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捕獲されました。[連載版]  作者: ねがえり太郎
結婚するまでのお話 <大谷視点>
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10.再び、婚約者様のお帰りです。



二週間が過ぎて、仙台から丈さんが帰って来た。


不在にしていた期間が長かった為か、相変わらずお仕事の方が忙しい。邪魔をしたくないので、寝る前にメッセージを入れる以外こちらからはあまり連絡をしないようにしている。そして大抵返事があるのは翌朝だ。ただ週末ちょっとだけでも会いたいなって気持ちもあって、頃合いを見て都合を尋ねた。


『土曜日の午後からOK』


と、丈さんからの短い返信に朝になって気が付いた。昨日のお昼にメッセージを入れたんだけど、なかなか既読が付かなくてジリジリしていたんだ。これならやっぱりお休みメッセージを送る時に纏めて聞けば良かった。きっと忙しくて私用のスマホを見る暇も無かったんだろうな。


営業企画部長の体調って直ったのかな?もしかしてまた応援に行かなきゃならなかったりする?―――なんて聞きたいコトはいっぱいあるんだけど、こんな状態の丈さんに長文を送るのは憚られた。本当の本当に聞きたいのはそんな事じゃないから余計にもどかしい。


そんなこんなで土曜日の午後、「珍しく家でゆっくり出来るな~何処か出掛けたいなあ~でも一人じゃなぁ」なんて謎のアピールをするパパを振り切って、丈さんの部屋に向かった。勿論うータンも一緒だ。







「お疲れ様、仙台どうだった?」

「……暑かった」


何故か丈さんが仙台に降り立ったその日から真夏日が続いて、下手したら東京より暑い日もあったらしい。

お土産はカスタードクリームが入ったふわふわのカステラで包んだ仙台の銘菓。おお、大好きです。似たような商品は日本各地にあるけど、仙台に行くとコレ、つい買っちゃう。他にも美味しい物はいっぱいあるんだけど、渡すタイミングが読めない場合は常温保存できるお土産が有難いよね。


「わ~有難う!」

「『しもばしら』じゃなくてすまなかったな」


覚えていてくれたんだ。ママが買って来たお菓子のコト。あれ、冬にしか売って無いんだよね、確か。


「もう少し珍しい物を買って来たかったんだが」

「忙しいんだから気にしないで。私、これ大好きだよ!嬉しいな」

「そうか」


ホッと安堵の微笑みを浮かべる丈さん。そんな状態でもうータンを撫で続けている……器用だな。ウサギ欠乏症で派遣の女の子(私のコトです)の家に押し掛けるくらいのウサギ好きだから、二週間もウサギに触れられなくて辛かったのかもしれない。そろそろ禁断症状が出始める頃だろう。


「えーと、お仕事はどうでした?」


何故か敬語に戻ってしまう。仕事の話だから昔の気分に戻ってしまったのか、それとも元カノの話に踏み込むか踏み込まないか微妙な部分だからつい緊張してしまうのか……。


「ああ、何とかなったよ。部長も復帰したと連絡があったし、向こうも落ち着いたようだ」


ん?……と言う事は元カノとは会ってないのかな?復帰したのは丈さんが戻ってからって事だよね。そうか、そうだよね。部長不在―――だからこその応援なのだし!

胸の閊えが降りたような気がした。全く……私って考え過ぎなんだから。


そっかそっか、うん。そうだと思った……!


その日私は怪しいくらいご機嫌だったと思う。

だって久し振りの逢瀬だもんね!会わない時間が愛を育てるって言うけれど、私に至っては当て嵌まらない!やっぱ顔を会わせてこそ!一緒にいる時間が愛を育むのだ!







なーんて盛り上がった翌日の夕方、パパの家に戻った私はズーンと落ち込んでいた。でもこの間喧嘩をしてしまった後の教訓を踏まえて気分や不安に振り回されないように平常心を心掛けていたから、多少ぎこちないかもしれないけれど、波風も無く表面上は穏やかに笑顔で丈さんの部屋の玄関で手を振る事ができた。


これは……うータンを撫でて気持ちを落ち着けるしかない。


しかしなかなか思うように心は休まらない。思えば丈さんと付き合う前なら―――どんな時でもうータンを愛でれば立ちどころに気持ちはスッキリしたものなのに。




何故私がこんなに落ち込んでいるかと言うと―――


丈さんが同居の買い物に後ろ向きだからだ。

買い物に行こうと誘うと少し迷った素振りを見せた。その時はそれほど変には思わなかった。疲れているのかな?と思ったくらい。


だけど本格的に家具屋さんを回っている時「もうベッド買い替えちゃおうか?」って私が冗談で提案したら、うーんと唸った後暫く黙り込み「いや、止めておこう」ってキッパリ断られてしまったのだ。


いや、私も本気で言ったわけじゃ無いよ?ただ笑って欲しかっただけなのに。「まだ早いだろ?」「そっか、そうだよね~!」なんてふざけた遣り取りをしたかっただけなのに……真面目顔で断られてしまった。

それから電化製品を見ている時、高機能の大きな冷蔵庫を見ていて「こんなの欲しいかも(これも冗談半分だよ!予算とかまだ相談していないし!)」って言ったら「……もう少し考えてからにしよう」ってまたしても本気で窘められてしまった。




え?……私達……一緒に暮らすんだよね?四月から。

そりゃまだ十分時間もあるし、確かに今直ぐ家具を揃えるのは早いっちゃー早いけど。決算時期に買ったら安くなるとか、引越の重なる春は品薄だし価格もそれなりだから早めに揃えた方が良いって言っていたのは丈さんなのに……。




まさか……元カノと復縁するから、結婚は取り止めたい。

―――なんて、丈さんそんな事……考えていないよね?




川北さんの呪いが現実になったりしないよね……?!



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