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だって好きなんだもん  作者: 空葉
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幻想

目の前には満点の星。夜の空気は澄みきっていて、木々の葉や草が風に揺れる音が心地よく耳に入ってくる。そして横を見ると目を輝かせて星空を眺めるあやちゃん。あぁ、なんてロマンチックなんだ。目を閉じて幸せにひたる。右手を何となく伸ばすとすぐにあやちゃんの手に触れて、そこから幸せが溢れ出してくるみたい。思わずそっとあやちゃんの手の平に自分の手を滑り込ませ、その温もりを手に入れる。幸せと安心感でトロ~ンとなりつつ、ゆっくりと瞼を開けながら首を横に向けると。あやちゃんがその綺麗な顔で私を見ていた。ちょうど月明りにあやちゃんの顔が照らされていて、もうあやちゃんしか見えない。あまりの美しさに、言葉も忘れてただただあやちゃんから目が離せなくなった。なんて綺麗な瞳。なんて艶やかな肌。なんて潤った唇。・・・気づいた時には身を乗り出して、吸い込まれるようにあやちゃんに顔を近づけていた。


「ちょっ・・・」


あやちゃんの声に何かが覚醒する。


・・・!!!

えっ・・・と。ん?んんん?!!!・・・わぁあああああー


自分でも訳がわからず、目を見開いたまま、まるで金縛りにあったかのように動けなくなってしまった。


「やだ藍ちゃん寝ぼけてんの~?wwwww」


声を抑えているもののクスクス笑いで大爆笑するあやちゃん。状況が掴めず目をぱちくりする私。

落ち着け自分、落ち着け・・・


「にしても、アハハハハハハッうけるーww藍ちゃん雰囲気にのまれやすすぎ!www」


もはやあやちゃんは笑いのツボから抜け出せないようで、こちらにまで伝わるくらいに肩を震わせて笑っている。

ぁあようやく理解がおりてきた。ここはプラネタリウム。学校行事で来ていて、いつの間にか私眠ってしまったのね。それで夢と現実が曖昧になってあんなことを!

感情を通り越して涙がにじみでてくる。

いや、なんで泣いてるの自分!

あやちゃんはようやく笑いが落ち着いた様子で、同じく涙目で(←こちらは笑いすぎて涙目)私をきょとんと見つめている。


「藍ちゃん?なんで泣いてるの?」

「・・・ぅう~わかんないよ~」


涙腺崩壊。自分でも本当に何がなんだかわからないままに次々と涙がこぼれ、ポトッと手に落ちた。

っは!私あやちゃんと手を繋いでいる!

なんだかもういろんなことがわからなくなっていると、


「もう~藍ちゃんかわいすぎ」


そう言ってあやちゃんが私をギュッと抱きしめた。ますますわからなくなって、けれど心臓だけはバクバクと忙しく暴れて。あやちゃんが背中を優しく撫でてくれるから大人しくジッとした。というか動けなかった。私を抱きしめたままあやちゃんが話す。


「おはよう藍ちゃんびっくりしたね。よしよし」


幼稚園児をあやすみたいな、甘いあやちゃんの声。温もり。香り。


「ぅう、あやちゃん、すき」


素直な言葉が口をつく。


「フフフ、だから藍ちゃんのまれすぎだってw」


優しく微笑むのが雰囲気で分かって思わず頬がゆるむ。

と、その時ゆっくりと周りの景色が明るくなった。

プラネタリウム、終わったんだ!

途端に、猛烈な恥ずかしさが襲ってきて。バッとあやちゃんから離れ、自分の席に深く埋まる。そっとあやちゃんの方を見ると、こちらを見てにやついていて。


「恥ずかしいの?」


とこれまた子供扱いな言い方でいじってくる。何も返せないでいると、先生から号令がかかって。


「いくよ」


立ち上がったあやちゃんが私に手を差し出した。その手をとって立ち上がる私。立ち上がるとその手はすぐに離され出口に向かって歩き出すあやちゃん。私はいまだにどこからどこまでが夢なのか、寝起きでボーとする頭で考えながら、フワフワした足取りであやちゃんを追った。

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