毒男とJK その3
「 ・・・・え?・・・・ 」 家に泊まれば、迷惑がかかる事を
先程伝えられたばかりの少女は、大野の真意が判らず戸惑っている。
「 いいよ泊まっても・・・・ 泣かせてゴメン 本当にゴメン 」
大野は心からの謝罪を少女にした。そしてこの言葉をつげた後に大野は、
自分の中で急激に熱が下がっていくのを感じた。
「 あ、ありがとうございます 」 少女は今度は喜びの涙を流しながら、
大野に感謝のお礼をいった。
「 じゃあ行こうか 」 と大野が部屋に案内しようとすると、少女は
「 あの・・ 家族の人とかは、おられるんですか? 」と大野に質問する。
自分で泊まらせてくれと頼んではみたが、少女はこの男に同居人がいる可能性を
この時点まで完全に失念していた。泊めてもらう事で頭が一杯でそこまで考える
余裕がなかったのだ。同居人が居るなら宿泊は不可能だ。既婚者なら男の家庭を壊す
可能性すらある。
少女の質問に大野は
「 あ~ 俺一人暮らしだから、問題ないよ 」 大野は少女に告げる。この返事を
した直後に大野はまた余計な事言ったかなと後悔した。
「 男の一人暮らしだもんね 怖いよね・・・ 止める? もう一度他の方法考えるけど」
少女が自分に恐怖を感じているのではないかと思い、フォローを入れる。
少女は、同居人が居ない事に安堵すると同時に、大野に全く別の事を聞こうとしていた。
ただそれはプライベート過ぎて、大野に失礼だと思い、少女はその質問を胸にしまった。
「 あ、いえ大丈夫です すみません気を使わせちゃって・・・・ 」ぎこちない笑顔で
少女は答えた。
二人は途中でコンビニで買い物をして、大野のマンションに向かった。コンビニから3分も
歩くとマンションが見えた。築44年の古びた8階建てのマンションである。
エレベーターの開ボタンを押して、3階のボタンを押す。
「 荷物は空いてる場所においていいからね 」 鍵を開け、自分の部屋に案内する。
部屋の造りは2LDK、で男の一人暮らしにしては掃除が行き届いていた。タバコの匂いも
しなかった。
リビングには小さな液晶TVとHDDレコーダーとノートPCが置いてあるだけだ。大野に
言わせれば、買う余裕がないというのが正直な理由だ。
「 どうぞ 」 とクッションを少女に渡す。それと同時に折り畳み式のテーブルを
持ってきて、テーブルを広げ、麦茶を用意する。
「 自己紹介がまだだったね 大野邦彦です 年は46歳 仕事は派遣社員やってます
・・・今は電話のオペレーターです 」 本当は誕生月は来月の8月で、現時点では
45歳なのだが今更45歳も46歳も変わらないだろうと46歳と少女に告げる。
「 名前を聞いてもいい? 言いたくないならいいけど・・・・」
少女はクッションの上で、女座りから正座に変えると
「 あ、川村結衣といいます 年齢は15歳です 」
「 15歳って、中学生?」
「 あ、いえ 高校生です 高校1年です 2月1日生まれです 」少女は言わなくてもいい部分まで
補足して答える。
「 じゃあ川村さんって呼べばいいのかな? それとも結衣さん? 」と再確認の意味を込め、大野は結衣に尋ねる。
「 あ、どっちでもいいです ・・・私は、大野さんって呼べばいいですか? 」
「 あ、うん それでいいよ 」 短いながらも、二人の挨拶交換が終わった。
「 お腹空いたでしょう? ご飯をたべよう 」さっきコンビニで寄って買ってきた
弁当をテーブルに載せる。大野は、焼き魚弁当、結衣はハンバーク弁当を選んでいた。
「 さぁ、食べよう 」と大野が結衣に声を掛けると、結衣は、一旦割りばしをおいて大野を
見つめて言った。
「 ご迷惑をお掛けしただけでなく、食事まで擁して頂いてすみません・・・ お金は
必ず返します 」 結衣は申し訳なさそうに言った。
「 あ、いや 大した金額じゃないし・・・ そんな気を使わなくても
いいよ さぁ食べよう 弁当冷めるよ 」
「 ありがとうございます 」 結衣は目尻に涙を貯めながら、ハンバーグ弁当を食べた。