに来るように言われたんだが…
再度時計を見上げると9時10分を指していた。
あいつ自分で時間指定しといて遅れてんじゃねぇよ。
…もう帰りたいんですけど。
てか、休日は極力、家でゴロゴロしてたい派なんだけど。
ホントに集合場所がここであってるか確かめるためにスマホを取り出した。
もうこの作業4回目くらいだから間違ってるわけないんだけど。
待ち合わせとかしたことせいで、すげえ不安なんだけど
「ハル先輩。おはようございます」
声がしたので顔を上げると、真正面に見知ったニコニコとした顔があった。
白のニットに制服より少し短めのスカート。
そして、その上からスカートの裾の少し上くらいまである薄い紺色のコートを羽織っていた。
ほら、早速知ってる人に会っちゃっただろ。
「おう。奇遇だな。お前もここで誰か待ってるのか?」
「いえ、ハル先輩と待ち合わせしてるんですけど」
「俺とね~……は?」
うっかり受け流すところだった。
停止しかけていた思考の再起動をかけて考えた。
というか考えるまでもなかった。
青山がデートしなさい、なんて急に言ってきたから、てっきり2人かと思っていたが、冷静になればそんなわけはなかった。
大体あいつが俺と2人で出かけようなんて言い出すはずがない。
昨日からテンパってて損したわ。
「…そっか。悪いな。青山が何も教えてくれなかったから、清水が来るって知らなかったんだ」
「ハル先輩は青山先輩と2人っきりのほうがよかったですか?」
清水が俺の顔を覗き込むように聞いてくる。
俺は慌てて顔をそらした。
「いや、そんなことはない。2人っきりとか一瞬で話すことなくなって気まずくなるだけだからな」
「そうですか。じゃあ今日は頑張ってくださいね」
「いや、3人以上いる場合は俺は最後尾で歩けば、無駄な会話をしなくて済むから問題ない」
これは俺が小学校の遠足で身に着けた技だ。
そうすれば、周りのやつが気遣って声をかけてくることもなく周りを不快にもさせない。
てか小学校からぼっちとか、俺かわいそうだな。
まぁそのおかげで今も不自由なく学校生活が送れるわけだが。
「いえ、今日は一日中私と2人っきりですよ」
「…は?」
いや、流石にそれはないだろ。
だって、連絡してきたのは青山だぞ。
何で本人来ないんだよ。
何?青山さんは恋のキューピットにでもなりたかったんですかね。
アモーレ的な。
自分でも何考えているのか分からなくなってきた。
「…それ、マジ?」
「はい」
「……ちょっと待っててくれ」
テンパりすぎてどうすればいいか分からなくなったので、とりあえず青山に連絡して真相を確かめることにした。
俺は電話帳の一番上に表示されている青山の連絡先を押して、電話を掛けた。
すると、6コールくらいしてようやく繋がった。
『何よ』
いや、この人何でこんなに不機嫌なんですかね。
スマホ越しにいつもより低めで暗いの声が聞こえてきた。
とりあえず、ここはできるだけ穏便に済ませられるように努めよう。
「あの~、青山さん。今どちらにいらっしゃいますか」
きっとこれ録音して家帰って聞いたら面白いだろうな。
『家だけど』
「ですよね」
だろうと思った。
『てかもう少し寝たいんだけど』
あー。寝起きだからそんなにご機嫌斜めなのね。
「いや、こっちに清水いるんだけど」
『私がデートのセッティングしてあげたんだから感謝しなさいよね』
いや、それならそうと事前に教えてくれよ。
後、俺への対応の雑さに磨きが掛かってきて来てませんか?
まぁ何はともあれ、今日は清水と二人っきりと。
俺の日常も穏やかじゃないな。
「それは、つまり」
『そうゆうわけだから、しっかりやりなさいよ。それじゃ、私もう少し寝るから』
俺の発言を遮られて無理矢理切られてしまった。
しかも、ちゃっかりもう掛けてくるなアピールまでされてしまった。
俺は大きなため息をついた。
要は考えようだ。
俺は今回、もうすぐ引っ越す清水に思い出作りをしてやればいいのだ。
そうゆうことなら、俺が引き受けたことなので納得がいく。
いい辻褄合わせだ。
俺はそんなことを考えてから、慌てて清水のいる場所に戻った。
「悪いな。待たせて」
「私も待たせてしまったので」
「それで、どうしてこうなったんだ?」
「金曜日に私が生徒会室で『最近ハル先輩来ないですね』みたいなこと言ったら、青山先輩が気を使ってくれて、こうゆう感じになってしまいました」
最後の方は若干俯き加減で言った。
なるほどな。
あいつ意外とそうゆうとこあるもんな。
俺にももっと優しく接してほしいものだ。
「やっぱり私じゃあれですよね?」
そう言って、清水は苦笑いを浮かべた。
まったくそんなことはない。
むしろこれはラッキーだな。
年齢=ぼっち歴のこの俺に遂にラブコメ展開到来か。
今日は結構寒いし、太陽が沈むまで遊んで、その後駅までの道のりでいいムードになってお互いを温めあうために手なんかつないじゃったりなんかして……
ないな。
俺に限ってそんなことは断じてない。
寒かったらポケットに手入れるし、それに手袋持って来てるし。
それにこうゆうのは、修学旅行や遠足と一緒で行くまでが一番楽しいやつだな。
行ったら意外とつまらなかったなんてよくあることだ。
まぁ俺の場合は、行くまでが一番憂鬱で、行ってみたら案外最後尾歩いてるだけで終わって、あんまり苦じゃなかったなんてよくあったけど。
「いや、今日あたり暇すぎて死にそうだったから、暇つぶしにはちょうどいい」
「せっかく2人きりなのにそんな言い方するなんて最低ですね」
「はいはい。そんなことよりどこ行くんだ?」
「ハル先輩の好きなところ連れてってください。ちゃんとかわいい後輩の女の子をエスコートしてくださいね」
マジかよ。俺こんな人が多いところほとんど来たことないんだけど。
それより今この人、ちゃっかり自分のこと可愛いとか言わなかったか?
てか、似たようなこと前にもあったな。
この辺りで俺の知ってるのは、本屋とアニメイトと映画館とゲーセンくらいか。
後は、S台、K合、T進、MCラボくらいだな。ってそれ全部進学塾じゃねえか。
まぁ俺は塾なんて通ってないけどな。
さて、どこに行けばいいのやら。
そこのリア充さん、help me!




