第3話 生徒会と秘密の部屋
「そうそう、私のテストのことはさておき、今日の議題についてですけど」
「結衣、あなたさっきゲームしよーとか言ってたわよね」
「どうゆう意味なんですか?」
「だからね、生徒会で放課中のゲームの取り締まりを行おうと思ったんですけど、私、ゲームとかしたことないし、自分がしたことないものを取り締まるのはどうかなぁ~と思いますし、ゲームがどんなものかを確認してみないことには、どうゆう取り締まりをしていいのかわからないし、それに、あとは、え~っと………」
全員、なんで会長がゲームをしよーなんて言ったかわかり呆れた顔だ。
つまり、会長はクラスのみんながゲームをしているのを見て、やってみたいと思ったけど、会長として教室でゲームをやるのはいかがなものかと思ったので、ゲームを取り締まるためという名目で、生徒会室でみんなとゲームがしたいってことだろ。
何て分かりやすい人なんだ。
「要はゲームがしたいってことでしょ」
流石青山。ってか誰でも分かるか。
「そ、そんなわけないじゃないですか」
会長が異を唱えているが、この動揺っぷりから察するに図星のようだ。
「会長。諦めてゲームがやりたいって言えばいいじゃないですか?」
「だから違うって言ってるじゃないですか!」
会長は虚しい抵抗を続けているが…もう無理だろ。
「まぁ会長の言い分はさておき、とりあえず、今日はゲームをするってことでいいですか?会長」
「まぁそうゆうことにしておきましょう」
「でも、何のゲームするのよ。 携帯ゲームならまだしも、ゲーム機なんて持ってないわよ」
「僕もゲーム機は持ってきてないし、それに僕携帯もスマホじゃないから、クラスのみんながやっているようなのはできないです」
確かに、俺もさすがにゲーム機は持ってきていない。
「そのことなら気にしないでください! 今日、学校に来る前に買ってきたんです」
そう言って、カバン中からそこそこの大きさの据え置き機を取り出した。
全員唖然とした表情で、据え置き機とその上に置かれたカセットを見つめた。
「あれ?みんなどうしたの? ゲームしないの?」
いやいやいやいや、どうしたの?は、こっちのセリフだよ!
「あー聞こえなかったの? 今日学校に来る前に買って来たんです」
「いや、それは聞こえてました」
「じゃあ、何が聞きたいんですか?」
「いや、それはだなー、……というか、まさかとは思いますが、そのゲーム機、生徒会の予算で買ったわけじゃないよな」
「いやいや、そんなわけないじゃないですか。ちゃんと私の自腹で買いましたよ」
「それはそれで怖いな」
こいつの金銭感覚どうなってるんだ
「まぁ、いいんじゃない。結衣の家お金持ちだし」
青山が何でもないような口調でさらっと言った。
「会長さん、お金持ちだったんですか?」
「へー。それは俺も初耳だな」
「そうなの? この前結衣の家に行ったときはびっくりしたわ」
この二人、初めて会ってからまだ二週間しか経ってないのにもうそんなに仲良くなってるのか。
「そ、そんなことはどうでもいいじゃないですか。それより早くゲームやりましょう」
「あ、でも生徒会室にテレビなんてありましたっけ?」
「確か涼香ちゃんと佳月くんの後ろの収納スペースにあったと思いますよ」
青山と佳月の後ろということは、俺の正面ということになるが、そこには壁しかない。
ついに会長も頭がおかしくなったんだな。
まぁもともとか
「会長さん、僕たちの後ろには、壁しかないですよ」
「そう言えば、みなさんはまだ知らなかったですね」
そう言って、会長が不思議そうに首をかしげている青山と佳月の後ろの壁に向かって立ち、
「えいっ‼」と言って、壁をスライドさせた。
すると、隣の収納スペース?への入り口があらわれた。。
「「えーーーーー!!」」
俺以外の二人は思わず叫んでいた。
俺も心の中では超叫んでた。
てか驚くのも当然だろ。
まさか、生徒会室にこんな隠された場所があるなんて誰も思わないだろ。
「か、会長さん、これは何なんですか?」
「あーここはですねー。まぁ物置部屋みたいなものです」
「というか、会長はその物置部屋の存在をなんで知ってたんだ?」
「それは、私が前期生徒会のメンバーだったからです!」
何この人。なんでこんなに偉そうなの?
「そう言えば、あんた前期は会計やってたって言ってたわね」
「そうなんです。この部屋の存在は先生方もほとんど知らないらしいのです。なので、他言無用でお願いします。実は前期生徒会の人たちからは、早めに教えておくようにって頼まれていたんですけど、すっかり忘れていました」
「もー、そうゆう大事なことはもっと早く言いなさいよね」
「すみませんでした。 それでは、私はテレビを探してきますね」
そう言って、会長は物置部屋のほうに行ってしまった。
「それにしても、どうして生徒会室にこんな隠し部屋みたいなところがあるのよ」
「同感だ」
全くこの学校はどうなってるんだよ。
俺は椅子から立ち上がり、物置部屋に向かった。
「宮本、どうしたんだ?」
「いや、テレビを一人運ぶのは大変そうだから、手伝ってやろうかなと思っただけだ」
「じゃあよろしく」
そう言って、物置部屋に入ってみると、まず思っていたよりも広くてきれいなことに驚いた。
さらに、おいてある物の数に驚いた。
なんせ、すごい量の物が置いてあるのだ。
というか、なんかすごいものが置いてあるな。
ぐるっと、周りを見回しただけでも、バットやサッカーボールといった部活で使いそうなものから、ソファーやキッチンといった日用品までいろいろなものがある。
キッチンの上には、しっかりと、換気扇までついているという始末だ。
もしかして、昔の生徒会役員は、生徒会室で生活してたんじゃないだろうか。
「あ、宮本くん!こっち来てテレビ運ぶの手伝ってくれませんか」
テレビは、ソファーの前に置いてあった。
「いいですけど、せっかくソファーの前にテレビがあるので、そのままでよくないですか?」
もっと頭を使え、頭を。
「それもそうですね。 じゃあ宮本君は二人を呼んできてもらえますか?私はテレビが使えるかどうか確かめておきますので」
「了解」
物置部屋から出ると、青山と佳月が二人で何やら楽しそうに話していた。
そう言えば、この二人だけで話しているところを見るの初めてじゃないか?
「あれ宮本、テレビはなかったの?」
「いや、あったんでけど、運ぶの大変そうだし中でやろうってことになった。 ていうか、お前ら意外と仲良かったんだな」
「青山先輩の話面白いんですよ」
「へー、どんな話してたんだ?」
「宮本春樹という人間がどれだけクズなのかについて話してたわ」
何そんなちょっといい笑顔で人の悪口しれーっと言っちゃってくれてるんですかね。
「青山先輩!そんな話してなかったですよね」
「まーねー。それより、早くあっちの部屋に行きましょ」
「そうですね」
俺たちはゲーム機やらコントローラーやらを持って、物置部屋らしからぬ物置部屋に移動した。
「うわー何ここ、凄いですね」
興奮して、はしゃいでる佳月はいつもの5割増しでかわいいなー
「宮本。あんた目が血走ってるわよ。キモイから変な妄想しないでもらえる?」
あー、いかんいかん。
落ち着け俺、佳月はああ見えても男だ。
冷静になれ、俺。
「そうだ。ここ生徒会なんだし、誰か冷静になるのおまじないでもしてくれるんじゃない」
「いやいや、この生徒会に歌って踊れるアイドルとかいないから」
「二人ともー、それくらいにしとかないと、後で怒られますよ」
「俺もか?」
俺の言い方なら、ぎりぎりセーフな気がするが、まぁいいか。
「そうね、この話はこれくらいにしておいたほうが良さそうね。私たちの存在が消されるのもまずいし」
いや、そんな怖いことしれっと言うなよ
「そ、それより、早く会長さんのところに行きませんか?」
「そうだな」
「宮本くん。ドアを閉めて生徒会室からはわからないようにしてもらえますか? 後、そっちに蛍光灯のスイッチがあると思うのでつけてもらえますか?」
「了解。 えーっとドアを閉めてっと、蛍光灯のスイッチは……これか」
蛍光灯をつけると、ほかの部屋と同じくらいの明るさになった。
「そのテレビ使えるんですか?」
そのテレビ、見ため超古そうだけど…
「少し古いですけど、ゲームするくらいなら使えると思いますよ」
「じゃあみんなでゲームするか」
「ゲームを始めるまでにだいぶ時間がかかってしまいましたね」
「そうですね」
「それあるー」
ぼっちの力なめんなよ。