第12話 生徒会に新メンバー?
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妹と仲直りをしてからの二週間はあっという間だった。
大量の生徒会の仕事に追われながらも、すぐ近くに迫った定期テストの勉強もしなければならなく、一日一日があっという間に過ぎていった。
テスト期間中にも生徒会で少し仕事をして、みんなで勉強会をしたり、忙したっかが、俺のこれまでの人生の中ではそこそこ充実していたほうだと感じている。
将来、仕事するのめんどくさいなぁ、なんて思っていたが、もしかすると働いてみたら案外楽しいんじゃないか、なんて思ったりもしたが、上司に合わせたり、上司の言う通りに動いたり、上司の代わりに謝ったり、理不尽に上司に怒られたり、……そんなことを想像すると、やはり俺が働くなんて間違っている、という俺のこれまでのスタンスに戻ってきてしまう。
そんなこんなで、定期テストが終わり、超絶怒涛のテスト返却も終わり、いつもよりいい点数に上機嫌で生徒会室のドアを開けると、これまた見るからに上機嫌そうな結衣と青山に、いつもと変わらない愛くるしい様子の佳月がいた。
どうやら、みんなテストの結果はそこそこよかったみたいだ。
「お、みんないるみたいね」
後ろから声がしたので、振り向くと、そこには生徒会顧問の白石先生がいた。
「白石先生、何かありましたか?」
「いや、また申請書やらなんやらの紙が職員室に大量にあるから、運ぶの手伝ってくれ」
「まだあるのかよ。 テスト前にも相当やりましたよね。ていうか、今時書類の確認を生徒会に丸投げする学校なんて他にないですよね」
知らんけど。
他の学校に友達なんていないし。
「たぶんないわね。」
だろうな。
「まぁしょうがないんじゃない。うちの学校は自主性がモットーなんだから」
「それ、誰が決めたんですか?」
「偉い人たちが決めたのよ」
自主性を行う人と決める人が違ったら、それってもはや自主性じゃなくて強制だろ。
「何のために?」
「そりゃ、自分たちの仕事を少しでも減らしたいからに決まってるでしょ」
「それ、教師としてどうなんですか?」
「知らないわよ。そんなの!」
「あんたも一応、教師ですよね」
「そう言えば、もう一つあるんだった」
「無視かよ。っていうか、まだ何かあるんですか?」
「いや、今度はいい話だ」
いい話だと言われたとたんに俺以外の三人が顔を上げた。
こいつら、嫌な話は全部俺に丸投げで、いい話だけ首突っ込んでくるのかよ。
どこの上司だよ!
「実は、これから文化祭に向けて今まで以上に忙しくなると思うんだが、」
そこまで言うと、三人は再び俯きだした。
そう言えば、もう三週間後には文化祭だったな。
てか、こいつら生徒会役員の自覚なしすぎないか
「そこで、新メンバーを一人入れようと思う」
「「「「え?」」」」
真面目に聞いていた俺も、聞くのを放棄しようとしていた三人も、同時に驚きのまなざしで先生を見た。
「あのー先生、どうゆうことですか?」
「もともと副会長の定員は二人でな」
「それで副会長をもう一人入れろ、と」
「まぁそう言うことだ」
「生徒会に途中から入るのっていいんですか?」
「構わん。うちの学校の生徒会は人気がないからな」
「確かに人気がないのは知ってますけど…」
なんせ、俺がこの学校に入学してから今まで、一度も生徒会の役員選挙を行ったことがないくらいだ。
人気がないのは、容易に察しが付く。
それどころか、俺なんか、メンバーが足りないからって白石先生に無理やり生徒会に入れられたんだからな。
理不尽もいいところだ。
「先生。それで新しいメンバーは誰でもいいんですか?」
「いや、メンバーはこっちで決めておいた」
「誰なんですか?」
「1年3組の清水みどり だ」
知らない人だった。
というか、同じクラスの人でさえ知らない人がいるのに、違う学年のやつなんて知ってるはずがない。
「佳月、知ってるか?」
「知らないです」
「私も知らないです」
「私も」
どうやら、誰も知らないみたいだ。
せっかくこの四人でいい感じになってきたのに、このタイミングで人員補充とかめんどくさいなー
「そうゆうわけだから。ちなみに清水には、このこと話してないから。あ、後、忘れずに職員室に書類取りに行ってねー。今度からは、生徒会室に書類おいておくように手配しておくから、今回だけよろしく」
そう言って、白石先生は、生徒会室を出ていってしまった。
え?清水さんの件は丸投げってこと?
ていうか、話通しておいてくれないの?
いちから説得するってこと?
マジかよ!
全員呆然としていた。
「え、えーっと。とりあえず俺が明日、そいつのクラスに行って話してみるわ」
「宮本先輩、行ってくれるんですか?」
「暇だしな」
とりあえず、今日は文化祭で使う出し物やら、予算やらのことであっという間に過ぎていった。
それにしても、書類の量がこの前よりさらに多いんですけど。
確かにこれなら、もう一人と言わず、後三人ぐらい人手が欲しいくらいだ。
* * * * * * * *
次の日の昼休み、
俺は階段を下りて、一年生のフロアである二階の廊下を歩いていた。
それにしても、どうして俺はあの時自分が清水さんを迎えに行くなんて言ったんだろう。
そもそも俺はそんなにコミュニケーション能力高くないし、まして初対面の女子なんかとまともに話せるはずがなかった。
そんなことを考えていると、3組の教室にたどり着いた。
とりあえず、同じクラスっぽい人に聞いてみよう。
「あのー、すみません。清水みどりさんっている?」
「あ、はい。 清水さーん」
そう言うと、一番後ろで一番窓側の席に座っていたロングヘアーの女子がこちらを向いた。
「お客さん!」
そう言いながら、クラスの中に戻っていった。
俺はとりあえず、その清水さんと思われる人物に軽く頭を下げた。
すると、その人は席を立って、不思議そうにこっちに向かって少し速足で歩いてきた。
「え、えっと、清水みどりさん、ですか?」
「はい、そうですけど」
「えっと、はは初めまして、2年で副会長の宮本春樹です」
「初めまして、1年の清水みどりです。それで、私に何か用事ですか?」
清水さんは、落ち着いた感じの声で俺に尋ねた。
「あ、えっと、白石先生から何か聞いてない?」
「いえ、特には」
ですよねー
「えっと、急な話なんだけど、、、」
「それ結構長い話ですか?」
肝心なことを言おうとした時に先に質問されてしまった。
「まぁ多分」
何か予定でも入っていたのだろうか?
それなら放課後に出直すべきか。
「それでしたら、こんなことろで立ち話もなんですし、一緒にお昼を食べながらゆっくり話しませんか?」
「え?」
女子と昼飯?二人でか?しかも初対面の下級生の女子と?
まぁ確かに、この前青山と二人で昼食は食べたが、あれは強制的に連れてかれたわけであって、不可抗力というか、、てか俺動揺しすぎじゃないのか、こうゆう時こそ冷静にならないと!
「あ、嫌ならいいんです。急に変なお願いしてしまってすみません」
こうゆう場合はどうすればいいんだ?
こんな経験ないからサッパリわからん。
一緒に昼食を食べたほうがいいのか? それとも、ここで話したほうがいいのか?
誰か、対人経験豊富なリア充に代わってほしい気分だ。
まぁ、でも人の行為は素直に受け取っておくに越したことはないだろう。
うん、きっとそうに違いない。
「まぁ暇だし昼食ついでにゆっくり話すか」
「本当ですか?」
「あぁ。 そうゆうことなら、俺、弁当取りに戻ってくるわ」
「それじゃあ、そこの階段で待ってますね」
そう言って清水さんは俺が下りてきた階段を指さした。
「わかった」
そう言うと、清水さんとはいったん別れて、俺は速足で教室まで弁当を取りに戻った。
教室へ弁当を取りに行き、階段を降りようとすると、清水さんが三階に上がってきた。
清水さんは俺に気づくと「あ、先輩。こっちです」と言ってさらに上の階へ上がっていったので、俺は後について行った。
清水さんは三年生のフロアである四階も通り越して、階段を上がっていった。
すると、鍵のかかった部屋、じゃなくていつも鍵のかかっている、おそらく屋上へと続いているトビラが見えた。
確かにここなら、狭いし、若干薄暗いし、何より誰も来そうじゃないし、いつも教室で一人でいる俺にはぴったりの昼食スペースだ、もしかして清水さんは事前に俺のこと下調べしていたんじゃないだろうか? なんて冗談交じりに考えていると、清水さんはポケットから鍵を取り出し、トビラを開けたのだった。
そして、何食わぬ顔でトビラを開けた。
やはり扉の向こうには屋上が広がっていた。
清水さんは、屋上に一歩足を踏み入れてそして、俺のほうを振り向いて言った。
「びっくりしました?」
そう言って清水さんは風で髪をなびかせながら、笑みを浮かべた。
つい見とれてしまった。
「あ、あぁ」
俺はなんとか返事をした。
っていうか、何見とれてるんだ。
しかも今日初めて会った下級生に。
自分をしっかり持つんだ宮本春樹。
今のはきっと、屋上を初めて見たという興奮から、屋上に見入ってしまっただけに違いない。
うん、きっとそうだ。そうゆうことにしておこう
「そ、それより、なんで屋上の鍵持ってるんだ?」
屋上に上がり、一通り周りを見回してから言った。
「ヒミツです。ほら、ミステリアスな女の子は魅力的って言いますし」
何か事情でもあるのだろうか?
気になるが、本人が言いたくないのならこれ以上言及するのは止めておこう。
「まぁ確かに、そうゆうこともあるかもな」
「それにしても、いい場所だな」
「ですよね。ここ、私のお気に入りの場所なんです。よくここでお弁当食べるんです。今日もここで食べる予定でした」
「一人でか?」
「女の子にいきなりそんなこと聞くなんてデリカシーないですね」
「いや、悪い」
「それより、早くお昼ご飯食べませんか?」
「そうだな」
そう言って、俺たちは向かい合って座り、弁当を広げ始めた。
「一応もう一度、自己紹介しておきますね。1年3組の清水みどりです。みどりでいいですよ」
何? 最近女子の中で、名前で呼ぶの流行ってるの?
「いや、いきなり名前で呼ぶのは俺にはハードル高すぎるから清水でもいいか?」
「いいですよ」
「えっと、2年3組の宮本春樹です」
「じゃあ宮本先輩で」
「好きに呼んでくれ」
「そうゆうことならやっぱりハルピョンで!」
「いや、それは止めてくれ」
「そうですか。 それならミヤッペで」
「できれば、普通のにしてくれないか」
「じゃあ、お兄ちゃん、とか」
清水は、はにかみながら言った。
「却下だ。…だが悪くないな。うん」
「言った私が恥ずかしかったので止めておきます」
「そうだな。もっと普通ので頼む」
「それならハル先輩で」
「まぁ、それならいいか」
「わかりました。それじゃあこれからはハル先輩で」
「あぁ」
だいぶ話しやすそうな感じの女の子なので助かった。
それにしてもここから、どう話を切り出したらいいのやら