第27話 見解の相違
少し冷たい風を感じながら、手すりに背中を預けていた。
まだ5時前だったが、既に夕日が眩しかった。
先生は手すりに肘をつき、俺とは逆の方を向いていて、右手にはコーヒーが握られていた。
白石先生に呼び止められてからここに来るまで、一言二言しか話さず基本は先生のヒールの音しか俺の耳には入ってこなかった。
今日は今すぐにでも帰りたい気分だ。
「…さっきのがお前の出した答えかね?」
「そうですね」
実際あのやり方が一番効率よくかつスピーディーで簡単だったと今でも思っている。
しかし、あれが最適だったかと言われれば言葉に詰まる。
きっと他の人なら、例えば城山ならもっと円滑に問題を解決できたかもしれない。
だが今回のように、少ない駒をできるだけ有効に使うことを考えた時に俺のやり方は決して間違っているとは思わないし、何ならMVP賞をもらってもいいくらいの貢献をした自信は少なからずある。
でも現実的に客観視した場合、そんな都合よくいくわけがない。
「…結果だけ見れば、明日はきっと君の思惑通りになるのだろう」
「でしょうね」
そう。明日はきっといい日になる。
おっと、つい口ずさみそうになってしまった。
「…でも私はあのやり方はあまり好きではないな」
「先生があのやり方に賛成したら終わりですよ」
「そうだな」
きっと先生はあの発言の意図を理解しているのだろう。
そして教師としてでなく一人の人間として俺のやり方にはあまり賛成できないのだろう。
実際俺もこんなやり方は好きではない。
何なら明日から金輪際学校に行きたくないレベルだ。
でも、こんな自分を憎みきれない自分がいるのもまた事実だ。
なんだかんだで俺はこんな自分が嫌いじゃないのだろう。
「…君はもっと周りを頼ったほうがいい」
「今回は菊地を頼ったじゃないですか」
「あれはただ利用しただけだろう」
利用しただけなことぐらい自分でも分かっていた。
あんなことで頼ったことになるはずがない。
「…きっと君はこれからも一人で考え行動するのだろうな。でもそれではいつか限界が来るだろう。その時にどうするかが一番重要になってくる。後、これは今回の件にも言えることだが、君が傷つくことで連鎖的に誰かを傷つけることにもなるということも覚えておいた方がいい」
最後に行ったことの意味は理解しているつもりだが、それが適応されるのは俺に友達やら恋人やらがいるという条件が必要になる。
だから、先生の言ったことは今回の件には当てはまらないだろう。
俺が責任を背負ったところで、だれも心配などしないだろう。
むしろそのほうが万事うまくいくのは目に見えている。
「…まぁせめて、君の近くで一人で抱え込んでいる人がいたら力になってほしい」
「その時考えます」
「そうか………もうそろそろ戻ろうか」
そう言って、先生は俺の肩をたたいて屋上の出入り口へと歩き出した。
もしかしたら先生も昔似たようなことがあったのかもしれない。
今の先生からは予想もつかないが、何となくそんなことが頭をよぎった。
もう、太陽はほとんど落ちていた。
もう少しここに居たいような居たくないような不思議な気分だった。




