第25話 責任と認識
午前中の授業が終わり、弁当を持って教室を出た。
まだ昨日の疲れが取れずあくびをしながら廊下を歩く。
廊下を大声で喋ったり笑いながら歩いているリア充どもの声が耳障りで自然とイラつく。
「今日は一段と機嫌が悪そーですな~」
振り向かなくても誰が誰に発した言葉か理解できた。
てか、それ誰の真似だよ。
俺は振り向かず、歩く速度を落とした。
「それはすみませんでした。お姫様」
俺は相手に聞こえるように、かつできるだけ小さな声で言った。
気遣いができる俺って超カッコいい。
まぁそんなのは冗談で、機嫌が悪いせいでつい嫌味を言ってしまった。
結衣も俺が何の言った意味を理解したらしく、軽く俯いた。
「その…すみません」
「悪い。今のはつい口が滑ったがけだ。別に深い意味はないから気にするな」
「はい…すみません…」
実際結衣が悪いわけではないし、結衣を責めたいわけでもなかった。
ただ少し疲れていただけだ。
こんなことで自分をコントロールできなくなるなんて、つくづく自分がみじめに思えてくる。
屋上のトビラの前に着くとすでに俺たち二人以外全員が揃っていた。
その中には清水もいた。
どうやら今日は学校に来られたようだ。
「遅いですよ。ハル先輩」
そう言えば、6人で昼食食べるのは、今日が初めてだったっけ。
俺の鍵で屋上へと入り、早速ランチパーティーとなった。
どうやら今日も清水は自分の小さい弁当のほかに皆に特大弁当を作ってきたようで、皆にあげていた。
今日何度目かわからないあくびをした。
「ハル先輩。寝不足ですか?」
「まぁそんなことろだ」
「じゃあ私の作ってきた卵焼きあげます」
そう言って、清水は俺の弁当に卵焼きを乗っけてきた。
「そりゃどうも」
その後は、できるだけいつも通り適当にみんなと会話をした。
そして、教室に戻ってすぐに机に突っ伏して寝た。
そのまま午後の授業もほとんど寝ていたため、放課後には体力はいつも通りに戻っていた。
今日も実行委員の仕事だがその前にいったん生徒会室に寄るか。
生徒会室に入ると、佳月以外の全員がいた。勿論、その中には清水もいた。
俺が来たのを確認すると青山が席を立った。
「それじゃあ後はよろしくね」
「はい」
どうやら、青山は俺が来るのを待っていたようだ。
多分場所がわからないとかそうゆう理由だろうけど
「ほら、宮本。さっさと行くわよ」
「わかってるよ」
会議室の中には両手で数えられる人数しかいなかった。
勿論、その中に菊地もいた。
菊地は俺に気づくと席を立ってこっちに歩いてきた。
「先輩。今日も来てくれたんですね。あ、後そちらの人もありがとうどざいます」
「今日も人少ないなー」
「もう正直慣れました」
いや、慣れていいの?
慣れちゃダメだろ。
「そう言えば、ポスターの件ありがとうございました。先輩の趣味がどうであれ、結構皆、ミスコンに興味持ってくれたみたいです」
俺の趣味とはきっと、あのポスターに貼ってあるキャラクターのことを言っているんだろう。
結構考えたんだけどなー
まぁでも作戦は成功らしい。
「そりゃ良かった」
「…それじゃあ、今日も仕事お願いしますね」
「はいよ」
青山に適当にやり方を教えて、自分の作業に集中した。
こうゆう仕事ばかりしていると、つくづく自分がこうゆう仕事に向いているんじゃないかと思えてくる。
現にここにいる中では、仕事スピードは1番早いと言っても過言ではないだろう。
常に、働きたくないとか思っている俺だが、この調子だと会社で中途半端に仕事ができるため、上司にこき使われている自分が容易に想像できて怖い。
仕事をしている間にも、クラスや部活から出し物の申請やら確認やらがどんどん来て、仕事は一向に減る見込みがない。
人が出入りする気配が消えて、しばらくして時計を見ると6時少し前だった。
他のメンバーもほとんど帰ったようだ。
俺は菊地の方へ歩いて行った。
まぁ昨日は俺のせいで菊地の帰りが遅くなったわけだし。
「菊地。もうそろそろ終わりにするか?」
「…私は後30分くらいやっていきます。先輩たちは先に帰っててもいいですよ」
「いや、付き合うよ」
俺は自分の持ち場に戻って仕事を再開した。
結局帰るのは昨日と同じ時間だな。
横では青山が黙々と仕事をしていた。
こいつも意外と真面目なんだよな。見た目の割に。
そして、できるだけ誰にも頼ろうとしない。
一人で出来ると思ったことは限界まで一人でやる。
きっと、こいつはもともとこうゆうやつなのだろう。
誰かが指摘して治るようなものではない。
だいたい、人はそんな簡単には変わらない。
簡単に変わることが出来るなら、俺は今頃こんな風にはなっていない。
だいたい30分が経った辺りで菊地が片付け始めたので、俺は青山の肩をたたいて、片付けを始めた。
流石にこの時間になると、俺たち3人以外は誰もいなくなっていた。
「今日も遅くまでありがとうございました。明日は一応全員揃っての会議ですので、暇でしたら来てもらえると助かります」
「あーそのことなんだけど。明日会議の時、俺のこと皆に紹介してくれないか?」
「ま、まぁそれくらいならいいですけど」
「悪いな。鍵は任せてもいいか?」
「はい。それじゃあさようなら」
「あぁ。また明日」
そう言って、俺と青山は生徒会室へと行くため、階段へと向かった。
「…私、あの人少し苦手だわ」
「だろうな」
誰だって嫌いなものの一つや二つや三つや百個くらいはあるだろう。
リア充とかリア充とかリア充とか……
だからそれに関してとやかく言うことはしない。
「…でも悪いやつじゃないだろ」
「………そうね」
生徒会室に行くとすでに鍵は閉まっていた。
「私、生徒会室に置き忘れたものがあるから、先帰ってていいわよ」
「そうかい。じゃあお先に」
「また明日」
そう言って、俺は中央階段の方へ戻り、青山はすぐ近くの階段を使って下へ降りた。
人が良かれと思ってやっていることに、色々と口を出すつもりはないし、そうする権利も俺にはない。
きっと、あいつはまた一人でやろうとしているのだろう。




