不安
時々とてつもなく不安になることがある。
あやちゃんもやがて私を置いて去ってしまうんじゃないか、私は置いてけぼりにされるんじゃないかって。
…ぃやだ。置いてかないで…!!
もしも本当にそうなったら、私は深く落ち込むだろう。だから、そんなとき私は自分を守るため攻撃的になってしまうの。必要とされなくなる前に私の方から見切りをつけるくらいの勢いで。でも、実際そんなことは難しくてあやちゃんが好き過ぎる私はあやちゃんを嫌いにはなれなくて。結局拗ねるという、一番やっかいな所へ落ち着く。
現にさっきから何度かあやちゃんが私を呼んでいるけれどそっぽを向いて聞こえないフリをしている。
「藍ちゃん!!!」
さすがにその大声で呼ばれたら聞こえないフリはできない。だからすごくそっけなく返した。
「なに」
「藍ちゃんずっと呼んでるのにボーとしてるから」
「ふーん」
できるだけ会話を打ち切りたかった。私は怒っているんだぞとあやちゃんに分からせたかった。それなのにあやちゃんは服が少し触れ合うくらいに近くに寄って、大きな瞳で見つめてくる。どうしたの?というように。
「藍ちゃん?なんか怒ってる?」
「うん」
そうだよ。私は怒っている。
「なんで?私なんかしたかな?」
理由は教えてあげないつもりだったけど、そんな潤んだ瞳で見つめられたら気持ちがゆるんでしまう。
「だって…さっき他の子とどこ行ってたの」
「えっ3組の教室に行ってそのクラスの子と少し話してたけど」
「…」
「ごめん。なにかダメだった?」
「(行かないで)」
思わず心の声が微かな声となって出た。
「えっ?」
「置いていかれた」
「…あごめんその時藍ちゃんいなかったから」
「トイレ行ってただけだもん。すぐ戻ったし。そしたらあやちゃんいなかった。」
「…」
「ずっと待ってた。あやちゃん帰ってくるときその子とすごく楽しそうにしてて…」
「寂しかったの?」
こくん、と私は頷いて、あやちゃんの制服をぎゅっと掴んだ。
「なんだやきもちかぁ」
そういってあやちゃんが笑うから、私はムッとした顔になった。
「ちがうもん、あやちゃんのイジワル」
「よしよし。ごめんって。寂しい思いさせてごめんね?でもこれくらいでやきもち妬いてちゃだめだよ?」
「え?」
「私のこともっと信用してよ。あやちゃんのこと置いていったりしない」
「したじゃん!」
「そうじゃなくて。そりゃあ四六時中一緒にはいられないよ?でも急に藍ちゃんと離れて他の子と仲良くしたり、ある日突然いなくなったりとかしないからw」
「そりゃそうだね。あやちゃんはそんなことしない」
「うん、わかってるんじゃん」
「そうだったね。なんかごめん」
わかってはいるの。ただ、あやちゃんがいないという現実を目の前にして少しパニックになっただけ。
もっと、ちゃんとあやちゃんのこと信頼しなきゃだなぁ…。