第23話 それぞれのハイド
俺たちは荷物まとめて会議室を出た。
「今日はありがとうございました」
「まぁ白石先生の頼みだからな。それで、これは毎日あるのか?」
「はい。明後日には一回全員集めて、作業の進捗状況とか、諸々話し合う予定です。」
働きたくないがモットーの俺がどうして人一倍働かなきゃいけないんだよ。
何かの陰謀?
そしたら100%白石先生が黒幕だろうな。
あの人がボスだったらエクスカリバーとかあっても倒せそうにないな。
何かあの人精神攻撃とか超強そうだし。
「そうか。…俺、生徒会室寄ってくから」
「わかりました。じゃあここで」
「また明日な」
そう言うと菊地は軽くお辞儀をしてから、エントランスの方へと少し歩いたところで何かを思い出したかのように、こちらを向いた。
「先輩!ポスターの方もお願いしますねー」
そう言えばそんなのもあったな。
思い出して超憂鬱になっちゃったじゃねえか。
ちゃんと残業手当とかあるんだろうな。
「おう」
菊地は俺の返事を聞くと再びエントランスの方へと歩き出した。
さてと、生徒会室に戻るか。
流石にこの時間だと誰もいないだろうが、荷物が置いてあるし、それに生徒会の仕事もまだ結構あるだろうし。
生徒会室のドアを開けると、まだ一人仕事をしている人がいた。
どうやら待ってくれていたようだ。
「まだやってたのか」
「別にやることたくさんあったから気にしなくていいわよ。でも後5分遅かったらあんたの荷物、窓から放り投げて帰るところだったわ」
青山は書類に視線を向けたまま言った。
てか、青山ならホントにやりかねないから怖いな。
「そりゃ、お互い労力の節約になってよかったな」
「…それで、そっちはどうだったの?」
安定の無視ですか。
まぁこいつの場合だと俺のこと安定の虫ぐらいにしか思ってなさそうだけど。
「状況としてはこっちより悪いな」
「そう」
青山はやっと書類から目を話して、帰り支度をし始めた。
「私も明日からそっちに顔出すわ。菊地さんは生徒会に相談しに来たわけだし、あなた一人に任せておくのは生徒会の信頼に関わるから」
それは、遠回しに俺では信頼できないと言ってるんですよね。
悪いが俺の、言葉の裏を読む能力を侮ってもらっては困る。
bihind the words選手権とかあったら、全国大会準決勝くらいまでいける自信がある。
でも今の発言は直接俺が信頼に値しないって言ってるかも。
「悪かったな、俺が信頼できなくて」
「あら、そんなこと言ってないわよ。自分が信頼に値する人間ではないという自覚があるからそうゆう解釈になるのよ」
正論だから否定できない。
「……まぁでも、お前が来てくれるのは助かる。だけど生徒会の方は大丈夫なのか」
そう言って、残りの仕事量を確認したら意外と少なかった。
てか、こんなに少なかったっけ。
まぁ仕事がないのはいいことだ。
「案外少なくなったし、それに明日からは結衣も顔出せるって言ってたしみどりが来たらあの子にも生徒会の仕事をやらせればいいわ。佳月も来週から一週間は部活休みになるって言ってたし何とかなるでしょ」
「そうか。何から何まで悪いな」
不本意ではあるが状況が状況なので仕方ない。
今、青山は何とかなると言ったが、そう言って何ともならなくなった時が一番怖い。
まぁでも実際、今回は何とかなりそうなので大丈夫だろう。
実行委員の方も一応策はあるし。
「別にあんたのためじゃないし」
出たー。青山のツ・ン・ド・ラ
あ、それはケッペンの気候区分か。
まぁでも、青山をケッペンの気候区分に分けたら、間違いなくツンドラ気候だろうな。略してET気候。
ちなみに俺は西岸海洋性気候くらいだな。
日本より最高気温は高くないが、基本温暖で一年を通しての気温と降水量の差が少ない。
俺にぴったりじゃんか。
何?俺のためにわざわざ作ってくれたのかな。
そんなことを考えているうちに青山は帰る準備が出来たようだ。
「待たせて悪かったわね。それじゃ、帰りましょ」
待たせたのは俺なんだけどな。
「そうだな」
そう言って俺たちは生徒会室の鍵を閉め職員室に鍵を返してから、駅へと向かった。
その間、基本二人の間に会話はなかった。
けれど、リア充どもはこうゆう空間を気まずいと感じるのだろうが、俺はそうは思わない。
むしろ、この感じのほうが落ち着く。
下手に話を展開しようとしていろいろ考えるのは単なる労力の無駄としか考えられない。
俺たちはちょうど駅のホームに来た電車に乗り込んだ。
青山も同じような考えなのかこの状況を苦だとは思っていないようだった。
案外俺たちって似ているのかもしれないな。
柄にもなくそんなことを思いながら、…あ、今のはギャグじゃないから気にするなよ。
柄にもなくそんなことを思いながら、いつもより大きく見える青山のバックに視線を移した。
バックと言っても背中じゃなくてカバンのほうな。
青山が降りる駅に着いた。
「じゃあ、また明日」
青山は少しこっちを見て別れの挨拶をした。
「じゃあな」
青山が降り、扉が閉まり、電車が発車した。
さっき以上に電車の揺れる音が鮮明に聞こえるような気がした。
ポケットに手を入れると、手に何やら細い金属の物が当たった。
それが何なのかは確認しなくても分かった。
今日、清水は学校に来ていなかった。
なので昼食は屋上で4人で食べた。
明日は来れるのだろうか?
でも、まだ二週間もあるし、清水には申し訳ないが学校に来ても生徒会では仕事をやってもらうことになるのだろう。
とは言っても最初はそのつもりだったし、清水もそのつもりだと思うから心配はないだろう。
最寄り駅に着き、電車を降りると思ったよりひんやりと冷たい風が吹きつけた。
冬も近いのだろうか…?




