6.オアシスです。
元彼(?)と距離を取るようになって暇になった私は、ペットを飼う事にした。
私はおじいちゃんっ子だ。両親共働きで不在な事が多かったから、祖父母に面倒を見て貰う事が多かった所為だ。テレビ番組のチョイスは完全にその影響。
大好きだった祖母が他界した後、祖父は田舎へ引っ越した。田舎って言っても都内ですけどね。そこで畑を作ったりペットを飼うようになって……生まれた仔を一匹譲ってもらったのだ。
「うータン、ただいま~~!」
疲れ切って項垂れた私は、それでも気力を振り絞ってバババと早着替え。惣菜で簡単にご飯をすませて部屋の守りを固めてから、ケージに収まっていた白い毛玉を放った。
私の愛兎、うータン。おそらく二歳くらい。
たぶんミニレッキス?じゃないかって、思う。手触りがトロトロだし、ネットで色々調べたら形が似ているから。全体が白くて耳がほんのりベージュのようなオレンジのような。鼻の横にも小さなオレンジの点がある。雌同士と思って貰った二匹のうさぎの一方のお腹がいつの間にか膨らんでいて、つがいである事が判明!その内の一匹を引き取る事になった。
彼氏と別れ(?)て、暇になった私に渡りに船の話だ。すぐに乗っかった。
「おやつだよ~!」
そう言ってセロリの葉っぱを差し出すと、パッタパッタと近寄って来て鼻を差し出す様に近づけてフンフンと匂いを嗅ぎ、ポシポシポシ……と齧り始めた。
「うおーかわええ……ああ……亀田にザックリ着られた生傷が癒えて行くよ……」
『カメダ』?ってダレソレ?ナンだっけ?
も~知らん!ここにはいない何かだ!記憶から削除~!
今私の頭を占めるのは、この真っ白な美しい毛並みを持つ……うータンだけ。
彼氏と別れて(?)寂しくなってしまった傷心の私を―――おじいちゃんが託してくれたこの子が寄り添って癒してくれたのよ。今は彼女のいない生活なんて、考えられない。仕事の理不尽もストレスも、合コンに誘われない孤独も全てうータンに掛かればリセットされちゃうんだ。
半ばまで口の中へ消えたセロリの葉っぱから手を離すと、そのままポシポシと揺れながらドンドンうータンの小さな口の中へ吸い込まれていく。
「うータンは、魔法使いなのかな~?セロリ、アッと言う間に消えちゃったねぇ!」
オヤツタイムが終わったら、ナデナデたーいむ!
私は座椅子に腰掛け、うータンを太腿の間に挟むように乗せてゆっくりと鼻の頭から首、胴体へと撫でさすり始める。両手で交互に、ねっとりと。それがうータンのお気に入りの撫で方。そうして徐々にスピードを上げて行く。すると更にうータンは気持ちよさそうにウットリと体を伸ばすのだ。
ああ……至福……。
この世の極楽がここにある。
誰かを今、全力で幸せにしていると言う実感が―――さらに私を幸福の高みへ連れて行くのよ……!
よおーっし、浄化&チャージ完了……!
亀田め!
幾らアイツがベキベキと容赦なくへし折ったって、私の心は不死鳥のように復活するのだ……!
だって私にはこんな素敵なオアシスがあるからね……!
よっし、明日もお仕事、頑張るぞ~~!




