第21話 アクセルを踏む場所は?
菊地に連れられて向かった場所は一階の会議室だった。
会議室に入ると、中には10人ぐらいの生徒と白石先生がいた。
皆、書類やらパソコンやらを見ている。
こころなしかどこか緩んでいるのを感じる。
まぁ真面目に堅苦しい仕事なんてできるわけないんだけどさ。
中にいた人たちは、ドアが開く音で一瞬こちらを見たが、誰が入ってきたかを確認するとすぐに視線を戻した。
白石先生は俺に気づくと、ニコッと微笑んだ。
いや年の割に意外と可愛いけど、そんなサービスするくらいなら生徒会に余計なもの持ってこないでもらえませんかね。
それにしても人少なすぎるだろ。
確か実行委員って各クラスから2人ずつ出すんじゃなかったっけ。
一年と二年合わせて12クラスだから本来なら24人いるはずだよな。
まぁでも、こんなことやりたくないという心理は分からないでもない。
要は頑張る場所の問題なのだ。
こんなことろで頑張っても、何の得にもならないから、誰も自分のことなど見てくれていないから、変わりはいくらでもいるから。
だから自分だけの役割があり、自分の存在意義を見出せるクラスの出し物の準備や部活動を優先して、そこで頑張ろうとするのだろう。
そして、いざ何かあった時の責任から逃れるための布石を打つために、たまに来てあたかも仕事やってますオーラを出してまたしばらく来なくなる。
おそらく、その結果が今のこの状況を招いているのだろう。
過程なんて聞かなくても大体予想がつく。
そして真面目で純粋な人ほど損をする。
まぁここに真面目な人が何人いるかわからんが…。
いつの時代だって真面目なふりをした、ずる賢い人ほど他の人を上手く踏み台にして上に上がっていく。
ホント、ぼっちにはきつい世の中だよな。
「先輩。とりあえずこれやってもらえますか?席は適当に開いてること座っちゃってください」
そう言って、菊地は紙の束の半分を俺に渡してきた。
何?菊地もちゃんと仕事やるの?
…意外と真面目なやつなんだな。
となると、今回の被害者はこいつか。
あ、後、俺を含めた生徒会な。
「了解」
まぁこの状況だとこれくらいやらされるわな。
まぁ生徒会室にいてもさほどやることは変わらないしいいか。
とは言ってもこの程度の量なら、この数週間に散々生徒会でやらされた仕事量と比べればさほど大した量ではない。
30分ぐらいでパパッと仕事を終わらせて、伸びをしていると後ろから声をかけられた。
「あれ?もう終わったんですか? もしかして先輩って仕事できるタイプの人ですかー?」
振り向くと、菊地がすごく意外そうな顔でこっちを見ていた。
「まぁな」
てか、俺が仕事できるのがそんなに意外かよ。
でも確かに、鏡に向かって、僕は仕事できます。なんて言ったら、噓だろ。とか反射的に言う自信あるわ。
「それじゃあ、あそこの束の一番右のやつやってもらえますか?」
菊地は書類が置いてあるところを指さして言った。
「はいよ」
さっきと同じくらいの量を取ってきて仕事を再開した。
さっきと同じ要領で仕事を再開した。
だが、さっきと明らかに違うものがあった。
他の人たちの視線が度々俺に向けられるのだ。
生憎、他人の訳わからない視線の対処には慣れているのだ。
周りの状況をなるべくシャットアウトして、目の前の仕事に集中する。
これが俺流のゾーン。
名付けて、ぼっちゾーン。…何かすげぇ弱そうだな。
出れだけ経ったか分からないが、持ってきた書類が終わったので新しい書類を取りに行こうと顔を上げ、席を立って、周りを見渡した。
すると、驚くことに会議室には俺と菊地を抜くと3人しかいなくなっていた。
菊地と目が合うと、菊地は困ったような顔でほほ笑んだ。
俺はいったん書類を自分の机に持っていき、そして菊地の座っている方へ行った。
「ちょっといいか」
そう菊地に言って、俺は会議室を出た。




