直感①(あや視点)
休みの時間、藍ちゃんは私の所へ来て、何か言いたそうにしていた。
「あやちゃん、あのね・・・」
「うん」
こんな時は急かさずゆっくり待ってあげる。藍ちゃんは分かりやすい。普段にはない長さの沈黙が流れる。
口を開きかけた藍ちゃんが、小さくハッと周りを確認するようなそぶりをした。だから、きっと人に聞かれたくない事だろうと思い、
「ちょっと来て」
と、藍ちゃんの手を取り教室をでた。人気のないところを探している間に授業開始を告げるチャイムが鳴った。
キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーン
すると、人が溢れていた廊下もガランと静かになった。
「あやちゃん、授業…」
藍ちゃんが繋いだ手を遠慮がちに引っ張ってくる。
「いいよもう、一回くらい」
そういって優しく微笑みかけた。きっと藍ちゃんは大事な問題を抱えていて、それを私に必死に伝えようとしてくれている。だったら全力でそれに応えたいと思ったから。
藍ちゃんは一瞬驚いた顔をして、すぐにバツが悪そうにはにかんでうつむいた。
だからなんとなく、もしかしてって思ったんだ。
「あのさ、…私…告白された」
やっぱり
「驚かないの?」
「なんとなくそうかなって思ったんだよね」
「えっウソそうなの?!」
藍ちゃんの動揺ぶりはすごくて、私はそれに笑いながら、でもちゃんと言った。
「おめでとう」
「…ありがとう」
藍ちゃんの返事には一瞬だけ間があったような気がした。