決意(あや視点)
藍ちゃんとは出会ってまもなく仲良くなった。出会った頃の藍ちゃんは片思いに苦しんでいて、それはとても苦しそうで。できることならかわってあげたいくらいだった。
***
もうすぐ夏休みというある日、お昼休みが終わる10分前に藍ちゃんは教室に戻ってきた。その顔をとても苦しそうに歪め、私を見つけるなり
「あやちゃ~ん」
とすがってきた。飛び込んできた藍ちゃんを抱きとめ背中をさする。理由なんて聞かなくても分かってたけど、できるだけ優しく聞いてあげる。
「どうしたの?」
「なんかもうイヤだ。苦しいよぉ。うぅ」
やっぱりな…
片思いの相手と何かあったのだろう。つらそうな藍ちゃんをみて私までせつなくなり、思わず言葉がでた。
「私じゃだめなの?」
「えっ…?」
藍ちゃんは目をパチクリさせ、複雑な表情で苦笑した。
…だめだよね。そりゃそうか。藍ちゃんにはあの人しか見えていないもんな…
***
そんなことがあって、私は藍ちゃんの片思いの相手の代わりになるだとか、藍ちゃんの支えになるたった一人の特別な存在になるだとか、そういう気持ちを封印した。案外ドライな自分を自覚してはいるけれど、あくまでも自分は自分、他人は他人だ。もちろん藍ちゃんのことを友達として大切に思う気持ちは変わらない。だからこの先どんなことがあっても私はこれまで通り、藍ちゃんと接するだろう。これ以上は決して求めず、期待もせずに。