複雑②
黒い感情はあっという間に心を支配した。
「あのさ!」
私の突然の大声にあやちゃんはビクッとした。
「おめでとうってなに?!
そんな言葉ほしいんじゃないっ
あやちゃんは私のこと本当にどうでもいいんだね
私が誰のものになってもいいんだ!
寂しいとも思ってくれない
私のことなんてどうでもいいんだ
私はこんなに、こんなにあやちゃんのこと好きなのに
なんで?どうして分かってくれないの?」
…なんて、言えるはずもなくて。
せめて、ふーーーーっと、息だけ吐き出した。
今はっきりと分かってしまった。私はまだ、ぜんぜん1ミリもあやちゃんを諦めきれてなんかいない。
私は田神くんと付き合うことであやちゃんを諦めようとしていた…はずだった。でも心は嘘をつけやしなかったんだ。
本当は…本当は、あやちゃんに私をみてほしかった。田神くんと付き合うことで、私が誰かのものになることを寂しがって欲しかったんだ。妬いてほしかったんだ。
きっと今まで気づかないようにしていた自分の本心を、こんな形で思い知らされることになった。だけどやっぱりあやちゃんの前では隠さずにはいられなくて。この気持ちは私が唯一あやちゃんに打ち明けられないことだから。
あやちゃんに言えないことがあるというのがより一層私を悲しくさせた。あやちゃんに話せないこの気持ち一個分あやちゃんとの間に距離があるということだから。
私のすべてをあやちゃんに知ってほしい。さらけ出したい。でもそれはどうしてもできないの。まるでそれは私たちが決して結ばれることのない関係だということを突きつけるようで、私の中で今まで我慢して我慢して何とか抑えてきた感情を強烈に刺激した。